1on1ミーティングを導入したものの、「上司によって面談の質にバラつきがある」「部下から本音が出てこない」「なんとなく雑談で終わってしまう」といった声は、多くの企業で聞かれます。制度として1on1を回し始めた企業ほど、次の壁として直面するのが「対話の質」の問題です。
この壁を越える打ち手として注目されているのが1on1研修です。ただ、研修と一口に言っても、動画を見るだけのものから、実際にロールプレイングを重ねるもの、自社の課題に踏み込んで伴走するものまで幅があります。選び方を誤ると、受けたその場では納得しても現場では何も変わらない、という残念な結果になりかねません。
この記事では、1on1研修が本当に必要になる場面から、研修で扱うべき中身、実施方法の選び方、そして「受けて終わり」にしないための定着の進め方までを、人事・経営企画のご担当者に向けて整理します。上位の解説記事ではあまり触れられない、研修の効果が現場で消えてしまう構造的な理由にも踏み込みます。
1on1研修とは|制度の導入だけでは対話が機能しない

1on1研修とは、上司が部下と1対1で行う定期的な対話を、成長支援の場として機能させるためのスキルと考え方を学ぶ研修です。傾聴やコーチング、質問、フィードバックといった対話の技術を、座学だけでなく実践を通じて身につけることを狙いとします。
そもそも1on1ミーティングは、上司と部下が1対1で定期的に対話し、部下の成長や信頼関係の構築につなげる人材育成の手法です。評価面談が「上司が評価を伝える場」であるのに対し、1on1は「部下が主役となって話す場」である点が本質的に異なります。この主役の逆転が、実は多くの管理職にとって最初のつまずきになります。
導入は進んだが、効果を実感できない企業が少なくない
1on1はここ数年で急速に広がりました。リクルートマネジメントソリューションズの調査では、従業員規模3,000名以上の企業では75.6%が1on1を施策として導入しているという結果が出ています。書籍『ヤフーの1on1』の話題化と、コロナ禍でのリモートワーク拡大が、意図的に部下と話す機会をつくる必要性を後押ししたと考えられます。(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「1on1ミーティングに関する実態調査」)
ところが、導入率の高まりと、現場での手応えは必ずしも一致していません。パーソル総合研究所が2025年に発表した調査によると、直近半年で1on1を経験した部下の割合は55.7%に達する一方、部下の3人に1人は「効果が感じられない」と回答しています。(出典:パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」2025年2月)
ここで注目したいのは、同じ調査で挙がった課題の中身です。上司も部下も、共通して「1on1について学ぶ仕組みがない」ことを困りごとの上位に挙げていました。つまり、多くの職場では制度だけが先に走り、対話の作法を学ばないまま、上司と部下が手探りで1on1を進めているのが実態だといえます。
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「場を用意すること」と「対話が機能すること」は別物
制度を整えれば対話が生まれる、というのは思い込みです。カレンダーに30分の枠を確保しても、その30分で何をどう話すかは、上司一人ひとりの経験と勘に委ねられています。ここに研修の出番があります。
実際、リクルートの調査では、1on1導入企業が抱える課題として「上司の面談スキルの不足」が47.2%で最多となり、次いで「上司負荷の高まり」が44.6%を占めました。スキルの問題と負荷の問題は連動しています。話の引き出し方がわからないから面談が長引き、長引くから負担が増える、という悪循環に陥りやすいのです。研修は、この循環を断つための起点になります。
1on1研修がうまくいかない構造的な理由

では、なぜ研修を受けても現場が変わらないケースが出てくるのでしょうか。ここが、この記事で最もお伝えしたい部分です。多くの1on1研修は「知識のインプット」で完結してしまい、受講者の中に生まれた「分かった」という感覚が、現場での「できる」につながらないまま消えていきます。
「分かる」と「できる」の間には深い溝がある
傾聴が大切だと知っている管理職は、おそらくほぼ全員です。相手の話を最後まで聴き、否定せず、問いを返す。文章にすればわずか数行で、頭では完全に理解できます。しかし、部下が沈黙したとき、想定と違う答えが返ってきたとき、時間が押しているとき、その理解通りに振る舞えるかは別の話です。
研修の場で講師の説明を聞き、なるほどと膝を打った瞬間、人は「自分はこれをできる」と錯覚しがちです。ところが実際にロールプレイングをやってみると、質問がうまく出てこない、つい自分が話しすぎてしまう、沈黙に耐えられず助言してしまう、といった形で、知識と行動のギャップが露わになります。この気づきこそが、研修の本当のスタート地点です。
一度きりの研修では行動は変わりにくい
もうひとつの構造的な問題は、研修が単発で終わりがちなことです。1日の集合研修で学び、現場に戻り、日々の業務に追われるうちに、学んだ内容は少しずつ薄れていきます。行動が定着する前に記憶が先に消えてしまうわけです。
人の行動が変わるには、学ぶ、試す、フィードバックを受ける、また試す、というサイクルの反復が要ります。ここで重要なのは、フィードバックが一度しかないと、受講者は自分の癖を直す機会を持てないという点です。「話しすぎる癖」を指摘されても、それを意識して次にやり直す場がなければ、指摘は感想で終わります。研修設計を評価するとき、この「振り返りとやり直しの回数」に目を向けると、効果の出やすさがかなり見えてきます。
実際、前述のパーソル総合研究所の調査でも、傾聴スキルやコーチングスキルの研修を受講した部下は、受講していない部下よりも成長度が高いという結果が示されています。学ぶ機会があること自体が成果につながる。裏を返せば、学びの機会を用意しないまま1on1を回すことのリスクを、この数字は物語っています。
1on1研修で身につけるべき対話スキル

