「管理職セミナーは、必要なテーマと開催日が合うものを選べば十分」。研修会社のサイトはコースを体系図やテーマ別の一覧で並べているため、テーマから探して申し込む流れで考える人事担当者が多いはずです。
しかし、部門長や管理職層を中心に累計約800名超の研修を手がけてきた課題解決力強化道場の立場から言えるのは、管理職セミナーの成果を分けるのはテーマの選択より、受講者が自社の課題で手を動かし、受講後に振り返る場があるかどうかだということです。テーマ選びが無駄とは限りません。ただ、同じテーマのセミナーでも、この設計の有無で職場の行動が変わるかどうかが分かれます。
本記事では、管理職セミナーで扱うテーマと種類から、オンラインと対面の選び分け、選ぶ手順、受講後に行動が変わらない原因まで、管理職研修を設計してきた視点で順を追ってお伝えします。
管理職セミナーで扱う6つのテーマ

管理職セミナーで扱うテーマは、大きく6つに分かれます。研修会社各社が掲げる管理職向けのコースも、ほとんどがこの6つのどれかに入ります。
| テーマ | 主な内容 | 向いている困りごと |
|---|---|---|
| 役割認識とマネジメントの基本 | 管理職に求められる役割、プレイヤーからの切り替え | 新任管理職が自分で仕事を抱え込んでいる |
| 部下育成と面談 | 1on1ミーティング、コーチング、フィードバック | 部下が育たない、若手の離職が続く |
| 目標管理と人事評価 | 目標設定、評価者研修 | 評価が管理職ごとにばらつく |
| 問題解決と意思決定 | ロジカルシンキング、課題の整理、計画立案 | 部署の課題を言葉にできず、施策が進まない |
| 労務管理とコンプライアンス | 労働時間の管理、ハラスメント防止 | 法令違反やハラスメントの相談が出ている |
| メンタルヘルスとラインケア | 部下の不調への気づき方と初期対応 | 休職者が出たときの対応が人によって違う |
6つのテーマは、知識を覚えれば使えるものと、繰り返し練習しないと使えないものに分かれます。労務管理やメンタルヘルスは、法律や対応の手順を正しく知ることが目的なので、講義やオンデマンド動画でも身につきます。部下育成や問題解決のように練習が要るテーマは、講義を聞くだけでは職場で使えるようになりません。
見落とされがちなのが、問題解決のテーマが他のテーマの前提になっている点です。評価面談でも1on1でも、部下の課題を整理して言葉にできなければ、面談の型を覚えても話が深まりません。部下育成のセミナーを何度受けても変化が見えないときは、課題を整理する力から鍛え直す順番もあります。
管理職セミナーの3つの種類

管理職セミナーは、申し込み方と内容の決まり方で、公開講座・講師派遣型の社内研修・研修会社の無料セミナーの3種類に分かれます。3種類の違いを並べると、受講者の顔ぶれと、自社の事情を題材にできるかどうかが大きく異なるとわかります。
| 項目 | 公開講座 | 講師派遣型の社内研修 | 研修会社の無料セミナー |
|---|---|---|---|
| 受講者 | 複数の会社の管理職 | 自社の管理職だけ | 主に人事担当者や経営者 |
| 内容の調整 | できない | 自社の課題に合わせて調整できる | できない |
| 費用のかかり方 | 1人ごとの受講料 | 1回や1コースごとの料金 | 無料 |
| 向いている場面 | 受講者が数名、時期がばらばら | 同じ課題を持つ管理職がまとまっている | 研修会社や研修手法の情報収集 |
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公開講座
公開講座は、研修会社が日程とカリキュラムを決めて開き、複数の会社から受講者が集まる形式です。SMBCコンサルティングや日本生産性本部などが、東京や大阪の会場とオンラインのライブ配信で、新任課長向けや部長向けといった階層別の講座を開いています。
1名から申し込めるため、昇格の時期が人ごとに違う会社でも使いやすい形式です。他社の管理職と議論できる点も、社内研修には無い利点と見ています。一方で、カリキュラムは全社共通なので、演習の題材は一般的なケースになり、自社の事業や組織の事情は扱われません。
講師派遣型の社内研修
講師派遣型の社内研修は、研修会社の講師を招き、自社の管理職だけを対象に開く形式です。事前の打ち合わせで課題を伝え、テーマの比重や演習の題材を自社向けに組み替えられます。
費用は受講者数ではなく1回や1コースごとにかかるため、同じ課題を抱える管理職が10名前後そろうと、1人あたりでは公開講座と近い水準になることもあります。受講者が自社の人だけなので、社内の実際の課題を題材にでき、受講後に職場で同じ言葉を使って話せるようになります。打ち合わせや日程調整に人事の手間がかかる点は、事前に見込んでおきます。
研修会社の無料セミナー
研修会社の無料セミナーは、研修会社が自社サービスの紹介や研修手法の解説を兼ねて開く、1〜2時間ほどの講演やデモです。『日本の人事部』やHRプロのようなポータルサイトに、管理職をテーマにした無料セミナーが数百件規模で掲載されています。
無料セミナーの多くは、管理職本人ではなく、研修を選ぶ人事担当者に向けた内容です。他社の管理職育成の事例や、研修会社ごとの考え方を知るには役立ちます。管理職本人の力を伸ばす場としては、演習や個別のフィードバックが無いため、有料の研修の代わりにはなりません。インソースのように、管理職本人が受講できる無料セミナーを開く会社もあるため、対象者の欄で誰向けかを見分けます。
オンラインと対面の選び分け

