コラム

実行力 思考力 知識

財務研修の目的と内容|対象者別のカリキュラム例と現場で使える研修の選び方

「財務研修といえば、決算書の読み方を覚える研修でしょうか」。財務研修の案内には貸借対照表や損益計算書を扱う講座名が並ぶため、決算書を読めるようになれば研修の目的は果たせると考える担当者は多いはずです。

しかし、これまで大手から中小まで多くの企業で課題解決型の研修を手がけてきた課題解決力強化道場の立場から言えるのは、財務研修の成果は「知識」「思考」「実行」の3つの層で決まり、決算書を読める知識だけでは現場の判断は変わらないということです。知識の層から入るのは自然な順序ですが、研修を選ぶ段階で残り2つの層をどう扱うかを決めておいても遅くありません。

本記事では、財務研修の目的と学ぶ内容から、対象者別のカリキュラム例、実施方法と選び方まで、社員研修の設計に携わってきた視点で順を追ってお伝えします。

財務研修とは

財務研修とは、決算書の読み方や財務分析の基礎、会社のお金の流れを、社員が業務の判断に使える形で学ぶ研修です。経理や財務の担当者だけでなく、営業職や管理職まで含めた幅広い社員を対象にする点が、専門部署向けの実務研修と異なります。

財務研修と混同されやすいのが、経理研修と会計研修です。3つの研修は、扱う内容と主な受講者で次のように分かれます。

研修 主に学ぶこと 主な受講者
財務研修 決算書の読み方、財務分析、利益と資金の関係 全社員、管理職、経営層
経理研修 仕訳、伝票処理、月次と年次の決算業務 経理部門の担当者
会計研修 財務会計と管理会計のルール、簿記の基礎 経理部門と、会計を体系的に学びたい社員

研修会社によっては「財務・会計研修」のように、両方をまとめた名称で講座を提供しています。講座を比べるときは名称より、カリキュラムに仕訳の演習が多いか、決算書の分析が多いかを見ると、経理担当者向けか全社員向けかを見分けられます。

財務研修の3つの目的

財務研修の目的は、決算書から会社の状態を読み取ること、自分の業務と業績のつながりを知ること、数字を根拠に判断し説明することの3つです。3つの目的は順に積み上がる関係にあり、後の目的ほど業務の成果に近づきます。

合わせて読みたい、実践のヒントはこちら。

ナレッジ

受け身型組織を変える-陥りがちな罠に学ぶ、社員が自ら動き出す“経営の仕組み”のつくり方-

「事業は伸びているのに、なぜか自分の手が離せない」。社員が指示待ちになる“受け身型組織”は、実は経営やマネジメントの設計の問題です。陥りがちな3つの罠をひもとき、社員が自ら動き出す「経営の仕組み化」の3要素を、現場の実例とともに解説します。

詳しく見る

決算書から会社の状態を読み取ること

決算書から会社の状態を読み取る力は、財務研修の出発点です。貸借対照表で会社がどれだけの資産と借入を持っているか、損益計算書でどれだけ稼いでいるかを読めると、自社の立ち位置を数字で語れるようになります。

自社だけでなく取引先や競合の決算書を読めると、与信や提案の判断材料が増えます。たとえば取引先の自己資本比率(総資産のうち返済しなくてよい資金の割合)が年々下がっていれば、支払条件を見直す根拠になります。上場企業の決算書は有価証券報告書や決算短信で誰でも確かめられ、非上場企業は信用調査会社の資料などで確かめます。

自分の業務と業績のつながりを知ること

2つ目の目的は、営業の値引き1件や製造の不良1件が、損益計算書のどの行に表れ、利益をいくら減らすのかを知ることです。自分の業務が数字のどこに表れるかを知った社員は、売上だけでなく粗利や代金の回収までを意識して仕事を組み立てるようになります。

値引き5%が利益に与える影響の計算例

売上1000万円、粗利率30%の商品を5%値引きして同じ数量を売ると、売上は950万円、粗利は300万円から250万円に減ります。値引き前と同じ300万円の粗利を得るには、販売数量を2割増やし、売上を1140万円まで伸ばす必要があります。

値引きの影響を数量で示せると、営業担当者は値引きを提案する前に、数量を2割増やせる見込みがあるかを考えるようになります。財務知識を全社員に広げる企業が増えているのは、現場の判断の積み重ねが業績を左右するからだと見ています。

