コラム

人材開発支援助成金の人材育成支援コースの助成額|対象研修と申請手順

「外部の研修会社に頼んでも、費用の半分ほどは助成金で戻ってきそう」。研修会社の案内に「人材開発支援助成金の対象」と書かれているのを見て、受講料の何割かが戻る前提で予算を組む人事担当者も多いはずです。

しかし、企業向けの課題解決研修を数多く手がけてきた課題解決力強化道場の立場から言えるのは、人材育成支援コースの受給額は助成率より先に、研修の時間数とカリキュラムの書き方で決まるということです。同じ研修でも、時間の区分によって経費助成の上限が変わり、内容の書き方によっては対象外と判断されます。助成率の表を見比べる前に、自社の研修がどの時間区分に入り、何を習得する訓練として説明できるかを整理してから申請を考えても遅くありません。

本記事では、人材育成支援コースの4つの訓練メニューと令和8年度の改正点から、助成額の計算、対象になる研修の線引き、申請手順まで、研修を設計する側の視点で順を追ってお伝えします。

人材開発支援助成金の人材育成支援コースとは

人材開発支援助成金の人材育成支援コースは、従業員に職務と関連した訓練を計画どおりに受けさせた事業主へ、訓練経費と訓練中の賃金の一部を助成する厚生労働省の制度です。人材開発支援助成金にある複数のコースのうち、10時間以上の研修から使える基本のコースにあたります。制度の骨格は次のとおりです。

所管と申請先 厚生労働省(申請先は都道府県労働局)
対象事業主 雇用保険適用事業所の事業主(中小企業・大企業とも対象)
対象労働者 雇用保険の被保険者
経費助成率 45〜75%(訓練メニューと企業規模で変わる)
賃金助成額 受講者1人1時間あたり800円(大企業は400円)
年度の上限 1事業所あたり1年度1000万円

人材育成支援コースは、令和5年度に旧来の特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コースの3つを統合してできました。統合によって最低訓練時間が10時間以上となり、有期実習型訓練を除いて雇用形態を問わず対象になっています。助成金は訓練が終わってから支給される後払いのため、受講料はいったん自社で全額を支払います。

令和8年度改正の5つの変更点

人材育成支援コースは令和8年度に、4月8日・5月14日・8月3日の3回にわたって見直されました。研修の計画と申請に関わる変更点は次の5つです。

改正日 変更内容
令和8年4月8日 45歳以上を対象とする中高年齢者実習型訓練を新設
令和8年4月8日 eラーニングと通信制による訓練の経費助成上限を、訓練時間にかかわらず中小企業15万円・大企業10万円に引き下げ
令和8年4月8日 代表者の親族や親会社・子会社など、申請事業主と密接な関係にある相手へ払う講師謝金・受講料などを経費助成の対象外に
令和8年5月14日 支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書」(様式第28号)の提出が必要に
令和8年8月3日 不正受給の企業名公表を厳格化し、支給決定前でも自主申告していない場合は原則公表の対象に

研修の組み方に最も響くのは、eラーニングと通信制の経費助成上限の引き下げです。令和8年4月8日以降、eラーニング中心の研修は、訓練時間を延ばしても経費助成の上限が改正前の半分にとどまります。改正の詳細は、厚生労働省の令和8年度版 人材育成支援コースのご案内(令和8年8月3日版)に明記されています。

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人材育成支援コースの4つの訓練メニュー

人材育成支援コースの訓練メニューは、人材育成訓練・認定実習併用職業訓練・有期実習型訓練・中高年齢者実習型訓練の4つです。OJT(実際の業務を通じた訓練)を組み合わせるかどうかと、受講者の年齢や雇用形態でメニューが分かれます。

訓練メニュー 主な対象者 訓練の形 期間
人材育成訓練 被保険者(正社員・非正規とも) OFF-JTのみで10時間以上 定めなし
認定実習併用職業訓練 15歳以上45歳未満(主に新卒者) OJTとOFF-JTの組み合わせ(大臣認定が必要) 6か月以上2年以下
有期実習型訓練 正社員経験の少ない有期契約労働者等 OJTとOFF-JTの組み合わせ(正社員転換が前提) 2か月以上
中高年齢者実習型訓練 45歳以上の被保険者 OJTとOFF-JTの組み合わせ 2か月以上

