役員研修と聞いて、就任時のオリエンテーションや、著名な講師を招いた講演会を思い浮かべる方は少なくありません。実際、多くの企業でそうした形式が長く続いてきました。ところが、上場会社には取締役・監査役へのトレーニング方針を開示する対応が求められ、非上場企業でも事業承継や経営体制の刷新が目の前の課題として迫っています。役員の学びは、制度への対応と経営そのものの課題という二つの側面から、後回しにできないテーマになりました。
本記事では、役員研修の対象や目的といった基本の整理から、扱うべきテーマ、新任役員と現職役員での設計の違い、実施形式の選び方、そして実施後の変化をどう捉えるかまで、研修を企画する立場の方が判断に使える形でお伝えします。
役員研修とは、経営を担う立場のための学び直し

役員研修とは、取締役や執行役員をはじめとする経営層を対象に、経営判断に必要な知識・視点・意思決定の作法を学び直す取り組みを指します。管理職研修の延長線上にあるように見えて、設計思想はまったく異なります。違いを言語化できないまま企画に着手すると、内容が管理職向けの焼き直しになり、受講する役員から「今さらこれを聞かされるのか」という反応を招きかねません。
対象となるのは取締役・執行役員・監査役
一口に役員といっても、法的な立場は一様ではありません。会社法上の役員は取締役・監査役・会計参与を指し、株主総会で選任され、会社と委任関係を結びます。一方、執行役員は法律上の役員ではなく、多くの場合は従業員としての雇用契約のもとで業務執行を担う立場です。
ここを曖昧にしたまま同じ研修に詰め込むと、法的責任のパートで温度差が生まれます。取締役にとっては善管注意義務や忠実義務が自分の財産に直結する話である一方、執行役員にとってはやや距離のあるテーマに映るためです。対象者の法的立場を確認したうえでプログラムを組むことが、最初の分岐点になります。
取締役と執行役員の位置づけの違い
取締役は株主総会で選任され、会社と委任関係を結ぶ会社法上の役員です。執行役員は法律上の役員ではなく、取締役会が決めた方針のもとで業務執行を担う社内の役職として置かれるのが一般的で、雇用契約型と委任契約型のいずれもあります。責任の範囲が異なるため、研修で扱う法務パートの深さも変わります。
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管理職研修との違いは「正解の有無」にあります
管理職研修の多くは、目標管理や部下育成、労務対応など、ある程度の型が存在する領域を扱います。講師が正解に近いものを提示でき、受講者はその型を自部門に当てはめれば一定の成果が見込めるでしょう。
役員が向き合う問いには、その型がありません。新規事業に投資すべきか撤退すべきか、赤字部門をいつまで抱えるか、値上げに踏み切るかどうか。いずれも社外の誰かが答えを持っている問題ではなく、自社の状況と経営陣の意思によってしか決まらない問題です。
ここで重要なのは、役員研修の価値が「知識の量」ではなく「判断の質」に置かれている点です。財務指標の読み方を暗記しても、その数字をもとに何を決めるかは別の能力になります。教わった内容を自社の実際の課題に当てはめて、自分の結論を出すところまでを含めて設計する。役員研修と管理職研修を分ける実質的な線引きは、そこにあります。
役員研修が求められる背景
役員の学びが以前より強く意識されるようになった理由は、大きく三つあります。
第一に、制度面の要請です。東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードは原則4-14で取締役・監査役のトレーニングを掲げ、補充原則4-14②では上場会社がトレーニングの方針について開示すべきとしています(出典:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」)。方針を書く以上、実態が伴わなければ投資家との対話で説明に窮します。上場していない企業であっても、取引先や金融機関からガバナンス体制を問われる場面は増えました。
第二に、経営環境そのものの変化です。人的資本情報の開示、生成AIの業務実装、地政学リスク、サステナビリティ対応と、10年前の経営陣が扱っていなかった論点が次々と取締役会の議題に上がっています。過去の成功体験だけで判断できる範囲は、確実に狭まりました。