数字を根拠に判断し説明すること

3つ目の目的は、企画や改善の提案を、売上や利益の見込みという数字で説明できるようになることです。上司や経営層が提案を判断するときに見ているのは、投資した金額をいつ回収できるかという見通しです。

数字で説明できる社員が増えると、会議で感覚どうしの議論が減り、判断までの時間が短くなります。とりわけ見落とされがちなのが、数字で説明する習慣は管理職になる前の若手のうちに身につけたほうが、提案が通るまでの手戻りを早く減らせるという点です。

財務研修で学ぶ主な内容

財務研修で学ぶ内容は、財務の基礎知識、財務三表の読み方、財務分析、管理会計の入門の4つに大きく分かれます。それぞれで学ぶことと身につく力は、次の表のとおりです。

内容 学ぶこと 身につく力
財務の基礎知識 財務と会計の違い、利益と資金の違い 数字の用語を正しく使い分けられる
財務三表の読み方 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の構造 会社の安全性と稼ぐ力を読み取れる
財務分析 収益性、安全性、効率性の指標と他社との比較 自社と取引先の状態を比べて判断できる
管理会計の入門 損益分岐点、変動費と固定費、予算と実績の差 自部署の打ち手を数字で見積もれる

基礎編と銘打った講座の多くは、最初の3つを中心に扱い、管理会計は別の講座に分ける構成になっています。自部署の予算管理まで学ばせたいときは、講座の案内に損益分岐点や予算実績管理の項目があるかを見て選びます。

同じ内容を扱う研修でも、決算書の構造を説明する講義と、受講者が手を動かす演習の比率で中身が変わります。電卓を使って指標を計算する演習を含む研修なら、受講者は翌日から自社の決算書を開いて同じ計算ができます。

対象者別の財務研修カリキュラム例

財務研修のカリキュラムは、受講者の階層によって扱う範囲と演習の題材を変えます。新入社員、営業担当者、管理職、経営層の4つの対象者ごとに、扱う内容の例を紹介します。

新入社員向けのカリキュラム

新入社員向けの財務研修は、会社がどのように利益を生み、お金がどこから入りどこへ出ていくかという全体像をつかむことに絞ります。仕訳や簿記の細かなルールより、損益計算書の売上から最終的な利益までの流れを一続きで理解できるかを重視します。

演習の題材には、小売や飲食のように事業の中身を想像しやすい会社の決算書が向いています。ビジネスゲームで会社の経営を疑似体験し、仕入れや人件費の判断が利益にどう表れるかを確かめる形式も、数字に苦手意識のある新入社員の入口になります。

営業担当者向けのカリキュラム

営業担当者向けの財務研修は、売上と粗利と代金回収の関係を中心に組み立てます。売上が同じでも、値引きや支払条件の違いで会社に残るお金が変わることを、自分の担当案件の数字で計算できるようにします。

取引先の決算書を読み、安全性の指標から与信の判断材料を得る演習もカリキュラムに入れます。提案先の経営課題を決算書から読み取れると、相手の利益にどう貢献するかという観点で提案を組み立てられます。

管理職向けのカリキュラム

管理職向けの財務研修は、自部署の数字を予算と実績で管理し、差が出た原因を説明できるようになることを目標にします。損益分岐点や変動費と固定費の考え方を使い、打ち手ごとの利益の増減を見積もる演習が中心です。管理職研修の演習で扱いたい数字は、次の3つです。

  • ✓自部署の売上と利益の予算と実績
  • ✓人件費と社員1人あたりの粗利
  • ✓設備投資や採用にかけた費用の回収見込み

3つの数字を自部署の資料で計算させると、受講者は部下に目標を伝えるときにも、売上だけでなく利益と回収の見込みで説明するようになります。

経営層向けのカリキュラム

経営層と経営企画の担当者向けの財務研修は、経営指標の選び方と、資金調達や投資判断の考え方まで扱います。ROE(自己資本に対してどれだけ利益を上げたかを示す指標)やキャッシュフローの見通しをもとに、事業を続けるか撤退するかの基準を議論する演習が中心です。

