「時間を区切って進行を厳しくすれば、会議は短くなるはず」。会議の効率化と聞くと、タイムキーパーやアジェンダといった進行の工夫が真っ先に紹介されるため、まず当日の進め方から変えようと考える方が多いはずです。
しかし、多くの企業で管理職やリーダーの課題解決力を鍛える研修を手がけてきた課題解決力強化道場の立場から言えるのは、会議の長さの多くは会議が始まる前に、議題を「答えの出せる問い」へ絞れているかで決まる、ということです。進行の工夫は、論点を絞ってから取り入れても遅くありません。
本記事では、会議が長くなる原因と会社が被る損失、会議時間の目安から、短くする手順と参加者にできる対処まで、研修の現場で数多くの会議の進め方を見てきた視点で順を追ってお伝えします。
会議が長くなる5つの原因

会議が長くなる原因は、議題・時間設定・報告・参加者・発言の5つに分かれ、どれも会議が始まる前の準備で防げるものです。自社の会議にどの原因が当てはまるかは、会議中に見える兆候から見分けられます。
| 原因 | 会議中に見える兆候 |
|---|---|
| ゴールが決まっていない議題 | 終了間際に「続きは次回」で終わる |
| 議題ごとの区切りがない時間設定 | 最初の議題で持ち時間の大半を使う |
| 資料を読み上げるだけの報告 | 発表者以外が資料を目で追うだけになる |
| 決める権限のない参加者の多さ | 一度も発言しない参加者が半数を超える |
| 議題から外れた発言 | 別件の相談や雑談が始まり元に戻らない |
ゴールが決まっていない議題
ゴールが決まっていない議題は、会議が長くなる原因の中でも最も影響が大きいものです。「新サービスの件」のような議題では、参加者がそれぞれ別のゴールを思い浮かべて発言するため、議論がまとまる地点がありません。
終わりの条件が無い会議は、予定の時間が来たときにしか終わりません。結論が出ないまま同じ議題が次回へ持ち越されると、1つの議題に2回分の会議時間を使うことになります。
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議題ごとの区切りがない時間設定
「14時から15時」と終了時刻だけを決めた会議では、議題ごとの持ち時間が無いため、最初の議題が延びても誰も止めません。後ろの議題は時間不足で次回に回るか、終了時刻を過ぎてから扱われます。
延長が当たり前になった会議では、参加者が「どうせ延びる」と考え、会議の直後に予定を入れなくなります。終了時刻が守られない会議ほど、延長を前提に一人ひとりの発言も長くなると見ています。
資料を読み上げるだけの報告
資料に書いてある数字や経緯を発表者が会議の場で読み上げる報告は、5つの原因のうち最も削りやすいものです。参加者は、読めば数分で済む内容を、発表者の話す速さに合わせて聞くことになります。
読み上げの報告が残るのは、資料を事前に読まない参加者がいるからだと考えられがちです。ただ、会議の案内で事前に読む時間を確保していない会社では、読まずに出席するのは参加者の怠慢とは限りません。
決める権限のない参加者の多さ
参加者が増えるほど、発言の順番待ちと確認の質問が増え、会議は長くなります。議題について決める権限も、決めた後に実行する役割も無い人が「念のため」呼ばれている会議では、発言しない人の時間がまるごと失われます。
決裁者がいない会議では、議論が煮詰まっても「上に確認します」で終わり、同じ議題をもう一度開くことになります。人数を減らすことより、決裁者が出席しているかのほうが会議の長さを左右します。
議題から外れた発言
議題と関係のない相談や雑談が始まり、元の議題に戻らない状態も、会議を長くする原因です。発言した本人に悪気はなく、別件を話せる場が会議しか無いために持ち込まれる場合が多いと感じています。
雑談には場を和ませる面もあり、すべて禁じると今度は発言が出にくくなります。外れた話題を打ち切るのではなく、別の場で扱うと決めて議題に戻すほうが、参加者との関係を損ねずに時間を守れます。
長い会議が会社にもたらす損失

長い会議の損失は、参加者全員の人件費と、会議中に止まる通常業務の2つで、どちらも参加人数と時間の掛け算で膨らみます。1人ひとりは「1時間延びただけ」と感じていても、会社全体では延びた時間が参加人数の分だけ失われています。
仮に定例会議の人件費を計算すると
時給に換算して3,000円の社員10人が、週1回2時間の定例会議に出ると、1回あたりの人件費は6万円です。年に50回開けば約300万円になり、会議を1時間に縮めれば約150万円分の時間を通常業務に戻せます。時給は職種や役職で変わるため、自社の平均で置き換えて計算します。
数字に表れにくい損失もあります。延長が続くと、会議の後に予定していた作業が定時の後へずれ込み、残業が増えます。結論の出ない会議が続くと、参加者は会議で決めること自体をあきらめ、重要な判断が会議の外で一部の人だけによって下されるようになります。
会議時間の目安と2時間を超えるときの判断