人材育成訓練

人材育成訓練は、10時間以上のOFF-JT(業務から離れて行う研修)を実施すれば申請できる、4つのメニューで最も使いやすい訓練です。OJTは要らず、通学制、オンラインの同時双方向型、eラーニング、通信制のどれでも実施できます。管理職研修や外部講座の受講は、多くの場合人材育成訓練として申請します。

eラーニングと通信制は経費助成だけで、賃金助成の対象になりません。自社が企画・主催する事業内訓練をeラーニングで行う場合は、経費助成も受けられません。受講者が有期契約労働者等であれば、経費助成率は45%から70%に上がります。

認定実習併用職業訓練

認定実習併用職業訓練は、主に新規学卒者を対象に、OJTとOFF-JTを組み合わせた6か月以上2年以下の訓練を行うメニューです。対象は訓練開始日に15歳以上45歳未満の被保険者で、総訓練時間は1年あたり850時間以上、OJTの割合は2割以上8割以下が条件です。

事前に厚生労働大臣の認定を受ける必要があり、実施計画は訓練開始日の30日前までに提出します。認定の申請は4月入社に合わせて1〜3月に集中するため、新卒の育成に使う場合は年内に計画づくりを始めると間に合いやすいと見ています。

有期実習型訓練

有期実習型訓練は、正社員経験の少ない有期契約労働者等を正社員に転換するために、OJTとOFF-JTを組み合わせた2か月以上の訓練を行うメニューです。経費助成率は75%で4つのメニューのうち最も高く、賃金要件などを満たすと100%になります。

支給申請日までに正社員などへの転換を実施していることが条件で、転換しなかった場合はこのメニューとしては受給できません。職業能力開発推進者の選任などを済ませていれば、人材育成訓練として助成される場合があります。訓練の前には、キャリアコンサルタントなどの面談を受けてジョブ・カード(職務経験や能力を記録する厚生労働省の様式)を作成します。

中高年齢者実習型訓練

中高年齢者実習型訓練は、45歳以上の従業員にOJTとOFF-JTを組み合わせた2か月以上の訓練を行う、令和8年4月8日に新設されたメニューです。正社員転換ではなく在職者のスキルアップが目的で、経費助成率は中小企業60%、大企業45%です。

総訓練時間は6か月あたり425時間以上、OJTの割合は1割以上9割以下が条件で、OFF-JTは通学制か同時双方向型に限られます。新たに雇い入れた45歳以上の人も、雇い入れから訓練開始までが3か月以内なら対象です。事前にジョブ・カードを使ったキャリアコンサルティングを受け、訓練が必要と認められていることも条件になります。

人材育成支援コースの助成率と助成額

人材育成支援コースの助成額は、経費助成と賃金助成の合計で、訓練メニューと企業規模によって決まります。OJTを組み合わせるメニューには、OJTの実施に対する定額の助成も加わります。メニューごとの通常の助成率と助成額は次のとおりです。

訓練メニュー 経費助成率 賃金助成(1人1時間) OJT実施助成(1人1コース)
人材育成訓練(正規雇用労働者等) 45%(大企業30%) 800円(大企業400円) なし
人材育成訓練(有期契約労働者等) 70% 800円(大企業400円) なし
認定実習併用職業訓練 45%(大企業30%) 800円(大企業400円) 20万円(大企業11万円)
有期実習型訓練 75% 800円(大企業400円) 10万円(大企業9万円)
中高年齢者実習型訓練 60%(大企業45%) 800円(大企業400円) 10万円(大企業9万円)

賃金助成は、所定労働時間内に訓練を受けた時間に対して支給されます。たとえば中小企業が社員5人に12時間の通学制研修を業務時間内に受けさせると、賃金助成は800円×12時間×5人で4万8000円です。

賃金要件による上乗せ

賃金要件か資格等手当要件のどちらかを満たすと、経費助成率が15ポイント、賃金助成額が1時間あたり200円(大企業は100円)上乗せされます。有期実習型訓練だけは経費助成率の上乗せが25ポイントで、100%になります。2つの要件の中身は次のとおりです。

賃金要件 訓練終了日の翌日から1年以内に、対象労働者全員の毎月決まって支払われる賃金を5%以上増やすこと(改定後3か月と改定前3か月の比較)
資格等手当要件 就業規則などに資格等手当を定め、訓練修了後に支払って賃金を3%以上増やすこと(支払後3か月と支払前3か月の比較)

とりわけ見落とされがちなのが、上乗せ分は通常分の支給決定の後に、別に申請する仕組みだという点です。申請期限は、要件を満たす賃金や手当を3か月続けて支払った日の翌日から5か月以内で、労働局から個別の案内は届きません。

