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思考力

ピラミッドストラクチャーの具体例|職種別5パターンと「伝わらない例」との対比で解説

「ピラミッドストラクチャーの作り方はわかった。でも、自分の仕事に当てはめるとどうすればいいかがわからない」——こういう状態の方は少なくありません。フレームワークは具体例と一緒に見ることで、初めて使い方が実感できるものです。

本記事では、営業・人事・管理職・マーケティング・社内提案という5つのビジネスシーンで、ピラミッドストラクチャーの具体例を示します。それぞれ「伝わらない構造の例」と「ピラミッドストラクチャーに整えた例」を対比することで、何がどう変わるかを体感してもらうことを目的としています。

ピラミッドストラクチャーの基本的な意味や作り方については、課題解決力強化道場のメディア内の関連記事をあわせてご参照ください。本記事は「具体例を通じて理解を深めたい方」に特化した内容です。

具体例を見る前に:ピラミッドストラクチャーの基本構造の確認

具体例に入る前に、構造の基本を一度整理しておきます。ピラミッドストラクチャーは3層で構成されます。

  •  
  • 頂点(主張):聴衆のイシューに対するダイレクトな答え。一文で「〇〇すべきです」「〇〇という状況です」という形で書く
  • 中層(根拠):主張を支える理由。2〜4つが目安。同じ性質・抽象度のものを同じ層に並べる
  • 底辺(事実・データ):根拠を裏付ける客観的なファクト。数値・調査結果・具体的な事例など

各具体例では、この3層に当てはめて構造を示します。また、ピラミッドの品質チェックとして使う「So What(だから何?)」と「Why So(なぜそう言える?)」の問いも、各例の解説に組み込みます。

「伝わらない例」の共通点は、結論が最後に来ていること・根拠が主観にとどまっていること・主張と根拠のあいだに論理的なつながりがないことの3つです。具体例を通じてこの違いを確認してください。

具体例1:営業|上司へのアポ率改善提案

シーン:営業担当者が、チームのアポイント獲得率を改善するための施策を上司に提案する場面

伝わらない例

「先月のアポ率が12%で、目標の20%を下回っています。テレアポのスクリプトが古いという声も出ています。他のチームはメールを使っているらしいです。なので、私はいくつかの改善が必要だと思っています。まずスクリプトを新しくして、次にメールも活用して、リスト管理も見直せばいいのではないでしょうか。」

この発言の問題は、事実(アポ率の数字)→現場の声→他チームの情報→提案という順番で話が進んでいるため、「何を決めてほしいのか」「どの施策を優先するのか」が最後まで不明瞭な点です。聴衆は「で、結局何をしてほしいの?」という状態で聞き続けることになります。

ピラミッドストラクチャーに整えた例

ピラミッド構造

【主張】今月中にトークスクリプトの改訂とアプローチチャネルの追加を実施し、アポ率を12%から18%以上に改善すべきです。

【根拠1】現スクリプトが実態に合わず、機会を損失している
 └ 先月のアポ率12%は目標20%を大幅に下回っている
 └ メンバーへのヒアリングで「スクリプトの文言が現行製品と合っていない」という声が5名中4名から上がった

【根拠2】メールアプローチの追加で母数を増やせる
 └ 隣接チームAはテレアポにメールを組み合わせた結果、アポ率が9%から17%に改善した
 └ 現在リスト上の見込み顧客400社のうち、電話未着である確率が高い300社には未接触のままである

【根拠3】改善のコストは低く、今月中に着手可能
 └ スクリプト改訂は過去事例から2営業日で対応できる
 └ メールテンプレートは既存のものを転用可能で、追加工数はほぼ発生しない

「なぜ今月中か」「何を変えるか」「その根拠は何か」が構造として見えるため、聴衆は「了解する・修正を求める・保留する」という意思決定に集中できます。So Whatで確認すると「スクリプトが古く・メールでリーチが増え・コストも低いから、今月中に改善すべき」という主張が成立します。

具体例2:人事|中途採用方針の変更提案

シーン:人事担当者が、エンジニア採用の方針変更を経営層に提案する場面

伝わらない例

「最近エンジニアの採用がうまくいっていません。求人媒体に掲載しているのですが、応募が少なく、面接に進む人も少ないです。業界全体的にエンジニアが不足しているという話も聞きます。他の会社はリファラル採用を使っているそうです。採用活動の見直しが必要かもしれません。」

