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実行力

業務の属人化とは?原因の見極め方と解消を続ける仕組みづくり

「あの手続きは、あの人にしか分からない」——そんな会話が社内で当たり前になっていないでしょうか。担当者が休んだ途端に業務が止まる、退職と同時にノウハウが消える。こうした状態は「業務の属人化」と呼ばれ、多くの企業が頭を悩ませている課題です。

ただ、属人化の情報を集めれば集めるほど、「原因も対策も分かった。でも自社では動かない」という壁にぶつかる方が少なくありません。この記事では、属人化の意味やリスクを整理したうえで、なぜ解消施策が続かないのか、その分岐点はどこにあるのかという視点から、実際に定着する進め方までを掘り下げていきます。

目次

業務の属人化とは特定の担当者に依存した状態のこと

業務の属人化とは、ある業務の進め方や判断基準、進捗状況などを特定の担当者しか把握しておらず、他の人が代われない状態を指します。手順が本人の頭の中にしかなく、外から見ると何が起きているのか分からない。この「見えなさ」が属人化の本質です。

ここで押さえておきたいのは、属人化と「専門性」はまったくの別物だという点です。高い専門性を持つ人材がいること自体は組織の強みになります。問題になるのは、その専門性がその人からしか取り出せない形で固定されているときです。専門性は資産ですが、属人化はリスクです。両者を混同すると、「うちのベテランは優秀だから問題ない」という誤った安心につながってしまいます。

対義語は「標準化」——ただし目的化には注意

属人化の反対語としてよく使われるのが「標準化」「仕組み化」「マニュアル化」です。誰が担当しても一定の品質で業務を回せる状態を目指す取り組みを指します。

もっとも、標準化それ自体が目的になると、今度は現場が形骸化したマニュアルに縛られて動きが鈍る、という別の問題が生まれます。標準化はあくまで手段です。狙うべきは「業務が特定の個人に人質を取られていない状態」であって、すべてを画一化することではありません。この線引きが、後述する解消の進め方でも重要になってきます。

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暗黙知とブラックボックス化という2つの顔

属人化を語るうえで欠かせない関連語が「暗黙知」と「ブラックボックス化」です。暗黙知とは、経験や勘として本人には分かっているものの、言葉にされていない知識を指します。対して、誰にも中身が見えなくなった状態がブラックボックス化です。

つまり属人化には、「本人は分かっているが言語化されていない」段階と、「もはや誰も全体像を把握できない」段階があります。前者は本人へのヒアリングで解きほぐせますが、後者まで進むと、業務を一度ゼロから再構築するしかなくなります。自社の属人化がどちらの段階にあるかを見極めることが、対策の出発点になります。

なぜ今あらためて属人化の解消が求められるのか

属人化は昔からある課題ですが、近年その解消がとりわけ重視されるようになりました。背景には、企業を取り巻く環境の変化があります。

まず、人材の流動化です。かつての終身雇用を前提とした働き方が崩れ、転職が当たり前になりました。特定の人がいなくなることを前提に業務を設計しておかなければ、退職のたびに事業が揺らぐことになります。

次に、テレワークの普及です。同じオフィスにいれば「隣の人がどう仕事をしているか」が自然と見えていました。ところが在宅勤務では、その暗黙の共有が失われます。意識的に業務を可視化しない限り、属人化は静かに進行していきます。

そして見逃せないのが、経営指標との関係です。2025年版中小企業白書では、従業員への経営情報の開示や業務の属人化防止に取り組んでいる事業者では、付加価値額が増加している傾向が示されました。属人化の解消は、単なる守りのリスク対策にとどまらず、業績向上という攻めの側面も持つことがうかがえます。

経営の透明性向上の取組として、従業員への経営情報の開示や業務の属人化防止に取り組んでいる事業者では、付加価値額が増加している傾向。透明性向上の取組は業務の改善・効率化に寄与している可能性がある。 ― 中小企業庁「2025年版中小企業白書・小規模企業白書の概要」

業務が属人化する5つの原因と本当の引き金

属人化はなぜ起きるのでしょうか。原因は複数ありますが、表面的な理由の奥に「本当の引き金」が隠れていることが多いのです。ここでは主な要因を整理しつつ、その根っこにある構造まで踏み込みます。

  1. 01業務の専門性が高く代替がきかない
  2. 02多忙で情報を共有する余裕がない
  3. 03情報共有を促す仕組みや文化がない
  4. 04引き継ぎが不十分なまま担当が代わる
  5. 05自分の立場を守るために情報を抱える