管理職セミナーをオンラインと対面のどちらで受けるかは、受講者の拠点がどれだけ散らばっているかと、演習の量で決まります。2つの形式の違いは次のとおりです。
| 項目 | オンライン | 対面 |
|---|---|---|
| 移動 | 不要で、全国の拠点から同時に参加できる | 会場までの移動と交通費がかかる |
| 業務との両立 | 2〜3時間の短い回に分けやすい | 1日や2日でまとめて受けることが多い |
| 演習のやりとり | 少人数なら成り立つが、大人数では聞くだけになりやすい | 講師が受講者の手元を見て、その場で指摘できる |
| 向くテーマ | 労務管理などの知識型、少人数の演習型 | ロールプレイの多い面談や部下育成 |
拠点が複数の県に分かれる会社なら、オンラインで全拠点の管理職を同じ日にそろえられます。オンラインで演習型のテーマを受けるときは、1クラスの人数を確かめます。30名を超えるオンライン講義では、カメラを切って聞くだけの受講者が増え、講師も一人ひとりの考え方まで追えなくなると感じています。
1回の長さも見ておきたい項目です。丸1日のオンライン受講は集中が続きにくく、午後の演習ほど発言が減ります。オンラインなら2〜3時間の回を週1回ほど重ねる形にすると、回と回の間に職場で試す時間も取れます。
管理職セミナーを選ぶ5つの手順

管理職セミナーは、困りごとの書き出しから見積もりの比較まで、5つの手順で選ぶと自社に合わないセミナーを避けられます。テーマを先に決めず、管理職の行動を書き出すところから始めるのが、一覧から選ぶやり方との違いです。
- 01管理職の困りごとを行動で書き出す
- 02対象者の階層と人数を決める
- 03テーマと形式を決める
- 04受講後のフォローの有無を確かめる
- 05見積もりと日程を比べる
困りごとを書き出す段階では、「部下育成が弱い」のような評価ではなく、職場で見えている行動で書きます。たとえば「部下に任せられない」と書かず「会議で部下の案を自分の案で上書きしている」と書くと、必要なのが面談の技術なのか、仕事を任せる判断の基準なのかを切り分けられます。
対象者の人数は、公開講座と社内研修のどちらにするかを決めます。同じ困りごとを持つ管理職が数名なら公開講座、10名前後いるなら講師派遣型の社内研修が候補になります。新任管理職と経験の長い管理職では困りごとが違うため、同じクラスに混ぜない組み方を勧めます。
では、テーマと形式が合っていれば、あとは費用で決めてよいのか。費用を比べる前に、受講後のフォローの有無を確かめておきます。受講後の課題、上司との振り返り面談、研修会社からの報告があるかで、職場での行動が変わるかどうかが大きく分かれます。理由は次の見出しで詳しく扱います。
受講後に行動が変わらない3つの原因