ピラミッドストラクチャーに整えた例

ピラミッド構造

【主張】エンジニア採用において、求人媒体中心の現状から、リファラル採用とスカウト型エージェント活用へシフトすべきです。

【根拠1】現行の求人媒体経由では母集団が形成できていない
 └ 直近3カ月の応募数は月平均4名で、昨年同期比60%減
 └ 書類通過率は50%だが、そもそも応募数が少なく面接設定が月1〜2名にとどまる

【根拠2】リファラル採用は採用コストと質の両面で優れている
 └ 社員紹介経由の採用は媒体経由に比べて入社後定着率が1.3倍高いという調査結果がある(HR総研、2023年)
 └ 採用コストは媒体掲載費の約40%に抑えられる試算

【根拠3】スカウト型エージェント活用で潜在層へのリーチが可能
 └ 競合A社は同手法で直近6カ月でエンジニア4名の採用に成功している
 └ 現在接触できていない転職潜在層(転職サイト未登録)が市場全体の推定35〜40%を占める

「何をやめて・何を始めるか」が主張に明示され、根拠はコスト・質・市場リーチという3つの異なる視点から構成されています。Why Soで上から確認しても「なぜリファラルとスカウトか」に対して各根拠が対応していることが確認できます。

具体例3:管理職|チームの残業削減提案

シーン:部門マネージャーが、チームの残業時間削減策を上位マネジメントに報告・提案する場面

伝わらない例

「チームの残業が多くて、メンバーが疲弊しているように見えます。特にAさんとBさんは毎月40時間以上残業しています。会議が多いというのもあります。あとタスクが集中している人もいます。業務の棚卸しとか会議の整理とか、いろいろ対策が必要だと思っています。」

ピラミッドストラクチャーに整えた例

ピラミッド構造

【主張】今期中にチームの月次残業時間を現状比25%削減するため、会議の整理とタスク配分の見直しを今月から実施します。

【根拠1】残業の主因は非生産的な会議時間にある
 └ 直近1カ月の業務時間調査で、会議時間が総業務時間の38%を占めている
 └ 参加者5名以上の会議の75%が「必要性が低い」とメンバーが評価している

【根拠2】一部メンバーへの業務集中が全体の効率を下げている
 └ チーム内で業務量上位2名(AさんとBさん)が全タスクの52%を処理している
 └ 他3名には受け入れ余地があり、適切に再配分すれば上位2名の残業を月15〜20時間削減できる試算

【根拠3】両施策は即着手可能で、外部リソースを必要としない
 └ 会議整理は既存の会議体の見直しのみで対応可能(新規導入コストなし)
 └ タスク配分の見直しはマネージャー主導で1週間以内に完了できる

「数値目標(25%削減)」「期間(今月から)」「手段(会議整理とタスク配分)」が主張に含まれており、上位マネジメントが意思決定しやすい情報密度になっています。根拠は「主因分析・数値根拠・実現可能性」という3つの問いに答える形で構成されています。

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具体例4:マーケティング|新規施策の予算申請

シーン:マーケティング担当者が、コンテンツマーケティング施策の予算追加を上長に申請する場面

伝わらない例

「最近コンテンツマーケティングが注目されていて、SEOにも効果があると言われています。競合他社のブログを見ると月に何十記事も出していて、うちよりも検索順位が上がっています。うちも記事を増やしていきたいと考えています。追加の予算があれば対応できます。よろしくお願いします。」

ピラミッドストラクチャーに整えた例

ピラミッド構造

【主張】今期第3四半期からコンテンツ制作への月次予算を現状の30万円から50万円に増額し、月8本体制に移行すべきです。

【根拠1】現状の月3本体制では、自然検索流入の増加が見込めない
 └ 現在の自然検索流入は月次横ばいで推移しており、目標達成には月8〜10本のペースが必要(自社SEOツールの試算値)
 └ 主要KWで上位表示されている競合3社の平均投稿本数は月11本

【根拠2】投資対効果は現行施策より高い見込みがある
 └ 現在運用中の有料広告は月30万円でCPA(1件獲得コスト)が12,000円
 └ コンテンツ経由のリード獲得コストは長期的に低下する傾向にあり、12カ月後には6,000円以下になると試算

【根拠3】増額分の20万円で外注対応が可能で、社内工数を増やさずに済む
 └ 業務委託単価2.5万円/本で月8本制作が可能
 └ 記事の品質担保は既存の社内レビュー体制で対応できる

「いくら・いつから・何のために」が主張に含まれており、上長が意思決定に必要な情報(目的・根拠・実行計画)が3根拠に揃っています。「今注目されているから」という感覚論ではなく、現状数値・競合比較・コスト試算という3種類のファクトで構成されている点が、説得力の源泉です。