訓練時間区分ごとの経費助成限度額

経費助成には受講者1人・1訓練あたりの上限があり、支給申請時点の実訓練時間が長いほど上限が上がります。

企業規模 10時間以上100時間未満 100時間以上200時間未満 200時間以上
中小企業 15万円 30万円 50万円
大企業 10万円 20万円 30万円

中小企業が1人あたり受講料40万円・20時間の研修を受けさせると、助成率45%で計算した18万円は上限を超えるため、経費助成は15万円にとどまります。標準学習時間の定めがないeラーニングと通信制は、時間にかかわらず最も低い区分で判定されます。このほか、同じ労働者の支給申請は1年度3回まで、1事業所の支給総額は1年度1000万円までです。

対象研修と対象外研修の線引き

人材育成支援コースの対象になる研修は、受講者の職務に直接関係する専門的な知識や技能を身につけさせる、10時間以上のOFF-JTです。職種を問わず誰にでも必要な内容や、知識・技能の習得を目的としない内容は対象外で、カリキュラムの一部に含まれる場合はその時間を除いて10時間以上あるかを判定します。

対象外になる訓練の例

対象外になる訓練は、厚生労働省のパンフレットで種類ごとに示されています。社員研修を企画する側が判断を誤りやすいものは次のとおりです。

人材育成支援コースの対象外になる主な訓練

・接遇やマナー講習など、職種を問わず職業人に共通して必要なもの
・コンサルタントによる経営改善指導、自社の経営方針の説明など、通常の事業活動として行うもの
・意識改革研修やモラール向上研修など、知識や技能の習得を目的としないもの
・研究会、見学会、ビジネス交流会など、職業能力開発に直接関係しないもの
・労働安全衛生法の特別教育など、法令で実施が義務付けられている講習
・ビデオを視聴するだけの講座や、定額制サービスによるeラーニング

定額制のeラーニングは人材育成支援コースでは対象外で、人への投資促進コースの定額制訓練で扱われます。月額制の学習サービスを導入している企業は、申請するコースを先に切り替えて考えます。

事業内訓練の講師要件

自社で企画・主催する事業内訓練では、講師が要件を満たしている必要があります。外部講師であれば、その分野で指導員や講師を3年以上務めた人などが該当します。

部内講師(自社の役員や従業員)が教える場合は、職業訓練指導員免許、1級技能検定の合格、実務経験10年以上のいずれかが必要で、講師経験は実務経験に数えません。社内のベテラン社員に任せた研修でも要件を満たさない場合があるため、計画届を出す前に講師の資格と経歴を書類で確かめます。

課題解決型研修が対象外になる境目

自社の実務課題を題材にする課題解決型研修は、課題解決の手法を習得させる訓練として設計されていれば対象になり得る一方、講師が答えを出す経営指導に近づくと対象外と判断されます。厚生労働省が対象外の例に、コンサルタントによる経営改善指導と意識改革研修を挙げているためです。

研修を設計してきた立場から本音を言えば、境目は、研修の時間の中で受講者が何を習得するかをカリキュラムに書けるかどうかにあります。同じ課題解決型の研修でも、記載のしかたによって判断が分かれやすい例を並べると次のようになります。

対象と判断されやすい記載 対象外と判断されやすい記載
ロジックツリーで課題を分解する手法の習得と演習 講師が自社の課題を分析し、改善策を提示する
KPIの設計手法を学び、自部署の指標で演習する 自社の経営方針や事業計画を説明する
受講者が手法を使って課題を整理し、講師が添削する 当事者意識を高めるなど、意識の変化だけを目的とする

対象かどうかは労働局が受講者の職務や実際の訓練内容を見て個別に判断するため、表は判断の傾向として読んでください。自社課題を使う研修では、受講者本人が手法を使って答えを出し、講師はその使い方を添削するという役割分担が、カリキュラムから読み取れることが前提になると見ています。研修会社を選ぶ段階で、習得する手法と各回の時間数をカリキュラムに書き分けてもらえるかを確かめます。

時間の設計も受給額を左右します。1回2.5時間の研修を5回行うと実訓練時間は12.5時間で、10時間以上の要件を満たし、経費助成の上限は中小企業で1人15万円の区分に入ります。1回を短くして回数を増やす設計は業務を止めにくい反面、合計が10時間に届かなければ対象外になるため、回数を決める段階で合計時間を数えておきます。

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人材育成支援コースの申請手順

人材育成支援コースの申請は、事前準備から支給決定までの5段階で進みます。訓練開始日の1か月前までに計画届を出していない研修は、内容が要件を満たしていても助成されません。