会議時間の目安は会議の目的で決まり、情報共有なら30分以内、意思決定なら60分以内が実務での一般的な範囲です。議題の数や参加人数で前後するため、下の表は1議題・10名以下の会議を想定した目安として使ってください。
| 会議の目的 | 時間の目安 | 目安を超えるときの見直し先 |
|---|---|---|
| 情報共有・報告 | 15〜30分 | 資料の事前配布で会議自体を省けないか |
| 意思決定 | 30〜60分 | 決める問いが1つに絞れているか |
| アイデア出し | 60〜90分 | 途中に休憩と論点の整理を挟んでいるか |
時間を決めるときは、話す内容から必要な時間を積み上げるより、15分を1単位として何単位使うかを先に決めるほうが、延長を防ぎやすいと見ています。枠が先に決まると、主催者は枠に収まるように議題を削るからです。
では、2時間や3時間、4時間と続く会議はどう扱えばよいのか。2時間を超える会議は、決める議題が3つ以上あるなら別の会議に分け、1つの議題に2時間かかっているなら論点が整理されていないと判断します。研修や合宿のように長時間を前提に組んだ場は対象外で、60〜90分ごとに休憩を挟んでいれば長さ自体は問題になりません。
長い会議の根本にある論点整理の不足

進行の工夫を入れても短くならない会議の多くは、参加者が集まる前に論点が整理されていないことが根本の原因です。論点とは、会議で答えを出すべき具体的な問いのことで、議題を問いの形に書き換えていない会議は、話し合いながら問いを探すことになります。
たとえば議題が「来期の販促について」のまま集まると、予算の総額、使う媒体、担当者の割り振りが同じ場で一度に話され、どれも決まらないまま時間が過ぎます。議題を「来期の販促予算を、展示会とWeb広告にそれぞれいくら振るか」と書き換えれば、会議で決めることは配分の比率1つに絞られます。
会議の長さは、進行役の腕前よりも、会議の前に議題を答えの出せる問いへ分けられているかで決まります。議題を問いに書き換える手順は、次の4つです。
- 01会議が終わったときに決まっていてほしいことを1文で書き出す
- 02決めることを、予算の総額・配分・担当のような小さな問いに分ける
- 03会議で決める問いと、担当者が会議の外で調べて持ち寄る問いを分ける
- 04会議で決める問いだけを、時間配分と一緒にアジェンダに載せる
大きな問いを小さな問いへ分ける考え方は、ロジックツリー(問いを木の枝のように分解していく図)と呼ばれる手法です。名前を知っていても、自社の議題をどこで切り分けるかは、本を読んで分かることと実際にできることの差が出やすいところです。
とりわけ見落とされがちなのが、論点を整理する役目が会議の主催者1人に任されている点です。主催者が整理しきれなかった議題はそのまま会議に持ち込まれ、参加者全員の時間を使って整理されることになります。課題解決力強化道場が論理的思考力の研修を実施した人材紹介業の企業でも、部門長クラスの受講者から次の声が寄せられています。
“これまでロジックツリーの概要は知っていたものの、実際にどう切り分ければよいか分からず苦戦していました。今回の研修では区分けの仕方を実践的に学ぶことができ、早速活用しています。ロジカルでないと会議が長引いたり本筋からズレたりする点にも共感しました。― 課題解決力強化道場 導入事例(人材紹介業・部門長クラス向け論理的思考力強化研修)
同じ企業では、受講した部門長の87%がマネジメントの変化を実感し、課題分析の方法が統一されて部門会議が活性化したと報告されています。会議時間そのものを測った結果ではありませんが、論点の切り分け方を部門長の間でそろえると、会議で話される中身が変わることを示す例です。
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長い会議を短くする5つの手順

