離職率とは?平均や計算方法と高い会社に共通する原因を解説
離職率という言葉は、採用や人事の現場で当たり前のように登場します。ところが「自社の数字は高いのか低いのか」「そもそもどう計算するのが正しいのか」まで踏み込むと、案外あいまいなまま扱われている場面が少なくありません。数字だけが独り歩きし、「離職率を下げよう」という掛け声だけが先行してしまうケースも見かけます。
この記事では、離職率の定義と計算方法という基礎から、日本の平均値や業界別の傾向、「何パーセントから高いのか」という目安までを整理します。そのうえで、離職率という数字を「結果」として捉え、その背後にある課題構造をどう読み解くかという、現場で実際に成果を分ける視点までお伝えします。人事担当者の方はもちろん、部下の定着に悩む管理職や経営者の方にも役立つ内容を目指しました。
離職率とは何を表す指標なのか

離職率とは、ある一定期間のなかで、企業に在籍していた従業員のうち、どれだけの割合が退職したかを示す指標です。人材の定着状況や職場環境の健全さをはかる代表的なものさしとして、採用活動や組織づくり、投資家や求職者への情報開示など、幅広い場面で使われています。
ここで押さえておきたいのは、離職率が「割合」を表す指標だという点です。従業員100名の会社で10名が辞めれば10%、1,000名の会社で100名が辞めても同じく10%になります。人数の絶対値ではなく、母集団に対する比率で組織の状態を捉えるからこそ、規模の異なる企業どうしを比較できるわけです。
退職率・定着率との違い
離職率とよく混同される言葉に、退職率と定着率があります。厳密な公的定義があるわけではありませんが、実務では次のように使い分けられることが一般的です。
退職率は、離職率とほぼ同じ意味で使われる場面が多い言葉です。ただ、企業によっては「自己都合退職」と「会社都合退職」を区別し、退職率という言葉を自己都合に限定して用いる場合もあります。一方の定着率は、離職率の裏返しにあたる指標で、一定期間にどれだけの従業員が在籍し続けたかを示します。離職率が10%であれば、定着率はおおむね90%という関係になります。
言葉の定義が揺れやすいからこそ、社内で数字を共有したり他社と比較したりするときには、「何を分子・分母に置いているのか」をそろえておくことが欠かせません。ここを曖昧にしたまま議論を進めると、同じ「10%」でも指しているものがまったく違う、という食い違いが起こります。
なぜ今、離職率が注目されているのか
離職率が経営指標として重視されるようになった背景には、いくつかの構造的な変化があります。
第一に、労働人口の減少による人材確保の難しさです。採用市場が売り手優位に傾くなかで、一人を採るコストは年々上昇しています。せっかく採用した人材が早期に辞めてしまえば、採用費も教育費も回収できません。第二に、働き方やキャリア観の多様化です。転職が当たり前になり、一社にとどまり続けることが必ずしも前提ではなくなりました。第三に、情報の透明化です。口コミサイトや企業の情報開示によって、離職率は求職者の目に触れやすくなり、採用ブランディングを左右する数字になっています。
つまり離職率は、単なる人事の管理指標にとどまらず、採用力・組織力・企業ブランドに直結する経営指標へと位置づけが変わってきているといえます。
離職率の計算方法と見落としやすい注意点

離職率の計算そのものは、決して難しいものではありません。ただし、後ほど触れるとおり、条件の置き方ひとつで数字は大きく動きます。まずは基本の計算式から確認していきましょう。
基本の計算式
もっとも一般的な離職率は、次の式で求められます。
厚生労働省の「雇用動向調査」では、1月1日時点の常用労働者数を分母とし、その年の離職者数を分子として年間の離職率を算出しています。たとえば、期首に200名が在籍し、その1年間で20名が退職した場合、離職率は「20 ÷ 200 × 100 = 10%」となります。
計算する期間は、1年間で区切るのが基本ですが、四半期や月次で見る企業もあります。期間を短く取れば変化の兆しを早く捉えられ、長く取れば傾向を安定して把握できます。目的に応じて期間を選ぶとよいでしょう。
新卒3年以内・中途入社の計算
離職率は、対象をどう絞るかによって、いくつかのバリエーションがあります。とりわけよく使われるのが、新卒者の「3年以内離職率」です。これは、ある年に入社した新卒者を分母とし、その3年間で退職した人数を分子として計算します。
中途入社者に絞って算出する場合も考え方は同じで、対象となる母集団を「その期間に中途入社した人」に置き換えます。採用チャネルや入社経路ごとに離職率を見ていくと、どこにミスマッチが生じやすいのかが浮かび上がってきます。
数字が動いてしまう、計算上の落とし穴
ここが、多くの解説であっさり流されがちなポイントです。離職率は、計算の前提しだいで数字が変わる指標だという事実を、しっかり押さえておく必要があります。
たとえば、期首の在籍者だけを分母に置くと、その期間の途中で入社し、途中で辞めた人はカウントから漏れます。入社半年で辞めた人が何人いても、期首時点で在籍していなければ分母にも分子にも入らないため、離職率上は「見えない」数字になってしまうわけです。短期離職が多い職場ほど、この盲点によって実態より低い数字が出てしまう危険があります。
逆に、分母を小さく取れば離職率は高く出ますし、退職理由の範囲(定年退職や契約満了を含めるかどうか)を変えるだけでも数字は上下します。ここで重要なのは、離職率はある程度まで「調整可能な数字」であるという認識を持っておくことです。他社の公表値と自社の数字を並べるときは、この前提の違いを疑ってかかるくらいがちょうどよいといえます。同じ土俵に乗っていない数字を比べても、意味のある示唆は得られません。
日本の離職率の平均と現状