専門性の高さと「教える時間がない」の悪循環

特殊なスキルや長年の経験が必要な業務は、そもそも他の人に渡しにくいものです。加えて、担当者が目の前の業務で手一杯だと、手順を言語化して共有する時間が取れません。結果として、専門性が高い業務ほど属人化が深まっていきます。

ここで気づいてほしいのは、「専門性が高いから属人化する」のではなく、「共有する時間を捻出できない構造だから属人化が固定される」という因果です。多忙を理由に共有を後回しにすると、その担当者はますます手放せなくなり、さらに忙しくなる。この悪循環こそが、属人化を長引かせる正体です。

「情報を抱える」のは個人ではなく組織の問題

原因として「自分にしかできない業務を作って社内での立場を維持したい」という心理が挙げられることがあります。たしかにそうした側面はあるでしょう。ただ、これを個人の資質の問題として片づけると、対策を誤ります。

情報を共有した人が損をし、抱え込んだ人が評価される。そんな評価構造があれば、抱え込みは合理的な行動になってしまいます。属人化は、担当者の善し悪しではなく、組織の設計の問題として捉える。ここを外すと、いくら「情報を共有しましょう」と呼びかけても現場は動きません。

引き継ぎの失敗が次の属人化を生む

前任者からの引き継ぎが不十分だと、後任者は手探りで自分なりのやり方を作らざるを得ません。そのやり方がまた言語化されないまま定着し、次の引き継ぎでも同じことが繰り返されます。引き継ぎの失敗は、一世代限りの問題ではなく、属人化を再生産する連鎖の起点になるのです。

属人化が招くリスクと、見落とされがちな影響

属人化のリスクとしてよく語られるのは、業務の停滞や品質のばらつき、ノウハウの喪失です。これらは確かに深刻ですが、あわせて見落とされがちな影響も押さえておきましょう。

担当者不在で業務が止まる

進め方を本人しか知らないため、その人が休んだり退職したりすると業務が滞ります。些細なきっかけで事業が止まりうるという点で、事業継続計画(BCP)の観点からもリスクとなります。

品質を第三者がチェックできない

手順書がなく、担当者以外に適切なやり方を把握している人がいないと、品質の低下やミスがあっても誰も気づけません。チェック機能が働かない状態は、じわじわと組織の信頼を損ないます。

見落とされがちなのは「担当者本人の疲弊」

属人化のリスクは、組織側の話として語られがちです。しかし実は、いちばん追い込まれているのは属人化した業務を抱える本人であることが少なくありません。休めない、代われない、常に自分に問い合わせが集中する。この負荷が続けば、パフォーマンスは落ち、最悪の場合は離職につながります。

そして皮肉なことに、その人が辞めると業務が丸ごと消える。属人化は退職を招き、退職が新たな属人化を深めるという悪循環を生みます。属人化対策を「守り」の一環として、担当者本人を守る取り組みとして位置づける視点が欠けていると、この連鎖は断ち切れません。

属人化がすべて悪ではない——見極めるべき境界

ここまでリスクを述べてきましたが、属人化を一律に悪と決めつけるのも早計です。あえて属人性を残したほうがよい業務も存在します。

たとえば、高度な専門判断を要する研究開発や、臨機応変な対応が求められる緊急対応、そして特定の顧客との深い信頼関係に支えられた1対1の折衝。こうした領域では、標準化しようとすると、かえって価値の源泉である個人の裁量や創意が失われてしまいます。

大切なのは、「標準化すべき業務」と「個人の力を活かすべき業務」を切り分ける判断です。すべてを仕組み化しようとせず、再現性が求められる定型業務から優先して標準化し、創造性が問われる業務は個人に委ねる。この見極めができるかどうかが、属人化対策の成否を分けます。次章では、この判断も含めた具体的な進め方を見ていきます。

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属人化を解消する進め方——手順とつまずきどころ

属人化解消の基本的な流れは、多くの資料で「可視化→優先順位付け→マニュアル化→仕組み化→継続改善」として語られています。ここではその流れを押さえつつ、各段階で現場が実際につまずくポイントを添えていきます。手順を知ることと、手順を回しきることの間には、大きな隔たりがあるからです。

ステップ1.業務を洗い出して可視化する

まずは、どんな業務が誰によってどう進められているのかを洗い出し、流れを図に落とし込みます。ここで見えてくるのが、特定の人に集中している業務や、なぜか複雑化している手順です。

つまずきどころは、可視化を担当者本人に任せきりにしてしまうことです。本人は自分のやり方が「当たり前」になっているため、暗黙知の部分を無意識に飛ばして書いてしまいます。第三者が「なぜこの手順なのか」を問いながら一緒に棚卸しすると、隠れた判断基準が引き出されます。