長い会議を短くする手順は、会議前の準備3つと、会議中と会議後の運営2つの、合わせて5つです。上から順に取り入れると、会議を開く前に削れる時間から減らせます。
議題と時間配分の事前共有
議題と時間配分は、会議の前日までにアジェンダとして参加者へ送ります。議題ごとに「報告10分」「決定20分」のように持ち時間を書き、会議で答えを出す問いを1文で添えます。
当日に議題を足したい人がいるときは、持ち時間の中で扱うか次回に回すかを、冒頭で進行役が決めます。アジェンダに無い議題を受け入れ続けると、事前に時間を配分した意味がなくなります。
参加者の絞り込み
参加者は、議題について決める人、決めたことを実行する人、判断に必要な情報を持つ人の3役のどれかに当てはまる人に絞ります。どれにも当てはまらない人には、会議に呼ぶ代わりに議事録を共有します。
決める人が出席できない会議は開かない、と決めておくと、持ち帰りによる二度手間を防げます。決裁者の予定が合わないときは、事前に判断の基準を聞き、その基準の範囲内なら出席者で決めてよいと了承を得てから開きます。
報告事項の事前配布
報告事項は資料として事前に配り、会議では質問と、報告を受けて決めることだけを扱います。資料の冒頭に結論と、参加者に判断してほしい点を3行で書いておくと、読む側が要点を探す手間が省けます。
前日の夕方に届いた資料を翌朝の会議までに読む時間は、多くの参加者にありません。資料は2営業日前までに送り、送れなかった報告はその回の議題から外して次回に回します。
進行役とタイムキーパーの指名
進行役とタイムキーパーは、会議ごとに別の人を指名します。進行役が議論に加わりながら時計も見ていると、議論が白熱するほど時間の管理が後回しになるためです。進行役は、外れた発言や延びる議論を次のような言い方で議題に戻します。
議題に戻すときの言い方の例
「大事な件なので、最後の議題の後に5分取りましょう」
「残り5分です。今日はA案とB案のどちらで進めるかだけ決めましょう」
「結論が出ないので、足りない情報を誰がいつまでに集めるかを決めましょう」
決定事項と担当者の記録
会議の最後の5分は、決まったこと・担当者・期限を読み上げて記録する時間に充てます。議事録を議論の経緯から書くと作成に時間がかかり、読む側も結論を探す手間が増えるため、決定事項を先頭に書く形式にします。
決まらなかった議題には、何が足りずに決まらなかったのかを1行で残します。次の会議で同じ議論を最初からやり直さずに済み、持ち越した議題にかかる時間を短くできます。
参加者の立場でできる長い会議への対処

会議を主催しない参加者でも、準備と発言の仕方を変えれば、出席する会議を短くする方向へ働きかけられます。役職の関係で進め方に意見しにくい場合でも、次の4つの行動なら主催者のやり方を否定せずに始められます。
- ✓アジェンダが届かないときは、前日までに何を決める会議かを主催者に尋ねる
- ✓発言は結論から言い、理由は1つか2つに絞る
- ✓議論が止まったら「決めるのはA案とB案のどちらかですね」と問いを言い直す
- ✓会議の終わりに、決まったことと自分の担当を声に出して確かめる
上司の話が長い会議では、上司の発言を止めようとするより、若手が先に意見を出して論点を絞るほうが受け入れられやすいと見ています。発言が出ない会議では、沈黙を埋めるために役職の高い人が話し続けることになりがちだからです。
参加者1人の工夫で変えられるのは、自分の発言と準備の範囲までです。議題の決め方や参加者の選び方は主催者の権限なので、会議の後に「次回は報告を資料で配りませんか」のような具体的な案として主催者に伝えます。
よくある質問

オンライン会議でも同じ手順で短くなるか
オンライン会議も、対面と同じ5つの手順で短くなります。オンラインでは移動が無い分だけ招待が気軽になり、決める権限の無い人まで参加者に入りやすい点には注意が要ります。画面共有で資料を読み上げる報告も起きやすいため、報告事項の事前配布は対面の会議以上に時間を減らせます。
会議を短くすると決定の質は下がるか
会議を短くしても、論点を事前に整理していれば決定の質は下がりません。質が下がるのは、議題を問いに絞らないまま時間だけを削った場合で、議論が足りないまま多数決や上位者の一声で決まることになります。時間を削る前に、1つの議題につき決める問いが1つになっているかを見直します。
論点を整理する力は研修で身につくか
論点を整理する力は、自社の実際の議題を使って練習し、他者から指摘を受ける形の研修であれば身につきます。手法を本や座学で学ぶだけでは、自分の議題でどこを切り分けるかの判断が身につかず、分かったつもりで終わることがあります。自分で分けた問いを第三者に見てもらい、抜けや重なりを指摘してもらう工程が欠かせません。
論点を整理する力を鍛えるなら課題解決力強化道場

長い会議を短くする手順はアジェンダや進行役の工夫から始められますが、議題を答えの出せる問いへ分ける力が管理職やリーダーにそろっていなければ、会議は再び長くなります。課題解決力強化道場はこれまで、大手から中小企業まで累計800名を超える受講者に、自社の実務課題を題材にした課題解決の研修を提供してきました。
課題解決力強化道場は、1クラス10名以内の少人数制で、外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが指導するハンズオン型・超実践型の研修です。ロジックツリーなどの手法を自社の議題に当てはめる演習と、毎回の個別フィードバックで、会議で決めきれる管理職やリーダーを育てます。部門会議での論点の切り分け方をそろえたい人事・経営企画のご担当者は、自社の会議で起きている課題をお聞かせください。カリキュラムは事前ヒアリングのうえ個別にご提案し、料金はお見積もりでご案内します。
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