「営業は場数を踏ませれば、そのうち育つはず」。いま管理職を務めている方の多くは、先輩の背中を見ながら同行や飛び込みで力をつけてきたため、同じやり方で部下も育つと考えやすいのです。ところが実際には、同行させても研修を受けさせても、数字が伸びないまま伸び悩む若手が残り続けます。
しかし、企業の管理職や支社長の研修に伴走し、営業体制の立て直しを支援してきた課題解決力強化道場の立場から言えるのは、営業が育たない原因は本人の根性や場数の不足ではなく、「知識」「思考力」「実行力」のどこで止まっているかを切り分けないまま指導していることにある、ということです。止まっている層を見誤ったまま同行や研修を重ねても、成果には結びつきにくいと見ています。
本記事では、営業が育たない組織に出るサインから、原因の3つの層、層ごとの育て方、育てる側がつまずく点、よくある質問まで、研修型のコンサルティングを手がける立場で順を追ってお伝えします。
営業が育たないと感じる組織には共通するサインがある

「営業が育たない」という悩みは、中身が人によってまちまちです。入社から時間がたっても一人で商談を組み立てられない状態を指す人もいれば、行動量は足りているのに受注につながらない状態を指す人もいます。まずは自社で何が起きているのかを、具体的な場面で確かめるところから始めましょう。
- ✓先輩に同行した商談では話せるのに、一人で訪問すると提案が薄くなる
- ✓失注の理由を聞くと「タイミングが合わなかった」で説明が止まる
- ✓日報に訪問件数は書かれているが、次に何をするかが書かれていない
- ✓売上の大半を一部のベテランが担い、そのやり方が共有されていない
- ✓未達が続いた若手が、自信をなくして早い段階で辞めていく
複数の項目に心当たりがあるなら、個人の頑張りだけで状況が変わることは期待しにくいはずです。同じ現場で同じ上司のもとにいて、何人も同じところでつまずいているのであれば、原因は一人ひとりの資質よりも、育て方の側にあると考えるほうが筋が通ります。
営業が育たない原因は、多くの場合、育成の設計にあります。
営業が育たない原因は知識と思考力と実行力の3つの層に分かれる

育たない原因を探るとき、「OJTが属人化している」「フィードバックが足りない」「モチベーションが下がっている」と、目についた問題を並べて終わりにしてしまうことがあります。どれも間違いではありませんが、並べただけでは、どこから手を付けるべきかが決まりません。
そこで、営業に必要な力を「知識」「思考力」「実行力」の3つの層に分けて整理します。知識は商品や業界、営業の型を知っていること、思考力はその知識を目の前の顧客に合わせて組み立てること、実行力は組み立てた提案を行動に移し、振り返って次に生かすことを指します。
| 層 | 現場で見える症状 | よくある背景 |
|---|---|---|
| 知識 | 質問に答えられず、提案に自信が持てない | 商品理解や営業トークが共有されず、OJT任せになっている |
| 思考力 | 顧客の話を聞いても、提案が商品説明の繰り返しになる | ゴールから逆算して商談を組み立てる練習の場がない |
| 実行力 | 研修の内容を理解しているのに、商談で使えない | 振り返りとフィードバックの機会が少ない |
3つを並べてみると、同じ「育たない」でも打つべき手がまるで違うとわかります。知識が足りない人に振り返りの面談を増やしても、話す材料がありません。反対に、知識は十分なのに行動が変わらない人に勉強会を重ねても、成果は変わらないでしょう。
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知識の層では商品理解と営業の型が共有されていない
知識の層で止まっている営業は、顧客から想定外の質問を受けると答えに詰まり、提案に自信が持てなくなります。背景にあるのは、商品知識や業界の動向、商談の進め方といった基礎が、教える人によってばらばらに伝わっている状態です。
とくにOJTが「先輩の隣で見て覚える」だけになっていると、先輩が暗黙のうちにやっている準備や質問の順番が、新人には見えません。売れている人のやり方が言葉になっていない組織ほど、この層で止まる人が増えると感じています。
思考力の層では顧客の課題を分解して提案できない
知識はあるのに売れない営業の多くは、思考力の層で止まっています。顧客の話を聞いても、何が本当の困りごとなのか、どの順番で解決すれば相手が判断しやすいのかを組み立てられず、結局は商品説明を繰り返してしまうのです。
この層は、トークスクリプトを覚えさせても身につきません。顧客ごとに状況が違う以上、「この商談の最後に相手に何を決めてもらうか」から逆算して考える練習を重ねる必要があります。
実行力の層では振り返りがなく学びが行動に残らない
研修で習った内容を説明できるのに、商談ではいつものやり方に戻ってしまう。これが実行力の層で止まっている状態です。理解と行動のあいだには溝があり、その溝は一度の研修や一度の同行では埋まりません。
商談のあとに「何がうまくいき、何を変えるか」を言葉にする場がないと、同じ失敗が繰り返されます。数字だけを追う職場では、断られ続けるうちに意欲も下がり、行動量そのものが落ちていきます。
3つの層は、知識の上に思考力、思考力の上に実行力が積み上がる関係にあります。とりわけ見落とされがちなのが、真ん中にある思考力の層です。知識は研修や資料で補いやすく、実行力は行動量として目に見えますが、思考力は外から見えにくいため、育たない原因が思考力にあるのに、知識の詰め込みや行動量の管理で解決しようとしてしまうケースが後を絶ちません。
営業が育たない状態を放置すると売上だけでなく人も離れる