自社の数字を評価するには、比較対象となる平均値を知っておく必要があります。ここでは、公的統計をもとに日本全体の傾向を確認します。なお、統計は毎年更新されますので、実務で使う際は必ず最新の公表値をご確認ください。
全体の平均離職率
厚生労働省の「雇用動向調査」によれば、日本全体の年間離職率は、近年おおむね15%前後で推移しています。入職率とほぼ拮抗しながら緩やかに動いており、極端に上下するというよりは、一定のレンジのなかで安定しているのが実情です。
“ 令和5年の離職率は15.4%で、前年(15.0%)より上昇した。 ― 厚生労働省「令和5年 雇用動向調査結果の概況」
この「15%前後」という水準は、あくまで全産業を平均した数字です。次に見ていくとおり、業種や雇用形態によって実態は大きく異なります。自社の離職率を「全国平均より高い・低い」だけで判断してしまうと、本来比べるべき相手を見誤ることになりかねません。出典は厚生労働省「雇用動向調査」で確認できます。
新卒の離職率と「七五三現象」
新卒採用に関しては、「3年以内におよそ3割が辞める」という傾向が長く続いています。厚生労働省が公表する新規学卒就職者の離職状況によると、大学卒業者の3年以内離職率は3割強、高校卒業者ではさらに高い水準となっています。
この状況は、以前から「七五三現象」と呼ばれてきました。中学卒でおよそ7割、高校卒でおよそ5割、大学卒でおよそ3割が、入社から3年以内に離職するという傾向を、それぞれの数字の頭文字になぞらえた表現です。近年は数字に変動があるものの、「学歴が下がるほど早期離職率が上がりやすい」という大まかな構図は続いています。詳細は厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況に公表されています。
業界別に見る離職率の傾向
離職率を語るうえで、業界による差は避けて通れません。雇用動向調査をもとにすると、離職率が高い業界と低い業界には、はっきりとした傾向があります。
離職率が高くなりやすい業界
宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業などが上位に並びます。いずれも顧客と直接接する仕事が多く、休日出勤や長時間労働が発生しやすいこと、給与水準が相対的に抑えられやすいことが共通点として挙げられます。
離職率が低くなりやすい業界
複合サービス事業、金融業・保険業、電気・ガス・水道といったインフラ関連が低い傾向にあります。事業基盤が安定し、労働条件や制度が整備されていることが背景にあると考えられます。
ここで押さえたいのは、業界ごとに離職率の「相場」がまったく違うという点です。飲食業で離職率が20%を超えていても業界のなかでは平均的である一方、インフラ企業で20%を記録すれば異常事態を疑うべき数字になります。自社の数字は、全国平均ではなく同業種の水準と比べてこそ意味を持ちます。
離職率は何パーセントから「高い」と判断されるのか

「離職率が高いかどうかの基準を知りたい」という声はとても多いものです。結論からお伝えすると、すべての企業に一律で当てはまる絶対的な基準は存在しません。とはいえ、判断の目安になる考え方はあります。
一つの目安として、日本全体の平均である15%前後を基準線に置く方法があります。これを大きく上回っていれば、何らかの課題が潜んでいる可能性を疑う、という使い方です。ただし前述のとおり、業界差が大きいため、この線引きだけで良し悪しを断じるのは危険です。飲食・小売のように離職率が高く出やすい業界では、平均を上回っていても業界内では健全という場合があります。
より実務的なのは、次の三つの視点を組み合わせて判断する方法でしょう。
- 01同業種の平均と比べてどうか
- 02自社の過去の推移と比べて上がっているか
- 03誰が・どの層が辞めているか
特に見落とされがちなのが、三つ目の「誰が辞めているか」という視点です。同じ離職率10%でも、中身がまったく違えば意味も変わります。総数は横ばいでも、育成に時間をかけた中核人材や若手の優秀層が抜けているのであれば、数字以上に深刻な事態だといえます。逆に、パフォーマンスが振るわなかった層の入れ替わりであれば、組織にとって必ずしも悪い動きとは限りません。全体の率だけを眺めていると、この質的な違いを取りこぼしてしまいます。
離職率が高い会社に共通する原因