第三に、経営人材の層の薄さです。ボストン コンサルティング グループが世界各国の約6,900人を対象に実施した調査では、人材関連のテーマを将来的な重要度と現状の充足度の両面から評価したところ、リーダーの育成や経営人材のマネジメントが優先度の高い課題として浮かび上がったと報告されています(出典:BCG「日本企業と新しい時代の経営人材育成」)。重要だと認識されながら、手が打てていない領域だという構図が見て取れます。
役員研修を実施する目的を整理する

「役員のレベルアップ」という漠然とした目的で企画すると、テーマ選定の段階で必ず迷います。目的を四つの型に分けて、自社がどれを主軸に置くのかを決めておくと、プログラムの輪郭が定まります。
なお、四つすべてを一度の研修で狙うのは現実的ではありません。役員が確保できる時間には限りがあるからです。主軸を一つ決め、残りは副次的な効果として位置づける。優先順位をつける作業自体が、経営として何を課題と見ているかを明らかにする過程にもなります。
経営判断の質と速度を揃える
取締役会で議論が噛み合わない企業には、共通した現象があります。ある役員は市場シェアの話をし、別の役員は目先の資金繰りの話をし、また別の役員は現場の士気の話をする。どれも正しい論点ですが、判断の土台となるフレームが揃っていないため、議論が収束しません。
役員研修の一つ目の目的は、経営判断に用いる物差しを共有することにあります。投資判断であれば回収期間と資本コスト、事業評価であれば市場成長率と自社ポジション。同じ枠組みで議論する土台ができると、意思決定にかかる時間が目に見えて短くなります。
社長への一極集中をほどく
中堅・中小企業でよく見られるのが、実質的な意思決定が社長ひとりに集中している状態です。役員は名を連ねているものの、重要な判断はすべて社長が下す。短期的には速いのですが、社長の判断力が事業の上限になり、後継者も育ちません。
労働政策研究・研修機構が2025年に公表した企業調査では、一通りの仕事をこなせる従業員に対する育成施策として「経営状況も含めた会社全体の状況を把握させる」を挙げた企業は26.4%にとどまりました(出典:労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」)。全社の状況を見る訓練を受けないまま昇進していく人が多数派である、という現実がうかがえます。役員に上がった瞬間に全社視点が芽生えるわけではないのですから、意図的な機会を用意するほかありません。
法的責任を自分ごとにする
取締役は会社に対して善管注意義務と忠実義務を負い、その違反によって会社に損害が生じた場合には、株主代表訴訟を通じて個人として責任を問われる可能性があります。頭では知っていても、日々の稟議決裁と結びつけて考えている役員は多くありません。
経営判断の原則という考え方があります。十分な情報にもとづき、合理的な過程を経て判断していれば、結果として損失が出ても直ちに責任を問われるわけではない、という枠組みです。裏を返せば、情報収集と検討の過程を残していない判断は危ういということでもあります。法務パートの目的は、条文を覚えることではなく、こうした感覚を日常の意思決定に持ち込むところにあります。
役員同士の共通言語をつくる
営業出身の役員、技術出身の役員、管理部門出身の役員。それぞれが異なる語彙と評価軸を持ったまま同じ会議に座っている企業は珍しくありません。同じ「投資対効果」という言葉を使いながら、一方は売上増、一方は開発工数の削減を思い描いていた、といったすれ違いも起こります。
研修の場で同じケースを検討し、同じ言葉で議論する経験を共有すると、その後の会議の生産性が変わります。役員研修の副次的な効果として語られがちですが、実務上はこれがもっとも早く実感される変化かもしれません。
役員研修で扱うべき7つのテーマ

テーマ選びで陥りやすいのが、外部研修会社のカタログを眺めて「良さそうなもの」を並べる進め方です。網羅性は高まりますが、自社の課題との接続が弱くなります。以下の7領域を一覧として押さえたうえで、自社にとって優先度の高いものから2〜3テーマに絞り込む進め方をおすすめします。
絞り込みの基準として使いやすいのは、「取締役会で結論が出ないまま先送りになっている議題は何か」という問いです。議論が停滞する背景には、判断材料の不足か、判断軸の不一致のどちらかが潜んでいます。前者であれば知識の補充、後者であれば議論の作法そのものが研修テーマになります。年度ごとにテーマを入れ替える運用よりも、停滞している論点に的を絞って掘り下げるほうが、成果が見えやすいでしょう。
経営戦略と事業ポートフォリオ