育成の問題は、目先の売上には表れにくいため、後回しにされがちです。しかし放置した場合の影響は、時間がたつほど組織全体に広がっていきます。
- 01売上計画が一部のベテラン頼みになる
- 02担当者によって顧客対応の質が揺れる
- 03数字に追われた若手が疲れて離職する
- 04育てる余力が減り、次の世代も育たない
ベテラン頼みの体制では、その人が異動や退職で抜けたとたん、顧客との関係もノウハウも一緒に失われます。顧客から見れば、窓口となる営業の対応が会社の評価そのものです。担当者によって提案の質に差があれば、会社全体の信用が下がる要因になります。
さらに深刻なのが離職です。成果の出し方がわからないまま数字だけを求められると、若手は自分に向いていないと結論づけて辞めていきます。採用と育成に使った時間が失われるうえ、残った人の負担が増え、育成に割ける時間がさらに減る。この悪循環に入ると、抜け出すのに年単位の時間がかかると見ています。
営業の育て方は原因の層ごとに打ち手を変える

ここまでの整理を、実際の育成の進め方に落とし込みます。大切なのは、全員に同じメニューを課すのではなく、一人ひとりがどの層で止まっているかを見立ててから打ち手を選ぶことです。
-
- 1.商談の記録や同行を通じて、止まっている層を見立てる
- 2.層に合った育成の打ち手を選ぶ
- 3.結果とプロセスの両方に目標を置く
- 4.短い周期で振り返り、見立てを更新する
以下では、層ごとの打ち手と、目標の置き方を順にお伝えします。
知識の層は型の共有と同行の組み合わせで埋める
知識の層は、3つの層の中でもっとも仕組み化しやすい部分です。売れている営業がどんな準備をし、どんな順番で質問しているのかを書き出し、社内の共通の型として共有しましょう。ここでいう型とは、トークの台本ではなく、商談の各段階で確認すべき項目の一覧のようなものです。
型を渡したら、座学だけで終わらせず、ロールプレイと同行を組み合わせます。座学で知り、ロールプレイで試し、同行で本物の商談を見る。この3つを行き来させることで、知識が使える状態に近づきます。
思考力の層はゴールから逆算する問いで鍛える
思考力は、正解を教えるほど育たなくなる力です。上司が提案内容を先回りして決めてしまうと、部下は考える機会を失います。代わりに、商談の前に問いを投げかけて、部下自身に答えを出させましょう。
たとえば「この商談の最後に、相手に何を決めてもらいたいか」「その判断に、相手はどんな情報を必要としているか」「その情報を引き出すには、何をどの順番で聞くか」といった問いです。顧客の困りごとを大きな問題から小さな要素へ枝分かれさせて整理する「ロジックツリー」のような道具を使うと、考えた過程を上司と部下で見比べやすくなります。
実行力の層は小さな振り返りを毎回回す
実行力を鍛える鍵は、振り返りの頻度です。月に一度の面談でまとめて振り返るよりも、商談ごとに短く「予定どおりに進んだ点」「想定と違った点」「次に変える点」を言葉にするほうが、行動は変わりやすいと感じています。
上司のフィードバックは、良かった点と改善点を具体的な場面に結びつけて伝えましょう。「もっと踏み込んで」ではなく、「予算を聞く前に導入時期を確認できていれば、提案の順番を変えられた」と伝えれば、部下は次の商談で何を変えればよいかがわかります。
目標とKPIは結果とプロセスに分けて置く
受注件数や売上といった結果の目標だけでは、育成途中の営業は毎月の未達に疲れてしまいます。結果の目標とは別に、商談化の件数や提案書の提出数など、行動と過程を測る中間の指標、いわゆるプロセスKPIを置きましょう。
プロセスKPIがあれば、受注にはまだ届かなくても、どの段階まではできるようになったのかが見えます。成長が数字で確認できると、若手は自分の伸びを実感でき、上司は次にどの段階を鍛えればよいかを判断できます。
営業が育たない組織ほど育てる側がプロセスで語れていない