管理職セミナーの満足度が高くても職場の行動が変わらないのは、学んだ内容を自社の仕事で使う場面が、受講中にも受講後にも用意されていないためです。研修で学んだことを職場で使えるようになることを、人材育成の分野では研修転移と呼びます。研修転移が起きない原因は、題材・形式・受講後の3か所に分かれます。
自社の課題と切り離された題材
一般的なケース問題だけで演習すると、受講者は「架空の会社ならこう解く」という答えは出せても、自社の課題に当てはめる手前で止まります。自社の課題は、関係する部署や過去の経緯が絡み、ケース問題よりはるかに条件が多いからです。
研修の場で自社の実際の課題を一度でも解いておくと、受講後に同じ手順をなぞれます。社内研修を選ぶなら、事前の打ち合わせで自社の課題を題材にできるかを研修会社に尋ねます。
講師が答えを示す講義中心の形式
講師が正解を説明し、受講者が聞いてうなずく形式では、受講者は分かった気になっても、自分で答えを組み立てる練習をしていません。ロジカルシンキングを本で学び、自分ではできていると思っていた人が、講師から個別に指摘を受けて初めてできていないと気づく。この差が、分かることとできることの差です。
自分で答えを出し、その答えに個別の指摘を受ける練習は、講師1人が見られる人数に限りがあります。1クラス10名ほどまでの少人数で、受講者一人ひとりに指摘が返ってくるかを、セミナーを選ぶときの基準にします。
受講後の振り返りの欠如
受講後に誰とも振り返らないと、管理職は翌日から元の業務に戻り、学んだ手順を試す機会を逃します。多くの研修は最終回の後に1回アンケートを取って終わり、研修を企画した人事が受講者のつまずきを知るのは、すべて終わった後になります。
行動を変えたいなら、振り返りは最終回の後ではなく、毎回の後に置く必要があります。回ごとに人事と講師がつまずきを共有すれば、次の回の題材や難しさをその場で直せます。セミナーを選ぶ前に、次の3項目を研修会社に確かめておくと、原因の3か所をまとめて点検できます。
- ✓自社の実際の課題を演習の題材にできるか
- ✓受講者一人ひとりに個別のフィードバックが返るか
- ✓毎回の後に研修企画者と振り返る場があるか
課題解決力強化道場は、3項目をすべて研修の設計に組み込んでいます。各拠点の部門長に論理的思考力強化研修を実施した人材紹介業の会社では、受講者の87%がマネジメントの変化を実感したと答え、課題を分析する方法がそろったことで部門会議が活発になりました。
よくある質問

無料セミナーだけで管理職研修の代わりになるか
無料の管理職セミナーだけでは、管理職研修の代わりになりません。無料セミナーの多くは1〜2時間の講演や研修のデモで、受講者が演習し、個別に指摘を受ける時間が無いためです。法改正への対応のように、最新の知識を知ること自体が目的なら、無料セミナーで足りる場合もあります。
管理職本人が個人で申し込めるか
公開講座の管理職セミナーは、多くが1名から申し込めます。ただし申込者を法人に限る講座もあるため、申込条件の欄で個人の申し込みを受け付けているかを見てから選びます。講師派遣型の社内研修は会社との契約が前提なので、個人では申し込めません。
管理職セミナーに助成金は使えるか
管理職セミナーの費用には、厚生労働省の人材開発支援助成金を使える場合があります。対象になるかは、訓練の時間数や内容、雇用保険の適用事業所かどうかなどの要件で決まります。
人材開発支援助成金は、訓練を始める前に訓練計画を都道府県労働局へ届け出る必要があり、受講した後に申請しても対象になりません。要件は年度ごとに見直されるため、申し込みの前に厚生労働省の最新の支給要領か、都道府県労働局の窓口で確かめます。
新任管理職はいつ受講させるのがよいか
新任管理職のセミナーは、昇格からおおむね3か月以内に受講させるのが向いていると見ています。昇格直後の数か月で、プレイヤー時代のやり方のまま部下に接する癖が固まりやすいためです。昇格前に役割の切り替えを準備させたいなら、管理職候補者向けの研修を先に受けさせる方法もあります。
管理職の課題解決力を鍛えるなら課題解決力強化道場

課題解決力強化道場は、少人数制・ハンズオン・超実践型の研修で、これまで部門長や管理職が自社の課題を題材に答えを出す場を設計してきました。アクセンチュアやPwCコンサルティングなど外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが、1クラス10名以内の受講者に毎回個別のフィードバックを返し、研修企画者との振り返りも毎回の後に行います。
管理職のどの力から鍛えるべきかが決まっていない段階でも、事前のヒアリングで貴社の管理職の困りごとを伺い、題材とカリキュラムを組み立てます。料金はヒアリングのうえで個別にお見積もりしますので、まずは現在の管理職の状況をお聞かせください。
貴社の課題に最適な研修をご提案します
・管理職のスキルにバラつきがある
・研修が現場で活きない
・自走する人材が育たない
心当たりがあれば、まずご相談ください。
貴社の状況に最適なカリキュラムをご提案いたします。
※ご相談・お見積もりは無料です