複数事業を抱える企業では、どの事業に資源を厚く配分し、どの事業を縮小するかという判断が経営の中核を占めます。フレームワークそのものは書籍で学べますが、難しいのは自社の事業を実際に当てはめる作業です。撤退候補に自分の出身部門が入ったとき、冷静に議論できるかどうか。研修の場で一度その痛みを経験しておく意味は小さくありません。
会計・財務と企業価値
役員に必要な会計知識は、仕訳を切る能力ではありません。損益計算書と貸借対照表、キャッシュフロー計算書の三つがどう連動しているかを理解し、自社の数字から異変を読み取る力です。
東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営を求めて以降、上場企業では資本収益性への関心が急速に高まりました。非上場企業においても、金融機関との対話や事業承継時の株価評価の場面で、企業価値の考え方を知っているかどうかが交渉力の差になって表れます。
ガバナンスとコンプライアンス
不祥事が起きた企業の第三者委員会報告書を読むと、多くのケースで「現場の暴走」ではなく「経営陣が気づける仕組みがなかった」という構造が指摘されています。内部統制、内部通報制度、取締役会の監督機能。仕組みの目的を理解しないまま形だけ整えても、機能しません。
コンプライアンス研修が退屈になりがちなのは、事例が他社の話にとどまるためです。自社で過去に起きたヒヤリとした出来事を素材にすると、参加者の集中度がまったく違ってきます。
リスクマネジメントと危機対応
サイバー攻撃、サプライチェーンの寸断、自然災害、風評の拡散。発生確率は低くとも、起きたときの影響が甚大なリスクへの備えは経営層の仕事です。
実務的に効果が高いのは、机上訓練の形式を取り入れることでしょう。深夜にシステム障害の一報が入った、という設定で、誰が何時までに何を決めるかを実際に組み立ててみる。手順書を読み合わせるだけの時間とは、得られるものが違います。
人的資本と組織づくり
人的資本に関する情報開示が制度化され、人材への投資を経営戦略と結びつけて説明する必要が生じました。人事施策を人事部門任せにしてきた役員にとっては、認識の転換を迫られる領域です。
採用単価、離職率、エンゲージメントスコアといった指標を、事業計画とどう接続させるか。数字を眺めるだけでなく、自社の戦略にとって意味のある指標は何かを役員自身が定義する演習が有効です。
DXと生成AIの経営判断
技術の詳細を役員が理解する必要はありません。求められるのは、投資判断ができる程度の解像度です。どの業務にどの技術を当てれば、どれくらいの期間でどれだけの効果が見込めるのか。そして、その効果をどう検証するのか。
生成AIの活用について「まず全社導入」と決めてしまい、現場の使いどころが定まらないまま利用率が伸び悩む例は各所で聞かれます。技術を導入する判断と、業務プロセスを組み替える判断は別物である、という理解が出発点になります。
リーダーシップと後継者づくり
経営陣が次の経営陣を育てられているかどうかは、中期的な企業価値を左右します。後継者計画を制度として持つ企業は増えましたが、運用の実態を見ると、候補者リストを更新するだけで止まっているケースも見受けられます。
役員研修の場で、自分の後継候補を誰と考えているか、その人に足りない経験は何かを言語化してもらう。単純な問いですが、答えに詰まる役員は少なくありません。
新任役員と現職役員では必要な研修が異なる

同じ役員研修という名前でも、就任直後の人と在任10年の人とでは、必要としている内容がまるで違います。全役員を一律に集めた研修が退屈になりやすい理由は、たいていここにあります。
新任役員に最初に届けるべき内容
新任役員がつまずくのは、知識不足よりも立場の転換です。前日まで部門を代表して主張する側だった人が、翌日には全社最適の観点から自部門に厳しい判断を下す側に回ります。頭では理解していても、会議での発言はなかなか変わりません。
就任後の早い段階で扱いたいのは、次の三点です。
- 01役員としての役割と法的責任の範囲
- 02全社の財務構造と収益の源泉の理解
- 03自部門ではなく全社の視点から議論する訓練
とりわけ三つ目は、講義では身につきません。自部門に不利な結論を含むケースを議論し、その場で自分の判断を言葉にする経験の反復が必要になります。
現職役員に必要なのは知識の追加より問い直し
在任年数の長い役員に不足しているのは、多くの場合、知識ではありません。むしろ経験が豊富であるがゆえに、「この業界はこういうものだ」という前提が固まっている点にリスクがあります。
