「社員研修に助成金を使いたいが、うちの規模や研修内容で本当に対象になるのだろうか」。人事や経営企画の担当者からよく聞く迷いです。助成金の解説記事はどれも制度の一覧とコース名から始まるため、まず自社に合う制度を探すことが最初の一歩だと考えてしまいます。
しかし、企業向けの人材育成プログラムを数多く手がけてきた課題解決力強化道場の立場から言えるのは、制度を選ぶ前に、社内で先に整えておくべき体制があるということです。就業規則や職業能力開発推進者の選任、そして訓練計画の届け出のタイミングを押さえないまま研修を始めてしまうと、対象になるはずの研修でも不支給になってしまいます。
本記事では、社員研修に使える助成金制度の全体像から、実務でつまずきやすい申請手順、対象になる研修とならない研修の線引きまで、研修の現場に伴走してきた視点で順を追ってお伝えします。
社員研修に使える助成金とは雇用保険を財源とした返済不要の支援制度

社員研修に使える助成金は、従業員の職業訓練や能力開発を行う事業主に対して、国や自治体が費用の一部を支給する制度です。多くが雇用保険料を財源としており、融資と違って返済の必要がありません。研修にかかった経費や、研修中に支払った賃金の一部が後から戻ってくる仕組みだと考えてください。
ここで押さえておきたいのが、助成金と補助金は性質が異なるという点です。助成金は要件を満たせば原則として受給できるのに対し、補助金は予算の枠があり審査で採択されないと受け取れません。社員研修の分野で中心になるのは、要件を満たせば受け取れる助成金のほうです。
助成金の主な財源は雇用保険料
社員研修向けの助成金の多くは、厚生労働省が所管し、事業主が納めている雇用保険料を財源としています。そのため、雇用保険に加入していることが受給の前提になります。裏を返せば、従業員を雇用して雇用保険料を納めている企業であれば、規模を問わず活用の候補に入るということです。
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国の制度と自治体の制度がある
社員研修に使える制度は、全国どこの事業者でも申請できる国の制度と、地域を限定した自治体の制度に分かれます。国の制度の代表が人材開発支援助成金で、自治体の制度としては東京都のスキルアップ支援事業などがあります。両者は併用できる場合とできない場合があるため、まず自社の所在地で使える自治体制度があるかを確認しておくと選択肢が広がります。
社員研修に使える助成金は大きく3つの制度に分かれる

社員研修で活用できる助成金は数多く語られますが、実務で候補に挙がるのは主に3つの制度に整理できます。制度ごとに狙いと対象が違うため、自社が何を目的に研修を行うかで選ぶ制度が変わります。まずは全体像を掴んでおきましょう。
| 制度名 | 所管 | 主な狙い |
|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 厚生労働省 | 従業員の職業訓練・スキル向上 |
| キャリアアップ助成金 | 厚生労働省 | 非正規社員の処遇改善・正社員化 |
| スキルアップ支援事業など | 自治体(東京都など) | 地域の中小企業の人材育成 |
人材開発支援助成金が社員研修の中心
社員研修に助成金を使う場面で最も広く利用されるのが、厚生労働省の人材開発支援助成金です。従業員に対して職務に関連した研修を実施した場合に、経費と賃金の一部が助成されます。座学だけでなく、実務を通じたOJTや、eラーニング、通信教育も対象に含まれる点が使いやすさにつながっています。
キャリアアップ助成金は非正規社員の育成に
キャリアアップ助成金は、有期契約社員やパートといった非正規雇用の従業員を対象に、処遇改善や正社員化を後押しする制度です。研修そのものよりも雇用形態の転換に重きがありますが、非正規社員のスキルアップと正社員化をセットで進めたい企業に向いています。
自治体の制度は所在地しだいで使える
東京都のスキルアップ支援事業のように、自治体が独自に用意している制度もあります。都内の中小企業を対象にした事業内スキルアップ助成金や、外部講座の受講を助成する事業外スキルアップ助成金などが該当します。国の制度と条件が異なるため、自社の所在地の労働局や産業支援機関の情報を早めに確認しておくとよいでしょう。
人材開発支援助成金は目的別のコースで対象研修が変わる