ここで視点を反転させましょう。営業が育たない理由を若手の側にばかり探していると、見えなくなるものがあります。それは、育てる側の上司やマネージャーが、売れる理由と売れない理由をプロセスに分けて説明できているかどうかです。
営業育成の記事ではあまり語られない点ですが、プレイヤーとして成果を出してきた人ほど、自分がなぜ売れたのかを言葉にしないまま管理職になっています。そのため部下への指導が「もっと訪問しよう」「気持ちで負けるな」といった結果と気合いの話になりやすいのです。
| 場面 | 結果で語る指導 | プロセスで語る指導 |
|---|---|---|
| 失注したとき | 次は取れるように頑張ろう | ヒアリング、提案、クロージングのどの段階で相手の反応が変わったかを確かめる |
| 未達が続くとき | 訪問件数を増やそう | 商談化率と受注率のどちらが低いかを見て、弱い段階を一つに絞る |
| 成功したとき | よくやった | 何を準備し、どの質問が効いたのかを言葉にして型に加える |
表の右側のように指導できる上司がいる組織では、部下の成長が早くなります。裏を返せば、若手の育成を立て直す近道は、若手より先に、育てる側の課題を分解する力を鍛えることです。
課題解決力強化道場の導入事例にも、この順番を示すものがあります。保険業の企業では、ノルマだけを追いかける風土のもとで離職が増え、担当者のスキル不足から支社の立ち上げも頭打ちになっていました。支社長クラスが論理的思考力を学び、営業のプロセスを型にまとめ、段階ごとに失注の原因を分析する体制に切り替えた結果、成果とプロセスの両方を重視する組織へと変わり、支社同士が成功事例を共有するようにもなったといいます。
“課題解決力強化道場は、一言で言うと「研修型のコンサルティング」だと思います。手法を教えてはもらいますが、最終的に答えを持っているのは、受講者本人なので、うまくフィードバックをしてもらいながら、支社長主体で、弊社流の営業体制が構築出来ました。― 保険業 部門長(課題解決力強化道場 導入事例より)
もう一つ見逃せないのが、「分かる」と「できる」の差です。別の導入事例では、本で論理的思考を学んで自分はできていると考えていた管理職が、講師からのフィードバックを受けて、実際にはまったくできていなかったと痛感したという声が寄せられています。育てる側も、学んだだけでは教えられるようにはなりません。自分の業務で試し、指摘を受け、直すという工程を通って、はじめて部下に渡せる力になるのです。
「学んで終わり」にしない研修を
課題解決力強化道場は、
外資系コンサル出身の現役プレイヤーが直接指導するハンズオン型研修です。
知識習得で終わらない、行動が変わる研修をご提供いたします。
少人数制 × ハンズオン × 超実践型
営業の育成でよくある失敗は3つある

育成に力を入れているのに成果が出ない組織には、共通する失敗があります。どれも善意から始めた取り組みが、途中で形だけになってしまったものです。
同行させるだけで振り返りをしない
先輩の商談に同行させること自体は、知識の層を埋めるうえで有効です。ただ、同行したあとに「なぜあの場面であの質問をしたのか」を話し合わなければ、新人には表面の話し方しか残りません。同行の価値は、商談の最中よりも、帰り道の数分間の会話で決まると言ってもよいほどです。
数字の結果だけで評価する
受注件数だけで評価すると、成長の途中にある営業ほど評価が低く出ます。まだ受注には届かないものの、ヒアリングの質が上がってきた。そうした変化を拾えない評価の仕組みでは、若手は努力の方向を見失い、意欲を落としていきます。
研修を受けさせて終わりにする
外部研修に送り出し、受講したことで育成を終えたとみなしてしまう失敗です。研修の直後は理解が深まっていても、現場に戻って試す場と振り返る場がなければ、数週間で元のやり方に戻ってしまいます。
3つの失敗に共通する点
いずれも、インプットの機会は用意しているのに、それを行動に移して振り返る工程が抜けています。同行、評価、研修のどれを見直す場合も、「やったあとに何を話し合うか」を先に決めておくと失敗を防ぎやすくなります。
失敗を避けるために新しい施策を足す必要はありません。いま行っている同行や研修の後ろに、振り返りの時間を一つ加えるだけでも、育成の手ごたえは変わってくるはずです。
営業を社内で育てるか外部に頼るかは目的で選ぶ

