コラム

研修の効果測定の方法|カークパトリックの4段階と指標の決め方

「研修の効果測定は、終わった後にアンケートを取れば十分ではないか」。研修会社から届く実施報告書が満足度の集計で締めくくられていることが多いため、効果測定とはアンケートのことだと捉えている担当者もいるはずです。

しかし、課題解決力強化道場はこれまで、大手企業から中小企業まで累計約800名を超える受講者に、自社の実務課題を題材にした研修を提供してきました。その経験から言えるのは、効果測定の成否は研修後の測り方よりも、研修を企画する段階で「受講後に変えたい行動」を決めたかどうかで決まる、ということです。

本記事では、効果測定の基本となるカークパトリックモデルから、アンケート項目の例、測定の手順、つまずきやすい場面まで、研修を設計し運営する側の視点で順を追ってお伝えします。

研修の効果測定とは

研修の効果測定とは、研修によって受講者の知識や職場での行動、組織の業績がどれだけ変わったかを、事前に決めた指標で確かめる取り組みです。受講者の満足度は確かめる項目の1つにすぎません。満足度が高くても職場での行動が変わっていなければ、研修の目的は果たせていないことになります。

効果測定の結果は、研修の良し悪しを判定するだけでなく、次の研修の内容や対象者を見直す材料にも使います。研修を毎年同じ形で続けるか、題材や回数を変えるかを決める根拠になるのが、効果測定の結果です。

研修評価や効果検証との違い

「研修評価」「研修の効果検証」も、多くの場合は効果測定と同じ取り組みを指して使われています。社内で言葉が混在しているときは、何を、いつ、誰が測るのかを決めておけば、呼び方の違いで混乱することはありません。

研修の効果測定が必要な3つの理由

研修の効果測定が必要なのは、研修の改善点が分かり、経営層に投資の成果を説明でき、人材育成の情報開示にも使えるからです。

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研修の改善点が分かるから

効果測定をすると、研修のどの部分で受講者がつまずいたかが分かります。理解度テストの正答率が低い単元は説明か演習の時間が足りていません。理解度は高いのに職場で使われない内容は、受講者の業務と題材が合っていないと判断できます。

改善点が分からないまま同じ研修を繰り返すと、毎年同じ費用をかけて同じ結果を得ることになります。研修会社に内容の変更を依頼するときも、どの単元をどう変えるかを測定結果で示せば、依頼の中身が具体的になります。

経営層に投資対効果を示せるから

研修には受講料だけでなく、受講者が業務を離れる時間の人件費もかかっています。経営層から「研修の効果はあったのか」と聞かれたときに満足度だけを示しても、翌年度の予算を確保する根拠にはなりにくいのが実情です。

研修の前後で変わった行動や業務の数値を示せれば、研修を続けるか、対象者を広げるかを、経営層と同じ材料で話し合えます。投資対効果(ROI)の計算方法は、よくある質問で扱います。

人材育成の情報開示が求められるから

2023年3月期の有価証券報告書から、人材育成の方針と、その方針に関する指標の内容・目標・実績の記載が求められるようになりました。対象は上場企業など有価証券報告書を提出する企業で、提出義務のない多くの非上場企業は対象外です。

指標に何を選ぶかは企業ごとに決めてよく、研修時間や受講者数のような実施量を並べる企業もあります。研修による行動や業績の変化を記録しておけば、実施量に加えて育成の成果を示す指標も選べるようになります。

開示の根拠

2023年1月に公布された「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正で、有価証券報告書に人的資本の記載欄が新設されました。非上場企業でも、取引先や金融機関から育成方針の説明を求められたときに、同じ指標を流用できます。

カークパトリックモデルの4つのレベル

カークパトリックモデルは、研修の効果を反応・学習・行動・結果の4つのレベルに分けて測る考え方で、研修の効果測定で最もよく使われる枠組みです。1950年代に、アメリカの研究者ドナルド・カークパトリックが提唱しました。

4つのレベルを、測るもの・主な測定方法・測る時期の3項目で並べると次のとおりです。

レベル 測るもの 主な測定方法 測る時期
レベル1 反応 満足度・役に立つと感じたか 研修後アンケート 研修直後
レベル2 学習 知識やスキルの習得度 理解度テスト・演習の成果物・レポート 研修の前と直後
レベル3 行動 職場での行動の変化 上司や同僚の評価・本人の振り返り・面談 数か月後
レベル4 結果 組織の業績への影響 業務指標の比較・ROI分析 半年から1年後