人材開発支援助成金は一つの制度に見えて、実際には複数のコースに分かれています。研修の目的や対象者によって使うコースが変わり、助成の内容も違います。自社が実施したい研修がどのコースに当てはまるかを見極めることが、申請の第一歩です。ここでは代表的な4つのコースを取り上げます。
人材育成支援コース
職務に必要な知識や技能を習得させる、10時間以上の訓練を対象とする基本的なコースです。新入社員研修や管理職研修、専門スキルの習得など、幅広い社員研修が候補になります。多くの企業が最初に検討するのがこのコースだと考えてよいでしょう。
教育訓練休暇等付与コース
従業員が自発的に学ぶための長期の教育訓練休暇制度を、就業規則に導入して実際に取得させた場合に助成されるコースです。研修そのものへの助成というより、社員が学ぶ時間を確保する仕組みづくりを支援する位置づけです。
人への投資促進コース
デジタル人材や高度なスキルを持つ人材の育成を後押しするコースです。特徴的なのが定額制訓練で、サブスクリプション型のeラーニングサービスを利用した研修も対象になります。月額で使い放題の学習サービスを導入している企業には相性のよいコースです。
事業展開等リスキリング支援コース
新規事業への進出やデジタル化といった事業転換に伴い、従業員に新しいスキルを身につけさせる研修を対象とするコースです。経費助成率や賃金助成の水準が高めに設定されており、大きな変化に取り組む企業の負担を軽くする狙いがあります。
コースは改正で統合・変更されることがあります
人材開発支援助成金のコースは年度ごとに再編されることがあり、助成額や要件も見直されます。申請前には必ず厚生労働省の最新の案内で、その時点のコース構成と要件を確認してください。
社員研修で助成金を使うメリットは3つあるが後払いという弱みもある

助成金を使う判断をするうえで、良い面だけでなく弱みも知っておく必要があります。ここでは実務でよく感じられるメリットを3つ挙げたうえで、正直に押さえておくべきデメリットにも触れます。両面を理解したほうが、導入後に想定外だったと感じずに済みます。
研修費用の負担を大きく抑えられる
助成金を使う最大のメリットは、研修にかかる経費と賃金の一部が戻ってくる点にあります。これまで予算の都合で見送っていた外部研修や専門的な講座にも、手が届きやすくなります。同じ予算でより充実した研修を実施できるようになると考えてください。
計画的な人材育成が根づく
助成金の申請には訓練計画の作成が求められます。この計画づくりを通じて、誰に何をいつまでに身につけさせるかを整理することになります。結果として、その場しのぎだった研修が、育成方針に沿った計画的な取り組みへと変わっていきます。
幅広い研修形態に対応している
集合研修だけでなく、OJTやeラーニング、通信教育まで対象に含まれます。働き方や職種に合わせて研修の形を選べるため、業務を止めずに学ぶ機会をつくりやすくなります。
一方で、見落としてはならない弱みもあります。助成金は研修が終わってから支給される後払いが原則です。研修費用はいったん全額を自社で立て替える必要があり、手元資金の確保が前提になります。また、申請書類の作成が複雑で手間がかかること、すべての研修が対象になるわけではないことも、あらかじめ理解しておくべき点です。
助成金の申請は研修を始める前の届け出で決まる

助成金の申請で最もつまずきやすいのが、手続きの順番です。研修を実施してから申請するのではなく、研修を始める前に計画を届け出ておく必要があります。この順番を取り違えると、内容として対象になるはずの研修でも支給を受けられません。人材開発支援助成金を例に、基本の流れを追っていきましょう。
- 01職業能力開発推進者の選任と就業規則の整備
- 02訓練計画の作成と計画届の提出
- 03計画にもとづく研修の実施
- 04支給申請書の提出と審査・支給
研修開始前に計画届を出す
計画届は、研修を始める一定期間前までに管轄の労働局へ提出する必要があります。この提出期限を過ぎてから研修を始めてしまうと、その研修は助成の対象から外れます。まず何より、研修の日程を決めたらすぐに計画届の準備に取りかかることが肝心です。
研修は計画どおりに実施し記録を残す
研修は届け出た計画に沿って実施します。出席簿やカリキュラム、支払いを証明する書類など、実施の事実を裏づける記録を残しておくことが後の支給申請で必要になります。計画から内容を変える場合は、変更届の提出が求められる点にも注意してください。
研修終了後に支給申請する
研修が終わったら、実施結果をまとめて支給申請書を提出します。審査を経て支給が決まり、後日助成金が振り込まれます。研修終了から支給までには数か月かかることも珍しくないため、資金繰りの計画に織り込んでおくとよいでしょう。
助成金の対象になる研修とならない研修には線引きがある