現職役員向けの研修では、外部の視点を持ち込む設計が効果を発揮します。異業種の参加者との議論、社外の専門家との対話、あるいは自社の事業を知らない講師から素朴な質問を投げかけられる場面。「なぜその価格設定なのか」「なぜその販路なのか」と問われて、明確に答えられない前提が見つかることがあります。
執行役員には執行の解像度を求める
執行役員は、取締役会が決めた方針を実行に移す役割を担います。したがって求められるのは、戦略を業務プロセスとKPIに翻訳する力です。「顧客単価を上げる」という方針を、どの顧客層に、どの商材で、誰がどう働きかけるかまで分解できるかどうか。
取締役向けの研修をそのまま執行役員に流用すると、抽象度が高すぎて実務に結びつかない結果になりがちです。階層に応じて難易度と論点を調整する発想を持っておきたいところです。
役員研修の実施形式と選び方

役員研修の形式は、大きく四つに分けられます。それぞれ得意な領域が異なるため、目的に応じて組み合わせる判断が現実的でしょう。
公開講座への派遣
外部機関が開催する講座に個別に参加する形式です。他社の役員と交流でき、自社の常識を相対化できる点が最大の利点になります。新任取締役セミナーのように、就任直後の知識補完を目的とした講座も充実しています。
一方で、内容は汎用的にならざるを得ません。自社固有の課題に対する答えが得られるわけではなく、参加者個人の学びにとどまりやすい面もあります。役員全員の目線を揃えたい場合には、単独では力不足です。
社内研修(講師招聘型)
自社に講師を招き、役員をまとめて対象とする形式です。自社の課題に沿ってカリキュラムを設計でき、役員間の共通言語づくりにも直結します。目線を揃えるという目的であれば、第一の選択肢になるでしょう。
成否を分けるのは、カスタマイズの深さです。市販のテキストをそのまま使う講師では、公開講座と変わらない内容になってしまいます。事前に経営課題をヒアリングし、自社の実務を題材化してくれるかどうかを、発注前に必ず確認してください。
エグゼクティブコーチング
役員一人ひとりに対して、コーチが継続的に対話する形式です。個別の課題に深く踏み込める点が強みで、意思決定のクセや対人面の課題など、集合研修では扱いにくいテーマに適しています。
ただし、経営知識そのものを体系的に習得する用途には向きません。費用も人数分かかるため、対象を絞った運用が前提になります。
eラーニング・動画研修
多忙な役員が時間や場所を選ばず学べる点が利点です。法改正や制度改正の知識補充、コンプライアンスの基礎確認といった、インプット中心の内容と相性が良いといえます。
反面、視聴して終わりになりやすい形式でもあります。視聴後に自社の課題へ当てはめて議論する場をセットで用意しなければ、受講率という数字だけが残ります。
形式の組み合わせ方
実務上よく機能するのは、知識のインプットをeラーニングや事前課題に寄せ、集合の時間を議論と演習に充てる組み立てです。役員の時間は限られています。全員が集まる貴重な時間を一方通行の講義に使うのは、費用対効果の面で惜しいと考えるべきでしょう。
役員研修が進まない3つの理由と乗り越え方

必要性は理解されているのに、実行に移らない。役員研修には特有の停滞パターンがあります。研修企画の担当者が孤立しないためにも、あらかじめ想定しておく価値があります。
日程が埋まっていて集まらない
役員のスケジュールは数か月先まで埋まっているのが普通です。2泊3日の合宿型を提案しても、全員の予定を合わせる段階で企画が止まります。
現実的な打開策は、1回あたりの時間を短くして回数を分ける設計です。半日や2時間台の枠であれば、取締役会の前後に組み込むこともできます。学習効果の面でも、一度に詰め込むより、間隔を空けて実務との往復を挟むほうが定着しやすいという見方があります。
「今さら研修は不要」という反応
ベテラン役員から難色を示されるのは、よくある場面です。ここで正面から必要性を説いても、たいてい平行線に終わります。
有効なのは、研修という枠組みを外して提案する方法でしょう。「来期の中期計画を役員全員で詰める場を、外部のファシリテーターを入れて設ける」という形であれば、受け入れられる可能性が高まります。実質的な中身は同じでも、受け身で教わる構図か、自社の課題を主体的に議論する構図かで、心理的な抵抗はまるで変わります。
講師の立場が受講者より下になる
社内の人事担当者や若手のコンサルタントが役員に向けて講義する構図には、無理があります。受講者側が「この人に何がわかるのか」と感じた瞬間、内容は届かなくなります。