具体例5:社内提案|テレワーク制度の恒久化

シーン:従業員代表または人事担当者が、テレワーク制度を恒久化するよう経営層に提案する場面

伝わらない例

「テレワークをずっと続けたいという声が多いです。通勤時間が無駄だという意見があります。子どもがいる社員は特に助かっているそうです。生産性については人によって違いますが、全体的には問題ないと思います。制度として残してほしいです。」

ピラミッドストラクチャーに整えた例

ピラミッド構造

【主張】テレワーク制度を恒久化し、週2〜3日の選択制テレワークを正式な就業形態として制度化すべきです。

【根拠1】生産性への悪影響が確認されておらず、むしろ向上している
 └ 社内サーベイ(回答率84%)で、テレワーク時の業務効率が「高い・やや高い」と回答した割合が72%
 └ テレワーク導入前後のプロジェクト完了率を比較すると、前92%→後95%と改善している

【根拠2】採用競争力と定着率の向上に寄与する
 └ 直近6カ月の中途採用面接で「テレワーク可否」を確認した応募者が全体の68%にのぼる
 └ 同業他社の有効求人倍率が高い中、テレワーク制度の有無が採用判断に影響していると考えられる

【根拠3】制度化のコストは低く、既存ルールの延長で対応可能
 └ セキュリティ要件・勤怠管理ツールはすでに整備済みで、追加投資はほぼ不要
 └ 週2〜3日の選択制であれば、対面コミュニケーションの機会も確保できる

「どの形での制度化か(週2〜3日選択制)」が主張に含まれており、曖昧な要望ではなく具体的な提案になっています。根拠は「生産性・採用力・コスト」という経営層が意思決定の際に重視する観点から組み立てられており、「続けたい」という感情論ではなく、データと事業上のメリットで構成されています。

具体例を通じて気づく「伝わる構造」の共通点

5つの具体例を振り返ると、「伝わる構造」には共通したパターンがあります。

主張は「判断・評価・提言」の形になっている

すべての例で、主張は「〇〇すべきです」「〇〇に移行すべきです」「〇〇を実施します」という形になっています。状況の説明や感想ではなく、聴衆が何かを判断・行動するための情報として主張が立っていることが共通点です。

根拠は数値・事実・比較で裏付けられている

「コストが低い」「生産性が高い」という抽象的な表現ではなく、「月30万円から50万円に増額」「残業月15〜20時間削減できる試算」「定着率1.3倍」という具体的な数値・出典・根拠を持つ事実で構成されています。主観的な印象は根拠として機能しません。

根拠は同じ「問い」に対する答えとして並列に置かれている

3つの根拠は、異なる性質の情報(コスト・効果・実現可能性など)でも、「なぜ主張が正しいか」という同じ問いへの答えとして並んでいます。「AだからBだからCだから」という連鎖ではなく、「根拠1、かつ根拠2、かつ根拠3だから主張が成り立つ」という帰納的な構造になっています。

聴衆のイシューに対してダイレクトに答えている

上司が「この提案で何を決めればいいか」を知りたい場合、営業担当者が「この数字を見てどう対処するか」を求めている場合、聴衆のイシューは「自分が知りたいことへの答え」です。自分が伝えたいことと聴衆が知りたいことをすり合わせることが、ピラミッドストラクチャーを機能させる前提条件になります。

ピラミッドストラクチャーを実務で使える力にするなら課題解決力強化道場へ

具体例を見て「なるほど」と感じることと、実際に自分の業務の提案・報告・会議発言にピラミッドストラクチャーを組み込めることのあいだには、実践の経験が必要です。「どのイシューで切るか」「根拠の数と並べ方をどうするか」「主張の言葉をどう研ぐか」という判断は、具体例を読むだけでは身につかず、自分の実際の課題に手を動かして作り、フィードバックを受ける中で培われます。

課題解決力強化道場は、アクセンチュア・KPMGコンサルティング・デロイトトーマツコンサルティング・PwCコンサルティング出身の現役コンサルタントが講師を務め、ピラミッドストラクチャーをはじめとする論理的コミュニケーションの手法を、自社の実務課題を題材にしたケース演習で体得する少人数制・ハンズオン型の実践研修です。1クラス10名以内の環境で毎回の個別フィードバックシートにより、一人ひとりの構造の弱点と改善点を具体的に示します。提案・報告・会議発言の質を組織として底上げしたいとお考えであれば、ぜひご相談ください。

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