社内だけで育成が回らないとき、外部の力を借りる選択肢もあります。どれが正解ということはなく、何を急ぎ、何を自社に残したいかで向き不向きが分かれます。
| 方法 | 向いている場面 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 社内のOJTと勉強会 | 育成を担える管理職がいて、時間も確保できる | 教える人によって内容がばらつきやすい |
| 営業代行などのアウトソーシング | 育成を待たずに、目先の商談数を確保したい | ノウハウが社内に残りにくい |
| 外部の研修 | 育てる側の力を底上げし、社内で育つ仕組みを作りたい | 受けっぱなしにすると現場で使われない |
すぐに売上を立てる必要があるなら、営業代行で時間を買う判断も合理的です。一方で、数年先まで自社の営業組織で成果を出し続けたいのであれば、社内に育てる力を残す方法を選ぶことになります。
外部研修を選ぶ場合は、座学中心か、自社の実務課題を題材に手を動かす形式かを確かめましょう。前の章で触れたとおり、理解と行動のあいだの溝を埋めるには、試して指摘を受ける工程が欠かせないからです。
営業が育たないときによくある質問

育成の現場でよく寄せられる疑問に、実務の立場からお答えします。
新人営業が「やることがない」と言うときはどうすればよいですか
やることを増やす前に、目的を渡しましょう。新人が手持ち無沙汰になるのは、仕事が少ないからではなく、何のために何をすればよいかがわからないからです。「来月までに担当業界の主要顧客の課題を3つ説明できるようにする」のように、到達点と期限を示せば、新人は自分で行動を組み立て始めます。
新卒の営業成績が悪いのは適性がないからですか
そうとは限りません。入社して間もない時期の成績は、適性よりも、知識の層がどこまで埋まっているかに左右されやすいからです。まずは商品理解と商談の型が身についているかを確かめ、そのうえで思考力や実行力の伸びを見てから判断しても遅くありません。
営業の育成にはどのくらいの期間を見込めばよいですか
一律には決められません。目安としては、一人で商談を任せられるまでに半年から1年ほどの計画を組む企業が多いと感じています。ただし、商材の単価や商談の期間、顧客の数によって大きく変わるため、期間よりも、各層の到達点をいつまでに確かめるかを決めておくほうが実務的です。
若手と中途入社で育て方は変えるべきですか
変えるべきです。若手は知識の層から順に積み上げる必要がありますが、中途入社の営業は前職の経験があるぶん、知識よりも自社の顧客に合わせた考え方への切り替えでつまずきやすい傾向があります。同じ研修を受けさせるより、止まっている層に合わせて入口を変えましょう。
営業が育たない組織を変えるなら課題解決力強化道場へ

営業が育たない原因は、知識、思考力、実行力のどこで止まっているかを見極めないまま、同じ指導を重ねていることにあります。そして若手を育てる近道は、育てる側が売れる理由をプロセスで語れるようになることでした。
課題解決力強化道場は、これまで約800名を超える受講者とともに、管理職や部門長が自社の課題を分解し、解決の手を打てるようになるまで伴走してきました。法人向けの研修として、少人数制、ハンズオン、超実践型をコンセプトに、外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが講師を務めています。
- ✓自社の営業課題そのものを題材に、1回2.5時間、最短5回で演習する
- ✓1クラス10名以内で、毎回一人ひとりに個別フィードバックシートを作成する
- ✓各回のあとに研修企画者と振り返りを行い、次回の方針をすり合わせる
毎回の振り返りまで組み込んでいるのは、学んだ内容を管理職が現場の指導で使えるようにするためです。平均満足度は95.6%で、営業体制の仕組みを自分たちで作り上げた支社長の事例もあります。料金は非公開で、ヒアリングのうえ貴社に合わせたカリキュラムと個別のお見積もりをご提示します。部下の育成が「頑張れ」の一言で止まっている、営業のやり方がベテランの頭の中にしかないと感じているなら、その状況をそのままお聞かせください。
貴社の課題に最適な研修をご提案します
・管理職のスキルにバラつきがある
・研修が現場で活きない
・自走する人材が育たない
心当たりがあれば、まずご相談ください。
貴社の状況に最適なカリキュラムをご提案いたします。
※ご相談・お見積もりは無料です