  1. 01職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定・周知(計画届の提出日まで)
  2. 02職業訓練実施計画届の提出(訓練開始日の6か月前から1か月前まで)
  3. 03計画どおりの訓練の実施と、出席・支払いの記録
  4. 04支給申請書の提出(訓練終了日の翌日から2か月以内)
  5. 05労働局の審査と支給・不支給の決定

事前準備では、就業規則・労働協約・事業内職業能力開発計画のいずれかに、定期的なキャリアコンサルティングの機会を時期まで特定して定めます。「入社から3年ごとに行う」のように時期を書いていない規定は、要件を満たしません。有期実習型訓練だけは、職業能力開発推進者の選任などを計画届の前に済ませる要件の対象外です。

訓練期間が6か月を超える通学制と同時双方向型の訓練は、6か月ごとに区切って分割で支給申請できます。分割した期間の受講時間が実訓練時間の8割以上あれば、その期間に支払った経費と賃金分を先に申請できます。申請様式は、厚生労働省の人材開発支援助成金のページから取り寄せます。

就業規則や職業能力開発推進者の準備を研修の企画と並行してどう進めるか、またキャリアアップ助成金や自治体の制度とどう使い分けるかは、社員研修の助成金を制度横断で整理した別の記事で取り上げています。

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申請でつまずきやすい3つの注意点

人材育成支援コースでは、研修の内容が要件を満たしていても、経費の支払い、研修を行う時間、変更の手続きの3点がずれると、助成が減るか不支給になります。

訓練経費を申請前に全額支払うこと

経費助成を受けるには、支給申請までに訓練経費を事業主が全額支払っている必要があります。研修会社からの返金、受講レビューへの謝礼、営業協力金などを受け取ると、全額を負担したことになりません。AI研修とAIツールをセットで契約した場合も、研修費用は対象になり、ツールの導入費用は対象外です。

「助成金を使えば研修が実質無料になる」という提案は、制度上成り立ちません。人材育成支援コースは経費の一部を助成する仕組みで、支払った額を超えて戻ることはなく、返金などを受け取れば経費助成そのものが対象外になります。

研修を所定労働時間内に行うこと

賃金助成は、所定労働時間内に受けた訓練の時間にだけ支給されます。所定労働時間外や休日に行った研修は、割増賃金を払っていても賃金助成の対象外です。

就業規則に規定があり、事前に休日を振り替えた振替休日であれば、休日の研修も賃金助成の対象になります。事後に代休を与えた場合は対象外です。休日出勤手当などを含めて賃金を正しく払っていないと、経費助成も含めて助成金全体が不支給になります。

変更届を期限までに出すこと

計画届を出した後に受講者・日時・内容・場所・時間数を変えるときは、変更届を提出します。受講者の追加は訓練開始日の前日まで、日時や内容の変更は当初の実施日と変更後の実施日の早いほうの前日までが期限です。

期限を過ぎて変更後の内容で実施した部分は、助成の対象になりません。訓練開始日を1か月以上遅らせる場合は、変更届ではなく計画届を出し直します。

人材育成支援コースのよくある質問

大企業でも人材育成支援コースは使えるか

大企業でも人材育成支援コースは使えます。雇用保険の適用事業所であれば規模を問わず対象で、人材育成訓練の経費助成率は30%、賃金助成は1時間400円、経費助成の上限は1人10万円から30万円です。中小企業に当たるかは業種ごとの資本金額か常時雇用する労働者数で判定し、支給申請の時点の規模で決まります。

eラーニングだけの研修も対象になるか

eラーニングだけの研修も、外部の教育訓練機関が提供するものであれば人材育成訓練の対象になります。助成されるのは経費だけで賃金助成はなく、自社で企画したeラーニングと定額制のサービスは対象外です。

申請を研修会社に任せられるか

研修会社が報酬を得て支給申請の手続きを代行することはできません。社会保険労務士法により、社会保険労務士以外が報酬を得て申請を代行することは禁じられています。書類の作成を外部に頼む場合は社会保険労務士に依頼し、手続きを任せていても不正受給の責任は受給した事業主が負います。

賃金要件を満たさないと受給できないか

賃金要件を満たさなくても、人材育成支援コースは受給できます。賃金要件と資格等手当要件は上乗せを受けるための要件で、満たさない場合は通常の助成率と助成額で支給されます。

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課題解決力強化道場はこれまで、大手企業から中小企業、教育機関まで、累計約800名超の受講者に課題解決力の研修を提供してきました。その経験から、人材育成支援コースを研修に活かせるかは、受講者が習得する手法と時間をカリキュラムに書ける設計かどうかで決まると考えています。

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