レベル1の反応

レベル1の反応では、受講者が研修に満足したか、内容を業務に役立つと感じたかを測ります。最も手軽に測れるレベルですが、満足度が高いことは、内容を理解したことも職場で使うことも意味しません。

レベル1で分かるのは、講師の話し方や時間配分、会場や配信環境のような運営面の課題です。満足度が低いときは、内容を変える前に運営面から見直すと、原因の切り分けがしやすくなります。

レベル2の学習

レベル2の学習では、研修で扱った知識やスキルを受講者が身に付けたかを測ります。研修の前にも同じテストを行い、前後の点数の差を見ると、研修で伸びた分だけを取り出せます。

知識を問うテストは採点しやすい一方、知識を使えるかまでは測れません。ロジカルシンキングのような思考のスキルは、演習で受講者が作った資料を、あらかじめ決めた基準で採点する方法が向いています。

レベル3の行動

レベル3の行動では、受講者が研修で学んだことを職場で実践しているかを測ります。学んだことを使う機会が何度か巡ってこないと行動は変わらないため、研修から時間を置いて測ります。

上司が受講者の行動を見ていなければ、レベル3は測れません。研修の前に上司へ「研修後に見てほしい行動」を伝え、上司と人事で評価の項目をそろえておく必要があります。

レベル4の結果

レベル4の結果では、研修が売上や生産性、離職率のような組織の業績にどう影響したかを測ります。研修の費用と業績の改善額を比べる投資対効果の分析は、カークパトリックモデルを発展させたジャック・フィリップスが、レベル5として加えたものです。

業績には市場の動きや人員の増減も影響するため、研修だけの効果を取り出すのは4つの中で最も難しいレベルです。指標には、営業研修なら受注率、業務改善の研修なら作業時間のように、研修内容と直接つながる数値を選びます。

研修アンケートの項目例と作り方

研修アンケートの項目は、満足度に加えて職場で使う場面まで聞くと、レベル1の結果をレベル3の測定につなげられます。代表的な項目は次の6つです。

  1. 01研修全体の満足度(5段階)
  2. 02内容が業務に役立つと感じた度合い(5段階)
  3. 03内容の理解度の自己評価(5段階)
  4. 04研修の難易度(易しすぎるから難しすぎるまでの5段階)
  5. 05職場で最初に使う場面と時期(自由記述)
  6. 06講師や運営への改善要望(自由記述)

職場で最初に使う場面を聞く項目の回答は、数か月後の面談で「書いた場面で実際に使ったか」を確かめる材料になります。回答を上司にも共有しておくと、上司は研修後に部下の何を見ればよいかが分かります。

項目数は、5段階の質問と自由記述を合わせて10問以内に抑えると、自由記述まで書いてもらいやすいと見ています。研修直後と数か月後で同じ質問を使えば、受講者自身の評価がどう変わったかも比べられます。

研修の効果測定を進める5つの手順

研修の効果測定は、変えたい行動を決めてから測定のレベルと指標と時期を決め、研修前の状態を記録したうえで実施します。測り方を先に選ぶと、研修の目的と関係のない数字を集めることになります。

変えたい行動の決定

最初に決めるのは、研修の後に受講者が職場でどんな行動をとっていれば成功と言えるかです。「論理的思考力を高める」という目的のままでは測れません。「会議で課題を要素に分けて説明する」「部下の報告に原因の切り分けを求める」のように、第三者が見て分かる行動に書き換えます。

行動は、研修を依頼する部門の責任者や受講者の上司と一緒に決めます。人事担当者だけで決めると、上司が研修後に見る行動と食い違い、レベル3の評価が集まりません。

測定レベルと指標の決定

変えたい行動が決まったら、4つのレベルのうちどこまで測るかと、レベルごとの指標を決めます。指標は、数値で表せる定量指標と、言葉で記録する定性指標を組み合わせます。2種類の指標の例と向いているレベルは次のとおりです。

指標の種類 例 向いているレベル
定量指標 テストの点数・行動チェックリストの実施回数・受注率・作業時間 レベル2から4
定性指標 アンケートの自由記述・面談の記録・上司のコメント レベル1から3

定量指標だけでは行動が変わった理由が分からず、定性指標だけでは経営層への説明に使いにくくなります。評価の基準は研修の初回に受講者へ伝えておくと、受講者は何ができればよいかを意識して研修に臨めます。