解決策の一つは、講師に一方的に教える役割を担わせないことです。答えを提示するのではなく、議論を構造化し、受講者の思考の穴を指摘する役割に徹してもらう。役員自身が結論を出す構造であれば、講師の年齢や肩書きは論点になりません。
役員研修プログラムの設計手順

ここからは、企画担当者が実際に手を動かす順序を整理します。外部に委託する場合でも、発注側がこの流れを把握しているかどうかで、提案の質を見極める精度が変わってきます。
Step1 経営課題から逆算して要件を定める
最初に着手すべきは、「どんな研修をやるか」ではなく「経営として何が足りていないか」の特定です。中期経営計画の未達要因、取締役会で結論が出ないまま持ち越されている議題、社長が個人的に抱えている懸念。ここから、役員に不足している能力を言葉にします。
この工程を飛ばして研修会社に相談すると、先方のカタログの中から選ぶ話になってしまいます。順序を逆にしないでください。
Step2 現状を把握する
役員一人ひとりに個別ヒアリングを実施すると、想定と違う実態が見えてくることがあります。全社視点が足りないと思われていた役員が、実は誰よりも問題を認識しながら発言の場を得られずにいた、といったケースです。
取締役会の実効性評価を実施している企業であれば、その結果も有力な材料になります。議論が形骸化している領域は、そのまま研修テーマの候補になるはずです。
Step3 到達状態を具体的に描く
「経営視点が身につく」では、達成したかどうかを判断できません。「投資案件の審議で、回収期間と撤退基準がセットで議論されるようになる」といった水準まで具体化しておくと、プログラムの取捨選択がしやすくなります。
Step4 題材を自社の課題に置き換える
教科書的なケーススタディは、思考の型を学ぶには適していますが、それだけでは実務に接続しません。自社が現在直面している課題を演習の素材に据えると、研修の結論がそのまま経営会議の議題になります。
機密性への配慮は必要ですが、外部講師と守秘義務契約を結んだうえで実データを扱う企業も増えています。抽象的な事例で議論する時間を、自社の意思決定に振り向けられる価値は大きいといえます。
Step5 アウトプットの機会を組み込む
聞くだけの時間と、自分の考えを述べる時間の比率は、後者を多く取るべきです。少人数で実施し、全員が発言せざるを得ない状況をつくると、参加の密度が上がります。人数が20名を超えると、発言しない人が生まれてしまいます。
Step6 実施のたびに振り返る
多くの研修は、最終回の後に一度だけ振り返りを行って終わります。ただ、途中で軌道修正できないという弱点を抱えた進め方でもあります。
各回の終了後に、講師と企画担当者が受講者の状態を共有し、次回の重点を調整する。手間はかかりますが、5回のプログラムであれば4回の修正機会が得られる計算になります。研修の成果は、当日の講義よりも回と回の間の設計で決まるという見方は、実務者の間では珍しくありません。
役員研修の効果をどう測るか

役員研修は投資額が大きくなりやすい一方、効果の説明が難しい取り組みでもあります。経営陣に継続を認めてもらうためにも、測り方をあらかじめ決めておく必要があります。
満足度アンケートだけでは判断できません
研修直後の満足度は、講師の話し方や場の雰囲気に強く影響されます。満足度が高くても行動が変わらない研修は存在しますし、耳の痛い内容で満足度が伸びなかった研修が、半年後に効いてくることもあります。
満足度は必要な指標ですが、それ単独で判断材料にはなりません。難易度の評価や、現場で活用できそうかという見通しを併せて聞くと、実像に近づきます。
会議と行動の変化を指標に置く
実務的に追いやすいのは、次のような変化です。
- ✓取締役会で結論に至る議題の割合が増えたか
- ✓社長以外の役員から議案が上がるようになったか
- ✓部門横断のテーマに担当役員が名乗りを上げるようになったか
いずれも定量化しにくい項目ですが、研修前の状態を記録しておけば、半年後の比較は可能です。売上や利益といった最終指標との因果を証明しようとすると説明に無理が生じるため、行動レベルの変化を追うほうが現実的でしょう。
終了後3か月の運用が成果を左右します
研修で得た視点は、使わなければ驚くほど早く薄れていきます。終了後の数か月に何を仕込んでおくかで、投資の回収度合いは大きく変わってくるでしょう。
具体的には、研修中に各役員が設定したテーマを、そのまま経営会議の議題として組み込む方法が有効です。「研修の宿題」という位置づけでは実務の忙しさに押し流されますが、正式な議題になっていれば進捗を報告せざるを得ません。加えて、3か月後に短時間のフォローの場を設け、実行できたことと詰まっていることを役員同士で共有すると、相互の刺激が生まれます。