離職率が高止まりする企業には、いくつかの共通した原因が見られます。ここでは代表的なものを整理したうえで、多くの解説が触れきれていない「根っこ」にある要因まで掘り下げます。
労働条件・待遇への不満
給与水準、労働時間、休日の取りやすさといった条件面は、離職理由として常に上位に挙がります。とりわけ、長時間労働が常態化している職場では、心身の消耗が積み重なり、辞める決断につながりやすくなります。給与についても、絶対額そのものより「仕事量や責任に見合っていない」という納得感の欠如が引き金になるケースが目立ちます。
人間関係と組織文化
退職理由の本音を探ると、上司や同僚との人間関係が大きな比重を占めます。表向きの退職理由には「キャリアアップのため」と書かれていても、実際には職場の関係性に疲れていた、というパターンは珍しくありません。心理的安全性が低く、意見を言いづらい雰囲気が漂う職場では、優秀な人ほど早く見切りをつける傾向があります。
評価とキャリアへの不安
頑張りが正当に評価されない、この先どう成長できるのか見えない、という状態も離職を後押しします。評価基準が不透明だったり、上司の主観に左右されたりすると、従業員は「この会社にいても報われない」と感じ始めます。特に成長意欲の高い若手にとって、キャリアの見通しが立たないことは、給与以上に深刻な問題になり得ます。
見落とされがちな根本原因はマネジメントの課題解決力
ここまで挙げた原因は、いずれも上位記事でよく指摘されるものです。しかし、現場で数多くの組織課題に向き合ってきた立場から見ると、これらの表層的な原因の下には、たいてい「マネジメント層の課題解決力の不足」という共通の根があるように感じられます。
なぜそういえるのか。労働条件も、人間関係も、評価制度も、突き詰めれば「現場で起きている問題を、管理職が正しく捉え、打ち手に落とし込めているか」に行き着くからです。たとえば、部下が抱える不満の背景を構造的に整理できないマネジャーは、対症療法を繰り返すばかりで、根っこの問題を放置してしまいます。「残業が多い」という声に対して人を増やすことしか思いつかなければ、業務プロセスそのものに潜む非効率は温存されたままです。
問題を分解し、原因を特定し、優先順位をつけて手を打つ。この一連の流れを回せる管理職がいる職場では、不満が芽のうちに摘まれ、離職につながる前に手当てされていきます。逆にこの力が弱い組織では、同じ問題が形を変えて何度も再発し、そのたびに人が離れていきます。離職率の高さは、多くの場合、個々の制度の問題であると同時に、問題を解く力そのものの問題でもあると考えられます。
“ ノルマのみを追いかける風土で離職が急増していたが、プロセス別に失注分析を行うことで、成果とプロセスの両面を重視する組織体制へと変わった。 ― 課題解決力強化道場 導入事例(保険業・部門長向け)
このように、離職の背景にある課題を「なぜ」の視点で分解し、プロセス単位で打ち手を設計できるようになると、離職の連鎖が止まり始めます。数字を追いかける前に、まず問題を解ける人を増やす。ここに、離職率改善の意外な急所が隠れています。
離職率は低いほど良いとは限らない

ここで、多くの記事があまり触れない論点にも目を向けておきましょう。「離職率は低いほど良い」というのは、終身雇用を前提とした時代の常識であり、現在では必ずしも当てはまりません。
もちろん、離職率が低いことには明確なメリットがあります。採用や教育のコストを抑えられ、ノウハウが組織に蓄積し、既存社員の負担も安定します。しかし一方で、離職率が極端に低い状態は、組織に新しい血が入らず、価値観や仕事の進め方が固定化してしまうリスクもはらんでいます。誰も辞めないということは、裏を返せば人材の流動性が乏しいということでもあります。
反対に、離職率がある程度あることが、健全な新陳代謝として機能する場合もあります。組織と合わなかった人が次の場所へ移り、新しい人材が加わることで、視点が入れ替わり、活性化が起こる。この観点に立てば、目指すべきは「離職率をゼロに近づけること」ではなく、辞めてほしくない人が辞めない状態をつくることだと分かります。
だからこそ、離職率という一つの数字だけを追いかけるのは危ういといえます。率が下がっても中核人材が抜け続けていれば意味がありませんし、率が多少高くても組織が健全に回っているなら過度に恐れる必要はありません。数字の裏にある「誰が・なぜ」を読み解く姿勢が、ここでも問われます。
離職率を下げるために本当に効く取り組み