ステップ2.優先順位をつける

すべての業務を一度に標準化するのは現実的ではありません。「その業務が止まったときの影響度」と「標準化のしやすさ」の2軸で優先順位をつけます。影響度が高く、かつ着手しやすい業務から手をつけるのが定石です。

ステップ3.誰でも分かるマニュアルを作る

可視化した業務を、実際の担当者の手で手順書に落とし込みます。ポイントは、業務を知らない人でも再現できるレベルまで具体化することです。「適宜判断する」といった曖昧な記述は、読み手にとっては何の手がかりにもなりません。

ステップ4.情報共有が続く仕組みを整える

マニュアルを作っても、共有が一度きりで終われば意味がありません。共有すること自体が負担にならないよう、ツールを導入して手間を減らす。さらに、共有した人が正当に評価される仕組みを整える。ここまでやって、はじめて情報共有が習慣として根づきます。

ステップ5.継続的に見直す

業務は変化します。一度作ったマニュアルも、運用するなかで必ず「実態とのズレ」が出てきます。定期的に見直し、更新し続ける。この地道な繰り返しこそが、属人化を再発させない唯一の方法です。

なぜ属人化対策は「分かっているのに続かない」のか

ここまで読んで、「手順は理解した。でも、これがうちで回る気がしない」と感じた方もいるかもしれません。その感覚は正確です。属人化対策が失敗する最大の理由は、手順を知らないことではなく、手順を回しきる力が組織に備わっていないことにあるからです。

マニュアル整備もツール導入も、それを推進する人が「現状のどこが問題で、何から手をつけ、どう巻き込むか」を組み立てられなければ、途中で頓挫します。可視化の途中で優先順位がつけられずに止まる。マニュアルを作ったものの現場が使わない。こうした失敗は、ノウハウ不足というより、課題を分解し実行に移す力の不足から生まれます。

「分かる」と「できる」は別の能力である

属人化の記事を読んで解消のステップを理解すること(分かる)と、自社の複雑な現場でそれを実行しきること(できる)の間には、深い溝があります。ロジックツリーで課題を切り分ける、関係者を動かす計画を立てる、実行しながら軌道修正する——これらは知識として知っていても、実際にやってみると驚くほどうまくいきません。

属人化を解消する担い手には、こうした課題解決の実行力が求められます。そして実行力は、本を読むだけでは身につかず、自社の実務を題材に、フィードバックを受けながら鍛えるほかありません。属人化という具体的な課題は、裏を返せば、組織の課題解決力を育てる格好の題材でもあるのです。

属人化に関するよくある質問

属人化とはどういう意味ですか

ある業務の進め方や判断基準、進捗状況などを特定の担当者しか把握しておらず、他の人が代われない状態を指します。手順が本人の頭の中だけにあり、外から見えなくなっている点が特徴です。

属人化の反対語は何ですか

「標準化」「仕組み化」「マニュアル化」が反対語として使われます。誰が担当しても一定の品質で業務を進められる状態を目指す取り組みを指します。

属人化は必ず解消すべきですか

いいえ、すべてを解消する必要はありません。再現性が求められる定型業務は標準化すべきですが、高度な専門判断や創造性が価値を生む業務は、個人の力を活かしたほうがよい場合があります。業務ごとに見極めることが大切です。

対策を進めても定着しないのはなぜですか

手順の知識ではなく、それを実行しきる力が不足しているケースが多いためです。課題を分解し、関係者を巻き込み、走りながら修正する。この実行力は、自社の実務を題材に鍛えることで身についていきます。

属人化を解消できる組織をつくるなら課題解決力強化道場へ

業務の属人化は、手順を知れば解消できるという単純な問題ではありません。可視化から仕組み化までを自社の現場で回しきる、課題解決の実行力が問われます。そしてその力は、知識のインプットだけでなく、自社の実務を題材にした実践とフィードバックによってこそ育ちます。

課題解決力強化道場は、少人数制・ハンズオン・超実践型をコンセプトに、外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが講師を務める人材育成プログラムです。自社の実務課題そのものを題材に、「分かる」で終わらせず「できる」まで橋渡しする設計を特徴としています。属人化のような組織課題に、現場で動ける人材を育てたい企業に向いた内容です。

属人化の解消は、仕組みづくりと、それを推進できる人づくりの両輪で進みます。研修の内容やカリキュラム、導入事例が気になる方は、まずは気軽にご相談ください。貴社の状況をうかがったうえで、最適な進め方をご提案します。

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