逆に避けたいのは、研修が終わった時点で企画担当者の手を離れてしまう運用です。人事や経営企画が旗を降ろすと、そこで取り組みは止まります。実施前の段階から、終了後3か月分の予定を含めて設計しておいてください。
実際に変化が現れた企業の例
課題解決力強化道場が支援した企業の中に、大阪府に本店を置く従業員約500名の製造業があります。安定して利益が出ていたため既存事業を見直す動きが起きず、部門横断の取り組みも計画の精度が低いまま棚上げになっていました。研修後、次世代の組織を担う経営企画室の担当者が自社の課題を整理し、経営陣を巻き込みながら経営指標の見直しに着手しています。
“ ロジカルシンキング等は本で学んでいたので、自分でできているという自負がありましたが、実際に講師の方のフィードバックを受けて、まったくできていないことを痛感しました。今後の組織を担う担当者だけでなく、部下を持つ人間は、受けたほうがいい内容だと思います。 ― 課題解決力強化道場 受講者の声(製造業/経営企画室)
もう一例挙げると、東京都中央区に本店を置く従業員約150名の保険業では、全国での支社立ち上げを進めながら担当者のスキル不足で拠点数が頭打ちになっていました。研修後、支社長が主体となって営業体制の仕組みを構築し、支社数は前年比で大きく伸びています。プロセス別の失注分析を導入したことで、ノルマだけを追う風土からも脱しつつあるとのことです。
興味深いのは、両社とも研修の成果が「知識を得た」ではなく「自社の課題を整理し直せた」という形で現れている点です。役員層への研修効果は、往々にしてこうした形で表面化します。
役員研修についてよくある質問

役員研修の適切な実施時間はどれくらいでしょうか
目的によって幅がありますが、行動の変化まで求めるのであれば、合計10時間以上を複数回に分けて確保する設計が一つの目安になります。1回で完結する講演型は、認識を揃えるきっかけとしては有効な一方、判断力の向上までは期待しにくいと考えられます。
社外取締役も対象に含めるべきでしょうか
就任時の会社説明については、社外取締役にこそ必要です。事業内容、財務構造、過去の経営判断の経緯を理解しないままでは、監督機能を果たすことができません。一方、経営スキルの研修については、社外取締役は既に十分な経験を持つ場合が多く、個別に判断する形になるでしょう。
研修費用はどの程度を見込めばよいでしょうか
形式によって大きく異なります。公開講座は1名あたり数万円から十数万円程度が一般的な水準で、社内研修は日数と講師の経歴によって幅が広くなります。金額だけで比較するのではなく、カスタマイズの深さと実施後のフォロー体制を含めて評価してください。
オンラインでも効果は出るのでしょうか
インプット中心の内容であれば、オンラインでも問題ありません。議論や演習を中心とする場合も、少人数であればオンラインで十分に成立します。むしろ拠点が分散している企業では、移動時間が不要になる分、開催頻度を上げられる利点があります。
役員研修で経営陣の課題解決力を高めるなら課題解決力強化道場へ

課題解決力強化道場は、少人数制とハンズオン、超実践型を柱に据えた研修プログラムです。アクセンチュア、KPMGコンサルティング、デロイトトーマツコンサルティング、PwCコンサルティング出身の現役コンサルタントが講師を務め、事前ヒアリングをもとに自社の実務課題そのものを演習の題材に組み込みます。
1回2.5時間、1クラス10名以内という設計のため、役員の日程を確保しやすく、全員が発言する状況をつくれます。毎回の個別フィードバックシートで強みと改善点を可視化し、各回の後には研修企画者との振り返りミーティングを実施して次回の方針をすり合わせる進め方です。累計受講者数は約800名を超え、平均満足度は95.6%、現場での活用度合は84.5%となっています。
役員研修の内容が固まらない、過去に実施したものの現場が変わらなかった、経営陣の目線を揃えたい。そうした段階からのご相談を歓迎しています。貴社の課題をうかがったうえで、最適なカリキュラムをご提案いたします。
貴社の課題に最適な研修をご提案します
・管理職のスキルにバラつきがある
・研修が現場で活きない
・自走する人材が育たない
心当たりがあれば、まずご相談ください。
貴社の状況に最適なカリキュラムをご提案いたします。
※ご相談・お見積もりは無料です