研修前の状態の記録

研修の効果は、研修前と比べて初めて分かります。理解度テストや行動チェックリストは研修前にも同じものを実施し、業務の数値は研修前の数か月分を記録しておきます。

研修を受けていないグループと比べる方法もあります。同じ部署の中で受講時期をずらすと、先に受けたグループと後から受けるグループの差を、研修の効果として見られます。

測定時期の決定

測定時期は、研修の計画段階でレベルごとに決め、受講者と上司の予定に入れておきます。時期を決めないまま研修を終えると、数か月後には担当者も受講者も別の業務に追われ、レベル3以降の測定が行われずに終わります。

行動の変化を見る時期は、研修で学んだことを使う機会の頻度で変わります。毎週の会議で使う内容なら1〜2か月後、半期ごとの計画づくりで使う内容なら次の計画を立てる時期に合わせて測ります。

結果の共有と研修の改善

測定の結果は、受講者本人と上司、研修を依頼した部門に返します。受講者には個人の結果と次に伸ばす点を、上司には部下の行動を見る観点を、部門には研修全体の結果と次回の改善案を伝えます。

結果を返さないまま次の測定を頼むと、受講者は測定を手間としか感じなくなり、アンケートの回答率が下がります。研修の改善は、理解度が低かった単元の時間配分と、職場で使われなかった内容の題材から見直します。

「分かる」と「できる」の差を測る研修設計

「分かる」と「できる」の差を測るには、研修の中で受講者が実際の業務を題材に成果物を作り、その成果物を毎回評価する設計が必要です。理解度テストで高い点を取った受講者が、職場では学んだ手法を使えていないことは珍しくありません。

理解度テストが測っているのは手法を知っているかで、職場で求められる「自分の業務に当てはめて使えるか」とは別の力です。研修後の行動評価で差に気づいても、研修のどこでつまずいたのかまでは分かりません。効果測定の成否は、研修の中に「できる」を確かめる場面を組み込んだかで決まります。

理解度テストと、実務課題の成果物を評価する方法を比べると、測れる力の違いがはっきりします。

比べる点 理解度テスト 実務課題の成果物評価
測れる力 手法を知っているか 自分の業務に当てはめて使えるか
採点の手間 小さい 講師が1人ずつ見るため大きい
研修後の行動評価との比較 点数と行動の関係が見えにくい 研修中の成果物と職場の行動を並べて比べられる

実務課題を題材にした演習

演習の題材を架空のケースではなく受講者自身の業務課題にすると、演習の成果物がそのまま「職場で使えるか」の判定材料になります。たとえば、課題を要素に分けて整理するロジックツリーを学ぶ研修で、自部署の売上が落ちた原因を分解させると、分け方の漏れや重なりから使える度合いを採点できます。

自社の課題を題材にするには、研修の前に受講者や上司から業務の課題を聞き取る必要があります。準備の手間は増えますが、研修後に行動評価をするときに、研修中にどの課題をどう分解したかという比較の基準が残ります。

毎回の個別フィードバック

個別フィードバックとは、講師が受講者ごとの成果物を見て、できている点と直す点を記録して返すことです。毎回の記録が残っていれば、初回と最終回の成果物を比べ、受講者が何をできるようになったかを具体的に示せます。

講師が全員の成果物に目を通せるのは、少人数の研修に限られます。数十名規模の集合研修では、フィードバックがグループ単位にとどまり、受講者一人ひとりの変化は記録に残りにくいと見ています。

研修企画者との毎回の振り返り

研修の企画者と講師が毎回の研修後に受講者の状況を振り返ると、つまずきが見つかった時点で次回の内容を変えられます。最終回の後に1回だけ振り返る設計では、つまずきが分かっても、その研修の中で手を打つ機会がありません。

振り返りの記録は、そのまま効果測定の定性データになります。受講者ごとの変化が記録されていれば、研修後に上司へ行動評価を頼むときも、どの行動を見てほしいかを具体的に伝えられます。

「学んで終わり」にしない研修を

課題解決力強化道場は、
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研修の効果測定でつまずく3つの場面