それでは、離職率の改善に実際に効く取り組みとは何でしょうか。多くの解説では、給与の見直し、労働環境の整備、評価制度の改善、コミュニケーションの活性化といった施策がずらりと並びます。どれも正しい打ち手です。ただ、これらを闇雲に導入しても、期待した成果につながらないことがしばしばあります。理由は、自社にとっての本当の課題が特定できていないまま、一般論の施策を並べているからです。
まず退職理由を構造的に分析する
改善の出発点は、退職理由の分析です。退職者へのヒアリングや面談を通じて、なぜ辞めるに至ったのかを丁寧に拾い上げます。ただし、表向きの理由をそのまま鵜呑みにしないことが肝心です。「キャリアアップのため」という言葉の裏に、本当は評価への不満や人間関係の疲弊が隠れていることは珍しくありません。
集めた声を、待遇・人間関係・評価・業務内容といった軸で分類し、どこに退職が集中しているのかを可視化します。この作業を通じて、はじめて「自社が本当に手を打つべき場所」が見えてきます。全部に手をつけるのではなく、離職の引き金になっている急所を見極めることが、限られたリソースを活かす鍵になります。
制度だけで終わらせず、日常の運用に落とす
制度を整えることは大切ですが、制度は導入して終わりではありません。1on1面談を制度化しても、上司が形式的にこなすだけでは、部下の不満は表に出てきません。福利厚生を充実させても、それが使いにくい雰囲気であれば絵に描いた餅になります。
結局のところ、施策が機能するかどうかは、現場のマネジャーがそれを運用しきれるかにかかっています。制度の設計と同じくらい、その制度を回す管理職の力量が結果を左右するのです。ここが、離職率改善の取り組みが成功と失敗に分かれる分岐点になります。
管理職の課題解決力を底上げする
ここまで見てきたとおり、離職率の改善は、突き詰めれば「現場で起きている課題を、管理職が自ら解けるかどうか」に帰着します。退職理由を分析するのも、施策を運用するのも、その中心にいるのは管理職です。だからこそ、離職率に本気で向き合う企業ほど、制度の整備と並行して、マネジメント層が課題を分解し、原因を特定し、打ち手に落とし込む力を鍛えることに投資しています。
この力は、座学で知識を入れるだけでは身につきにくいものです。フレームワークを知っていることと、自社の生々しい課題に対してそれを使いこなせることの間には、大きな隔たりがあります。実際、研修を受けた管理職から「知っているつもりだったが、フィードバックを受けて全くできていないと痛感した」という声が上がることは少なくありません。「分かる」と「できる」の間にあるギャップを埋めるには、自社の実務課題を題材にした反復と、一人ひとりへの具体的なフィードバックが欠かせません。
離職率という結果指標を追いかける前に、その原因を解ける人材を組織のなかに増やしていく。遠回りに見えて、これが定着率を根本から押し上げる確かな道筋になります。
離職率の改善を課題解決から始めるなら課題解決力強化道場

離職率は、組織の状態を映す鏡のような指標です。数字の高低に一喜一憂するのではなく、その背後で「誰が・なぜ辞めているのか」を読み解き、原因となる課題を一つずつ解いていく。この地道な積み重ねこそが、定着率を本当の意味で高めていきます。そして、その中心を担うのは、現場の課題に向き合う管理職の課題解決力にほかなりません。
課題解決力強化道場は、少人数制・ハンズオン・超実践型をコンセプトに、外資系コンサルティングファーム出身の現役コンサルタントが講師を務める人材育成プログラムです。自社の実務課題そのものを題材に、問題を分解し打ち手に落とし込む力を、毎回の個別フィードバックを通じて鍛えます。「学んで終わり」にせず、現場での行動変容にコミットする設計が特徴です。離職の背景にあるマネジメント課題に組織として向き合いたい方は、まずお気軽にご相談ください。貴社の状況に合わせたカリキュラムをご提案いたします。
貴社の課題に最適な研修をご提案します
・管理職のスキルにバラつきがある
・研修が現場で活きない
・自走する人材が育たない
心当たりがあれば、まずご相談ください。
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