「せっかく企画した研修が、現場では意味ないと言われてしまう」。人事や研修担当の立場にいると、一度は突き当たる悩みではないでしょうか。予算をかけ、講師を手配し、当日は受講者もそれなりに真剣に取り組んでいたはずなのに、数か月後に振り返ると何も変わっていない。この「やった感」と「変わらなさ」のギャップこそ、多くの担当者が抱える本当の課題です。
ただ、研修そのものに価値がないわけではありません。意味がないと言われる研修には、いくつかの共通した構造的な原因があります。そして、その原因は設計の段階でかなりの部分を防げます。この記事では、研修が意味ないと判断されてしまうメカニズムを掘り下げたうえで、担当者が現場で成果につなげるために何を変えればよいのかを、具体的に整理していきます。
「研修は意味ない」という声はどこから生まれるのか

まず押さえておきたいのは、「研修は意味ない」という感覚が、決して一部の斜に構えた受講者だけのものではないという事実です。むしろ、施策を回している人事の側でも同じ手応えのなさを感じているケースが少なくありません。
実際、株式会社LDcubeが継続的に実施している人材育成に関する調査では、人材育成施策の効果を感じていない組織の割合が65%前後で推移していると報告されています。効果を感じられないまま、それでも毎年同じように研修を続けている——この構図が、多くの組織で起きているわけです。
“ 効果を感じていない組織の割合が65%前後で推移している。つまり、効果を感じないのにやり続けている。 ― 株式会社LDcube「研修は意味ないと言われる理由とは?」
なぜこうなるのか。ここで重要なのは、多くの担当者が「研修の中身」に原因を求めがちだという点です。講師の質、教材のわかりやすさ、当日の進行——たしかにこれらも無関係ではありません。しかし、意味ないと言われる研修の根っこにある問題は、実はもっと手前にあります。それは「研修が終わった後に何も設計されていない」という、いわばやりっぱなしの構造です。
学びが現場に残らないという厳然たる事実
研修転移という言葉があります。研修で学んだ知識やスキルが、実際の現場で行動として定着し、成果につながることを指す概念です。裏を返せば、学びが現場に持ち帰られなければ、研修は文字どおり「その場限りのもの」で終わってしまいます。
この点について、しばしば引用されるのがカナダ企業を対象にした研究です。ある調査によれば、研修を受けた従業員の47%が研修直後には「学んだ内容を実践する」と考えているのに、半年後には12%、1年後には9%にまで下がっていたと報告されています。感銘を受けた研修であっても、翌日には日々の業務に飲まれ、いつの間にか元の習慣に戻ってしまう。これは受講者の意志が弱いからではなく、現場に戻った瞬間に働く力学として、ある意味で自然な現象なのです。
国内の調査でも近い傾向が見えます。リ・カレント株式会社の意識調査では、研修で学んだ内容を明確に「実践した」と答えた受講者は13.5%にとどまり、「あまり実践していない」が31.5%を占めました。学びが行動に変わる割合は、私たちが期待するよりもずっと低いというのが実態です。
合わせて読みたい、実践のヒントはこちら。
ナレッジ受け身型組織を変える-陥りがちな罠に学ぶ、社員が自ら動き出す“経営の仕組み”のつくり方-
「事業は伸びているのに、なぜか自分の手が離せない」。社員が指示待ちになる“受け身型組織”は、実は経営やマネジメントの設計の問題です。陥りがちな3つの罠をひもとき、社員が自ら動き出す「経営の仕組み化」の3要素を、現場の実例とともに解説します。
意味ないと言われる研修に共通する3つの原因