研修の効果測定でつまずくのは、測る範囲を広げすぎたとき、行動を測る時期が早すぎたとき、業績の変化の原因を研修に寄せすぎたときです。

全研修でレベル4まで測ろうとするとき

全ての研修でレベル4まで測ろうとすると、データ集めの手間と費用が膨らみ、測定が続かなくなります。効果測定そのものが目的になり、担当者の時間が研修の改善ではなく集計に取られてしまいます。

測るレベルは、研修ごとに決めます。新入社員のビジネスマナー研修のように内容が標準化された研修はレベル2まで、管理職研修や営業研修のように業務の成果に直結させたい研修はレベル3以上まで、という分け方があります。レベル3以上まで測るかは、次の3つに当てはまるかで判断できます。

  • ✓受講者1人あたりの研修費用が大きい
  • ✓研修後に変えたい行動を上司が日常的に観察できる
  • ✓研修内容と直接つながる業務の数値がある

行動の変化を研修直後に測るとき

研修の直後に「職場で実践しているか」を聞いても、受講者にはまだ実践する機会がありません。研修直後の回答は実践するつもりがあるかを示しているだけで、レベル3の結果にはなりません。

研修直後に聞けるのは、職場で使う予定の場面までです。行動の変化は、測定時期の決め方で触れたとおり、学んだことを使う機会が何度か巡ってきた後に測ります。

業績の変化を研修だけの成果と見なすとき

研修の後に業績が上がっても、同じ時期に市場の需要が伸びていたり、新しい商品が出ていたりすれば、研修だけの効果とは言えません。研修の成果を大きく見せた報告は、翌年度に業績が下がったとき、研修の価値まで疑われる原因になります。

業績の変化を報告するときは、研修以外に業績に影響した出来事を併記します。受講していないグループと比べられる場合は、受講したグループとの差を研修の効果として示します。

研修の効果測定でよくある質問

研修の効果測定にツールは必要か

研修の効果測定は、専用のツールが無くても実施できます。アンケートは無料のフォーム作成ツールで作れ、集計は表計算ソフトで足ります。

受講者が数百名を超える場合や、eラーニングと集合研修の結果をまとめて管理したい場合は、学習管理システム(LMS)を使うと集計の手間が減ります。LMSで自動的に集まるのは受講履歴やテストの点数までで、職場での行動の変化は上司の評価や面談で別に集めます。

研修の費用対効果は計算できるか

研修の費用対効果は、研修によって増えた利益と研修の費用が金額で分かれば計算できます。一般的な計算式は次のとおりです。

ROI(%)=(研修による利益の増加額−研修の費用)÷研修の費用×100

研修の費用には、受講料に加えて、受講者が業務を離れた時間の人件費も含めます。利益の増加額から研修だけの効果を取り出すのは難しいため、受講者の上司に改善のうち研修の影響が何割かを見積もってもらい、その割合を掛けて控えめに計算する方法もあります。

効果測定の結果を人事評価に使ってよいか

効果測定の結果は人事評価に使えますが、使うなら研修の前に受講者へ伝えておく必要があります。後から評価に使われたと分かると、受講者は次の研修からアンケートに本音を書かなくなります。

研修の改善のための測定と、人事評価のための測定は分けて扱います。理解度テストの点数は研修の改善に使い、人事評価には職場での行動の変化を、評価基準を事前に示したうえで使う、という分け方が考えられます。

行動まで測れる研修なら課題解決力強化道場へ

課題解決力強化道場は、少人数制・ハンズオン・超実践型の法人向け研修で、自社の実務課題を題材にした演習と毎回の個別フィードバックにより、「分かる」と「できる」の差を研修の中で確かめられるように設計しています。外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが講師を務め、1クラス10名以内、1回2.5時間を最短5回で実施します。

課題解決力強化道場はこれまで、論理的思考力や営業力の強化をテーマに、部門長や経営企画の担当者向けの研修を多くの企業で実施してきました。5段階評価の平均を換算した受講者アンケートの公表実績は次のとおりです。

  1. 01平均満足度 95.6%
  2. 02現場での活用度合 84.5%
  3. 03各回の難易度評価 89.6%

人材紹介業の部門長クラス向けに実施した論理的思考力強化研修では、受講者全体の87%が「マネジメントの変化」を実感したと回答しています。研修で変えたい行動とその測り方は、事前のヒアリングで貴社の課題に合わせて一緒に決められます。料金は非公開で、ヒアリングのうえ個別にお見積もりします。

貴社の課題に最適な研修をご提案します

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心当たりがあれば、まずご相談ください。
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