1on1研修で扱う内容は会社によって差がありますが、対話の質を左右する要素はある程度共通しています。ここでは、現場で効いてくる順に、核となるスキルを整理します。それぞれ、なぜそれが必要なのかまで踏み込んで見ていきます。
傾聴|話させる技術であって、黙る技術ではない
傾聴は、ただ黙って聞くこととは違います。相手が安心して考えを言葉にできる状態をつくる、能動的な働きかけです。うなずきや相づち、相手の言葉の要約、感情への反応といった反応の積み重ねが、部下に「ちゃんと聞いてもらえている」という感覚を与えます。
ここで多くの管理職がつまずくのは、沈黙の扱いです。部下が黙り込むと、上司はつい間を埋めようとして助言を始めてしまいます。しかし、その沈黙は部下が考えを整理している時間かもしれません。沈黙に耐える力は、研修で意識的に練習しないとなかなか身につかないスキルの筆頭です。
先のパーソル調査には示唆的なデータがあります。1on1のときに上司より部下の話す割合が高く、部下がその日に話すテーマを決めているほど、部下の成長度が高かったのです。つまり、上司が話す量を減らし、部下に主導権を渡すことが、成果に直結します。傾聴とは、部下に話させる技術だと言い換えてもよいでしょう。
質問とコーチング|答えを渡さず、考えを引き出す
コーチングは、答えを教えるのではなく、問いによって相手自身の中から答えを引き出すアプローチです。「どうすればいいと思う?」「何が引っかかっている?」といった開かれた問いを使い、部下が自分で考え、自分で決めるプロセスを支えます。
これが難しいのは、管理職の多くがプレイヤーとして優秀だったからです。答えが見えてしまうと、つい先に言いたくなります。良かれと思った助言が、部下から考える機会を奪ってしまう。この葛藤を体験し、あえて答えを飲み込む練習をする場として、研修は機能します。
フィードバック|伝え方ひとつで受け取られ方が変わる
1on1では、部下の行動に対して率直に伝える場面も出てきます。ここで重要なのは、事実と解釈を分け、相手の人格ではなく行動に焦点を当てることです。「君はいつも詰めが甘い」ではなく「今回の資料は、この数字の裏づけがあるともっと伝わったと思う」と伝える。前者は評価、後者は改善に向けた情報です。
フィードバックの型として、良い点で挟んで改善点を伝える方法や、事実・影響・依頼の順で構造化する方法などがあります。ただし型はあくまで足場です。型を覚えることが目的化すると、かえって不自然な対話になります。型を土台にしつつ、相手や状況に応じて崩せるようになるには、やはり実践での試行が欠かせません。
スキルは切り分けられても、現場では同時に使う
傾聴・質問・フィードバックは、説明のために分けているだけで、実際の1on1では数分のうちに行き来します。個別に理解した後、それらを統合して使う練習まで用意されているかが、研修の実効性を分けます。
1on1研修の実施方法と選び方

1on1研修の進め方は、大きく3つに分かれます。自社で内製する、外部研修を受講する、伴走型の支援を受ける、という3タイプです。それぞれ向き不向きがあり、自社の状況によって最適解は変わります。順に見ていきましょう。
自社で実施する|低コストだが設計力が問われる
人事や経験豊富な管理職が講師役となり、社内で研修を行う方法です。外部費用がかからず、自社の文化や事情に合わせて内容を調整しやすいのが利点です。すぐに始められる手軽さもあります。
一方で、教える側に相応の知見と設計力が求められます。傾聴やコーチングを体系立てて教え、受講者一人ひとりに的確なフィードバックを返すのは、簡単なことではありません。自己流の解釈が混じると、かえって偏った型が組織に広まるリスクもあります。1on1の土台がすでに社内にある企業に向いた方法だといえます。
外部研修・セミナーを受講する|体系性と客観性が得られる
研修会社のプログラムを利用する方法です。専門的に設計されたカリキュラムで、傾聴やコーチングを体系的に学べます。外部の視点が入ることで、社内では指摘しにくい癖にも気づけます。管理職のスキルを一定水準まで引き上げたいとき、有力な選択肢になります。
注意したいのは、プログラムの型です。動画視聴中心のものは知識のインプットには向きますが、それだけでは前述の「分かる」で止まりやすい面があります。ロールプレイングや演習がどれだけ組み込まれているか、フィードバックが何回あるかを、申し込み前に確認しておくと失敗が減ります。
伴走型の支援を受ける|定着まで踏み込む
研修を単発で終わらせず、実施後の振り返りや現場での実践支援まで含めて伴走してもらう方法です。自社の実際の課題を題材に演習を行い、回を重ねながら受講者の行動変容を追いかけます。費用は相応にかかりますが、「学んで終わり」を最も避けやすい形式です。
次世代リーダーの育成や、管理職層の底上げを本気で進めたい企業ほど、この形式が合います。研修そのものより、研修の後にどれだけ現場が動いたかを重視する場合、伴走の有無が結果を大きく左右します。
1on1研修の効果を現場に定着させる進め方