では、なぜ学びは現場に残らないのでしょうか。上位で語られている理由を整理し、担当者の実感に照らして掘り下げると、原因は大きく3つに集約できます。
原因1:受講者が研修の目的を握っていない
最も根深いのが、受講者が「なぜ自分がこの研修を受けるのか」を理解しないまま席についているケースです。人事から見れば明確な狙いがあっても、その狙いが本人の言葉に翻訳されて届いていなければ、受講者にとっては「業務を止めて呼び出された時間」でしかありません。
ここで見落とされがちなのが、目的の伝達は「研修当日の冒頭説明」では遅いという点です。当日にいくら丁寧に趣旨を語っても、受講者の心づもりは前日までにほぼ固まっています。目的を握らせるなら、案内の段階から「この研修で何ができるようになってほしいのか」を上司の口から伝えてもらう——そこまで設計して、ようやく受講者は当事者になります。
原因2:研修内容と現場の実務がかみ合っていない
次に多いのが、研修で扱う題材と、受講者が日々向き合っている実務とのズレです。汎用的なケーススタディや一般論としてのフレームワークは、体系的に学ぶには適しています。ところが、それをそのまま自分の仕事に当てはめようとすると、多くの受講者は「理屈はわかるが、うちの現場では使えない」という結論に至ります。
とりわけ管理職層や中堅層になるほど、この傾向は強まります。彼らはすでに一定の経験と自分なりの判断基準を持っているため、現場の手触りから離れた題材には敏感です。知っていることを改めて教えられる、あるいは自分の状況と結びつかない話を聞かされる——この二つは、意味ないと感じさせる代表的なパターンです。
原因3:インプット偏重でアウトプットの場がない
三つめは、講師からの一方的な講義に終始し、受講者が自分の頭で手を動かす場面がない研修です。座学で知識を受け取るだけでは、「わかったつもり」は生まれても「できる」には届きません。
ここに、研修設計の最も本質的な断層があります。人は、知識を聞いて理解することと、その知識を使って実際に問題を解くことのあいだに、想像以上に大きな溝を抱えています。フレームワークの名前を言えることと、目の前の課題をそのフレームワークで切り分けられることは、まったく別の能力です。アウトプットの機会がない研修は、この溝を溝のまま放置してしまいます。
社内研修と社外研修、それぞれの意味ないパターン

「意味ない」と言われる研修は、社内で内製するか、社外に委託するかによって、つまずくポイントが少しずつ異なります。両者の特性を理解しておくと、自社の状況に応じた打ち手が見えてきます。
社内研修が空回りしやすい構造
社内研修の強みは、自社の事情に即した内容を扱えることです。ところが実際には、忙しい管理職が片手間で講師を務めるケースが多く、準備が十分でないまま当日を迎えることが起きがちです。日常業務の合間を縫って教材をつくり、進行し、フォローまで——これを本業と並行してやり切るのは、現実的にかなりの負荷がかかります。
さらに、社内の関係性が研修の空気に影響することもあります。上司が講師だと、受講者は率直な疑問を口にしづらく、わかったふりで場をやり過ごしてしまう。結果として、双方向のはずの研修が一方通行に近づいてしまうのです。
社外研修が意味ないと言われるとき
一方の社外研修は、専門の講師から体系立てて学べる点が魅力です。自社にない視点を取り込めるのも大きな価値でしょう。ただし、外部に任せきりにすると別の落とし穴が待っています。汎用的なプログラムをそのまま導入した場合、内容が一般論に寄りすぎて、受講者が「自分の仕事とどうつながるのか」を見いだせないことがあるのです。
つまり、社外研修で意味ないと言われるかどうかは、外注の可否そのものではなく、自社の実務課題をどこまで研修に持ち込めているかで決まります。プロの知見と自社の文脈をかけ合わせられれば、社外研修はむしろ社内では出せない成果を生みます。この「かけ合わせ」を設計できるかどうかが分岐点です。
意味ないからと研修をやめると何が起きるか

ここで一度立ち止まって考えたいのが、「意味ないなら研修そのものをやめればいい」という発想の危うさです。効果が見えないなら費用を削る、という判断は経営的には理解できます。しかし、研修を止めることには見えにくいコストがともないます。
人材育成の機会が失われれば、社員のスキルは各自の現場経験に依存するようになります。すると、育つ人は育つが育たない人は放置される、という個人差が広がっていく。とりわけ、体系的な思考の型や課題への向き合い方といった、日々のOJTでは伝わりにくい能力は、意図的な育成の場がなければ組織に根づきません。
ここで問うべきは「研修をやるか、やめるか」ではなく、「意味のある研修にどう変えるか」です。効果が出ないのは研修という手段そのものの限界ではなく、設計の問題である場合がほとんどだからです。では、具体的にどう変えればよいのか。次の章で整理します。
研修を意味あるものに変える設計のポイント