経営層向けの内容は自社の事業構成によって論点が変わるため、一般企業の決算書を使う公開講座では議論が深まりにくい面があります。講師派遣型で自社の決算書を題材にするか、経営指標の見直し案を研修の成果物に設定する形が合っています。

財務研修の成果を分ける3つの層

財務研修の成果は、財務の知識を身につける層、課題を数字に分解する層、打ち手を業務で実行する層の3つで決まります。決算書が読めるようになっても業務の判断が変わらないのは、研修が知識の層で終わっているからです。

財務の知識を身につける層

財務の知識を身につける層は、財務三表の構造や指標の計算方法を理解する段階です。講義とテストで習得度を測りやすく、公開講座やeラーニングでも身につけられます。

知識の層だけで研修を終えると、受講者は「わかった」という手応えを持ったまま現場に戻ります。指標の意味は説明できても、自部署の課題を指標で表すことはできない状態です。研修後のアンケートで満足度が高いのに業務の判断が変わらない場合、知識の層で止まっていると考えられます。

課題を数字に分解する層

課題を数字に分解する層は、自部署の課題をいくつかの数字に分け、どの数字を変えれば利益が変わるかを組み立てる段階です。たとえば「利益が足りない」という課題を売上と原価と販管費に分け、さらに売上を顧客数と単価に分けると、手を打つべき数字が絞れます。

課題を分解する方法はロジックツリーと同じ考え方で、財務の知識とは別に練習が要ります。講師が正解を示すのではなく、受講者が自分で分解した結果に講師が個別にフィードバックすると、自分の分け方の甘さに気づけます。

“ ロジカルシンキング等は本で学んでいたので、自分でできているという自負がありましたが、実際に講師の方のフィードバックを受けて、まったくできていないことを痛感しました。 ― 課題解決力強化道場 受講者(製造業・経営企画室)

本で学んだ知識と、自分の課題に当てはめて使える力の差は、他人からのフィードバックを受けて初めて見えることが多いと感じています。

打ち手を業務で実行する層

打ち手を業務で実行する層は、数字で組み立てた打ち手を、上司や関係部署を巻き込みながら日々の業務に落とし込む段階です。研修の場では分析できても、現場に戻ると目の前の業務に追われ、計画が棚上げになるケースは珍しくありません。

受講後に業務で数字を使った結果を次の回に持ち寄り、講師と研修企画者が進み具合を確かめる仕組みがあると、研修で組み立てた打ち手が業務の中に残ります。1回で完結する研修ではこの仕組みを作れないため、複数回に分けて間に実践の期間をはさむ構成が向いています。

課題の分解と実行の層は、財務の講座とは別に、課題解決の研修で補う方法もあります。課題解決力強化道場は、自社の実務課題を題材に、外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが毎回個別にフィードバックする研修です。製造業の経営企画室の担当者が受講した事例では、自社の課題を整理し、経営陣を巻き込みながら経営指標の見直しに着手しています。

「学んで終わり」にしない研修を

課題解決力強化道場は、
外資系コンサル出身の現役プレイヤーが直接指導するハンズオン型研修です。
知識習得で終わらない、行動が変わる研修をご提供いたします。

少人数制 × ハンズオン × 超実践型

財務研修の4つの実施方法

財務研修の実施方法は、公開講座、講師派遣型の一社研修、eラーニング、ビジネスゲーム型研修の4つで、受講人数と自社の数字をどこまで扱うかで選び分けます。

実施方法 向いている場面 注意点
公開講座 受講者が数名で、基礎を一通り学ばせたいとき 題材は一般企業の決算書で、自社の数字は扱わない
講師派遣型の一社研修 同じ階層の社員をまとめて受講させたいとき 事前の打ち合わせとカリキュラム調整に時間がかかる
eラーニング 全社員の基礎知識をそろえたいとき 受講の進み具合が本人任せになり、個別の指導が無い
ビジネスゲーム型研修 数字に苦手意識のある若手に入口を作りたいとき 分析手法までは扱わないため、続きの研修が要る

実施方法は1つに絞る必要はありません。eラーニングで知識の層をそろえてから、一社研修で自社の決算書を使った演習に進む組み合わせにすると、集合研修の時間を講義ではなく演習に充てられます。