研修の成否は、当日の満足度ではなく、その後に現場でどれだけ行動が変わったかで決まります。ここでは、学びを定着させるために、人事・企画側で仕込んでおきたい実務的なポイントを挙げます。研修会社に任せきりにせず、発注する側の設計として押さえておく価値があります。
目的を言語化してから始める
何のために1on1を行うのか、その目的を管理職自身が言葉にできる状態をつくることが出発点です。目的が曖昧なまま技術だけを教えると、「やらされ感」のある形式的な面談になりがちです。部下の成長支援なのか、離職の防止なのか、エンゲージメントの向上なのか。自社が1on1に何を期待しているかを、研修の冒頭ですり合わせておくと、その後の学びの吸収がまるで変わります。
研修と現場を往復させる設計にする
1回で完結させず、学ぶ、現場で試す、振り返る、という往復を組み込むことが定着の鍵です。研修で得た気づきを実際の1on1で試し、うまくいかなかった点を次の回で持ち寄る。この往復があると、学びが自分の言葉と経験に結びつきます。
ここで先ほどの「振り返りの回数」が効いてきます。最終回に一度だけ振り返る設計と、毎回振り返る設計とでは、癖を修正できる回数が根本的に違います。発注時には、フィードバックと振り返りが何回設けられているかを、遠慮なく確認しておくとよいでしょう。
効果を可視化し、続ける仕組みをつくる
研修後、1on1がどう変化したかを把握する仕組みも欠かせません。部下側への簡単なアンケートや、上司自身の振り返りシートなどで、変化を見える形にします。数値で追いかけると、うまくいっている点と課題が切り分けられ、次の打ち手が立てやすくなります。
そして、1on1は継続してこそ効果が出ます。最初から完璧を目指すと息切れします。信頼関係の構築には時間がかかるものと捉え、短くても続けられる形を優先する。この現実的な構えが、結果的に定着を早めます。
1on1研修の会社を選ぶときの確認ポイント

研修会社を比較検討する際、パンフレットの見栄えや実績社数だけでは、自社に合うかどうかは見えてきません。ここまでの内容を踏まえ、発注前に確認しておきたい観点を整理します。
- ✓座学だけでなく、ロールプレイングや演習の時間が十分に確保されているか
- ✓受講者一人ひとりへの個別フィードバックがあるか、それは何回か
- ✓研修後の実践や定着まで支援の範囲に含まれているか
- ✓自社の実際の課題や状況に合わせたカスタマイズが可能か
- ✓対象階層に応じて難易度を調整できるか
とりわけ見落とされやすいのが、個別フィードバックの回数です。1クラスの人数が多いと、講師が一人ひとりに向き合う時間は物理的に薄まります。少人数であるほど、自分の癖に対する具体的な指摘を受けやすくなります。研修の質を左右する地味だが重要な条件として、クラスの人数にも目を向けておくと安心です。
「教える人」が現場を知っているか
もうひとつの観点は、講師が現場感覚を持っているかです。理論に詳しいだけの講師と、実際に組織の課題解決に携わってきた実務家とでは、フィードバックの重みが違います。教科書通りの助言ではなく、「その状況ならこう動く」という勘所を含めて指導できるかどうか。ここは資料や事前面談で見極めておきたいポイントです。
1on1研修は、対話という一見つかみどころのないテーマを扱います。だからこそ、教える側の実践知が、受講者の腹落ち度を大きく左右します。誰から学ぶかを、内容と同じくらい重視して選ぶ価値があります。
1on1の対話力を鍛えるなら課題解決力強化道場

1on1研修で成果を出す鍵は、「分かる」で止めず「できる」まで届けることにあります。課題解決力強化道場は、少人数制・ハンズオン・超実践型をコンセプトに、外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが講師を務め、自社の実務課題そのものを題材にしたアウトプット型のカリキュラムを提供します。
1クラス10名以内という少人数制のもと、講師が受講者一人ひとりに個別フィードバックを行い、各回のあとには研修企画者との振り返りを重ねます。だからこそ、対話における自分の癖に気づき、修正する機会を何度も持てます。1on1に必要な傾聴・質問・フィードバックの力を、現場で再現できる状態まで引き上げたいとお考えでしたら、まずはお気軽にご相談ください。貴社の状況に合わせたカリキュラムをご提案いたします。
貴社の課題に最適な研修をご提案します
・管理職のスキルにバラつきがある
・研修が現場で活きない
・自走する人材が育たない
心当たりがあれば、まずご相談ください。
貴社の状況に最適なカリキュラムをご提案いたします。
※ご相談・お見積もりは無料です