意味ないと言われる研修を、成果につながる研修へ変えるための要点を整理します。ここで一貫しているのは、研修を「学びっぱなし」で終わらせない、という思想です。
- 01研修のゴールを「行動変容」で定義する
- 02案内の段階から受講者に目的を握らせる
- 03自社の実務課題を題材に組み込む
- 04アウトプットとフィードバックの場をつくる
- 05研修後のフォローを設計に含める
ゴールを「わかった」ではなく「変わった」に置く
研修設計の出発点は、ゴールの定義です。ここで多くの研修が「知識を理解してもらう」ことをゴールにしてしまいますが、それでは不十分です。目指すべきは、研修を経て受講者の現場での行動が変わることです。
研修評価の分野では、受講後の満足度や理解度を測るだけでは、研修の本当の効果はわからないとされています。数か月後に行動がどう変化したか、そしてその変化が業績にどう結びついたか——ここまで見て初めて、研修が意味を持ったと言えます。ゴールを行動変容に置けば、逆算して「そのために当日何をすべきか」「事前事後に何を仕込むべきか」が自然と決まってきます。
「わかる」と「できる」の溝を埋める仕掛け
先に触れたとおり、知識を理解することと、それを使いこなせることのあいだには大きな溝があります。この溝を埋めるには、受講者自身が手を動かし、自分の考えを言語化し、それに対して具体的なフィードバックを受ける、というサイクルが欠かせません。
ここで効いてくるのが、フィードバックの「粒度」です。全体に向けた一般的な講評ではなく、一人ひとりの思考プロセスに踏み込んで、どこでつまずいているのかを個別に指摘する。これができると、受講者は自分の弱点を具体的に認識できます。おそらく、研修後に「自分はできていると思っていたが、実はできていなかった」という気づきを持てるかどうかが、その後の伸びを大きく左右するのではないでしょうか。少人数での運営が有効なのは、まさにこの個別性を担保できるからです。
研修後のフォローで学びを現場に根づかせる
そして、意外なほど軽視されがちなのが研修後のフォローです。前述のリ・カレントの調査では、興味深いデータが示されています。研修後に上司から実践支援を「毎回受けた」受講者は、学んだ内容を実践した比率が明確に高かったのに対し、支援がほぼなかったと答えた受講者は全体の6割を占めていました。
この結果が示唆するのは、研修の成否は当日の出来だけでなく、現場に戻った後の支援体制に大きく左右されるということです。学びが定着するには、研修という一点ではなく、その前後を含めた線でとらえる視点が必要になります。研修企画者と現場が連携し、受講者が学びを試す場を継続的に用意できるかどうか——ここに、意味ある研修と意味ない研修の分かれ道があります。
設計の要点をひとことで
意味ある研修とは、「自社の課題を題材に、手を動かし、個別のフィードバックを受け、現場で試すまでが一続きになっている研修」です。この流れのどこかが欠けると、途端に学びは現場に残らなくなります。
「学んで終わり」にしない研修をお探しなら課題解決力強化道場へ

ここまで見てきたとおり、研修が意味ないと言われる原因の多くは、内容そのものよりも「学びが現場に残る設計になっていないこと」にあります。目的の共有、実務との接続、アウトプットと個別フィードバック、そして研修後のフォロー——これらを一連の流れとして組み立てられるかどうかが、成果を分けます。
とはいえ、この設計を人事担当者だけで自社に実装するのは、決して簡単ではありません。そうした課題に応えるのが、株式会社Bloomsが運営する課題解決力強化道場です。少人数制・ハンズオン・超実践型をコンセプトに、外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが講師を務め、自社の実務課題そのものを題材にしたアウトプット型のカリキュラムを提供しています。
特徴的なのは、手法を教えながらも答えは受講者本人が出す構造になっている点です。毎回の個別フィードバックシートで一人ひとりの強みと改善点を可視化し、各回のあとには研修企画者との振り返りMTGを実施して次回の方針をすり合わせる。この設計によって、「分かる」と「できる」のギャップに受講者自身が気づき、行動が変わっていきます。累計受講者数は約800名を超え、平均満足度は95.6%と報告されています。
「研修が現場で活きない」「管理職層の課題解決力にバラつきがある」「自走する人材が育たない」——そうした悩みに心当たりがあれば、まずは気軽にご相談ください。貴社の状況をうかがったうえで、最適なカリキュラムをご提案いたします。
貴社の課題に最適な研修をご提案します
・管理職のスキルにバラつきがある
・研修が現場で活きない
・自走する人材が育たない
心当たりがあれば、まずご相談ください。
貴社の状況に最適なカリキュラムをご提案いたします。
※ご相談・お見積もりは無料です