財務研修を選ぶ3つのポイント

財務研修を選ぶポイントは、受講者の階層に合う難易度を選ぶこと、自社の数字を演習の題材にすること、受講後の振り返りまで組み込むことの3つです。

受講者の階層に合う難易度を選ぶこと

新入社員に経営指標の比較分析まで詰め込むと、用語の理解で時間を使い切り、演習に入れません。管理職に財務三表の構造だけを教えると、知っている内容が続いて集中が切れます。

研修会社に相談するときは、受講者の役職と、業務で決算書を見た経験があるかを伝えると、難易度の合うカリキュラムを提案してもらえます。同じ階層でも経験に差があるときは、事前のeラーニングで基礎をそろえてから集合研修に入る方法があります。

自社の数字を演習の題材にすること

一般企業の決算書を使った演習は理解の確認には足りますが、受講者が自分の業務に当てはめる段階で迷いが生じます。自社の決算書や部署の予算資料を題材にすると、研修の演習がそのまま業務の分析になります。

自社の数字を扱うには、講師派遣型か、事前ヒアリングでカリキュラムを調整できる研修を選びます。社外秘の数字を出しにくい場合は、比率だけを残して金額を加工した資料を使う方法もあります。

受講後の振り返りまで組み込むこと

研修の効果は、受講直後のアンケートの満足度だけでは測れません。受講者が研修後に業務で数字を使ったかを確かめる場があるかどうかで、学んだ内容が業務に残るかが変わります。振り返りの場として組み込みやすいのは、次の3つです。

  • ✓受講1か月後に、業務で計算した指標を報告してもらう場
  • ✓上司が部下の提案に数字の根拠を求める会議の運用
  • ✓研修企画者と講師が受講者ごとの課題を共有する打ち合わせ

よくある質問

財務研修は経理部門以外にも必要か

財務研修は経理部門以外の社員にも必要です。営業の値引きや管理職の予算管理など、現場の判断の多くが会社の利益に表れるためです。ただし全員に同じ内容を受けさせる必要はなく、営業職なら粗利と代金回収、管理職なら予算と実績の管理というように、業務で使う範囲に絞ると研修時間を短くできます。

財務研修は何時間あれば足りるか

財務研修の基礎は、1日(6時間前後)の研修で一通り学べます。決算書の読み方と基本的な指標までであれば、1日で構成する公開講座が多く見られます。自社の数字を使った演習や管理会計まで扱う場合は、1日では足りないため、複数回に分けて間に業務での実践をはさむ構成にします。

簿記の資格と財務研修は何が違うか

簿記の資格と財務研修は、決算書を作る側の知識か、読んで使う側の知識かで違います。簿記は取引を仕訳して決算書を作る手順を学ぶため、経理担当者の実務に直結します。財務研修は完成した決算書を読んで業務の判断に使うことを目的にしているため、経理以外の社員は財務研修から始めると早く業務に生かせます。

数字で判断する力を鍛えるなら課題解決力強化道場

財務研修で決算書の読み方を学んだ社員が、自部署の課題を数字に分解し、打ち手を業務で実行するところまで伴走するのが、課題解決力強化道場です。課題解決力強化道場はこれまで約800名を超える受講者に研修を提供してきました。少人数制・ハンズオン・超実践型の設計で、1クラス10名以内の受講者に、外資系コンサル出身の現役コンサルタントが毎回個別にフィードバックします。

財務の知識はあるのに、管理職や経営企画の担当者が数字で打ち手を組み立てる段階でつまずいていると感じたら、現在の課題をお聞かせください。事前ヒアリングで貴社の実務課題を演習の題材に組み込み、KPI設計や経営指標の見直しまでを見据えたカリキュラムをご提案します。料金は非公開で、ヒアリングのうえ個別にお見積りいたします。

貴社の課題に最適な研修をご提案します

・管理職のスキルにバラつきがある
・研修が現場で活きない
・自走する人材が育たない

心当たりがあれば、まずご相談ください。
貴社の状況に最適なカリキュラムをご提案いたします。

※ご相談・お見積もりは無料です

CONTACT US・ CONTACT US・ CONTACT US・ CONTACT US・ CONTACT US・
CONTACT US・ CONTACT US・ CONTACT US・ CONTACT US・ CONTACT US・

お問い合わせ

ご不明な点などございましたらお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせへ
PAGE
TOP