すべての社員研修が助成金の対象になるわけではありません。ここを誤解したまま研修を企画すると、後から対象外だと分かって落胆することになります。対象になりやすい研修と、対象になりにくい研修の傾向を押さえておきましょう。
- ✓職務に直接関連する知識や技能を習得する研修
- ✓一定の時間数を満たした計画的な訓練
- ✓外部講師や専門機関による講習・eラーニング
反対に、業務との関連が薄い研修や、趣味・教養にとどまる内容、時間数の要件を満たさない短い研修は対象になりにくい傾向があります。対象になるかどうかは研修のテーマだけでなく、時間数や実施形態、計画への記載内容によっても左右されます。判断に迷う場合は、企画の段階で管轄の労働局に確認しておくと確実です。
自社の課題に沿った研修ほど対象になりやすい
職務に直接関連する研修が対象になるという要件は、裏を返せば、汎用的で当たり障りのない研修より、自社の実務課題に踏み込んだ研修のほうが要件と噛み合いやすいということです。何のために誰に何を学ばせるのかが明確な研修は、計画届にも書きやすく、実施後の成果も説明しやすくなります。
助成金は研修を選ぶ理由にしない

ここまで制度と手順を見てきましたが、研修の現場に伴走してきた立場から一つ本音を言えば、助成金の対象になるかどうかを研修選びの出発点にしてしまうのは危険です。比較記事ではほとんど語られない核心なので、あえて独立して取り上げます。
助成金を軸に研修を選ぶと、対象になりやすい形式や時間数に内容を合わせにいくことになりがちです。その結果、本当に自社が解決したい課題からずれた研修を選んでしまうことがあります。助成金はあくまで費用を軽くする手段であって、研修の目的そのものではありません。
「分かる」と「できる」の差を埋める設計かを見る
研修を選ぶときにもう一つ確かめたいのが、学んだ内容が現場の行動に結びつく設計になっているかです。知識を伝えるだけの座学で終わると、受講直後は理解できた気になっても、現場で使えないまま忘れられていきます。自社の実務課題を題材にした演習や、受講者一人ひとりへの個別のフィードバックがあるかどうかは、研修の実効性を左右する見極めのポイントです。
社員研修の助成金でよくある質問

最後に、社員研修と助成金をめぐって担当者からよく寄せられる質問を取り上げます。企画の段階で疑問を解消しておくと、申請の手戻りを防げます。
中小企業でも利用できますか
利用できます。むしろ中小企業のほうが経費助成率や賃金助成の水準が手厚く設定されているコースが多くあります。雇用保険に加入している事業主であれば、規模を理由に対象外になることはありません。
新入社員研修でも対象になりますか
対象になります。職務に必要な知識や技能を習得させる訓練であれば、新入社員向けの研修も助成の候補です。ただし研修開始前の計画届の提出など、通常の手順は同じように必要になります。
eラーニングやオンライン研修も使えますか
使えます。人への投資促進コースの定額制訓練のように、サブスクリプション型のeラーニングを対象にする仕組みもあります。受講形態によって対象となるコースが変わるため、導入しているサービスがどのコースに当てはまるかを確認してください。
申請は自社だけでできますか
自社での申請は可能です。ただし書類の作成や要件の確認には手間がかかるため、社会保険労務士に相談しながら進める企業も少なくありません。なお、研修を提供する会社が助成金の申請を代行してくれるわけではない点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
実務に効く社員研修を選ぶなら課題解決力強化道場へ

助成金は研修の費用を軽くする有効な手段ですが、受給できるかどうかを研修選びの出発点にしてしまうと、自社の課題からずれた内容になりかねません。先に決めるべきは、どの課題を誰のどんな力で解決するのかであり、助成金の要件確認はその後です。
課題解決力強化道場は、少人数制とハンズオン、そして超実践型を掲げ、自社の実務課題そのものを題材にした研修を提供しています。外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが講師を務め、毎回の個別フィードバックと研修企画者との振り返りによって、学んで終わりにしない設計にこだわっています。助成金の活用を視野に入れながら、現場の行動が変わる研修をお探しでしたら、まずは貴社の状況をお聞かせください。研修の狙いに合わせたカリキュラムをご提案いたします。
貴社の課題に最適な研修をご提案します
・管理職のスキルにバラつきがある
・研修が現場で活きない
・自走する人材が育たない
心当たりがあれば、まずご相談ください。
貴社の状況に最適なカリキュラムをご提案いたします。
※ご相談・お見積もりは無料です